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【現地レポート】ASCO 2023 Education Session-妊娠中のがん:医学的、心理社会的、倫理的、法的考慮事項-

[公開日] 2023.07.03[最終更新日] 2023.07.03

目次

昨今、分娩時年齢の高年齢化により、妊娠中のがん治療は世界的な課題となっている。今回は、ASCO(米国臨床腫瘍学会)2023のEducation Session「Cancer During Pregnancy: Medical, Psychosocial, Ethical, and Legal Considerations(妊娠中のがん:医学的、心理社会的、倫理的、法的考慮事項)」の模様をレポートする。

PRESENTATION 1

A Framework for Patient-centered Care in the Management of Cancer During Pregnancy

妊娠中のがん管理における患者中心のケアのフレームワーク Ann H. Partridge, MD, MPH, FASCO
Dana-Farber Cancer Institute
青年期および若年成人(AYA世代)におけるがんの種類と相対的な発生率、そしてそれが時間の経過とともにどのように変化するかを見てみると、幅広い種類のがんの発生がわかる。 特に、婦人科がん、乳がん以外にも白血病やリンパ腫などのがんも多い。AYA世代のがんは多くの問題にも対面しているが、特に世界中で早期発症の乳がん、結腸直腸がん、子宮内膜がんが増加していることに注意することが重要である。 全女性の出産年齢を1970年代と2000年代で比較すると、多くの国で初産の年齢が劇的に遅くなっている。これにより、女性は妊娠中にがんの診断に直面することも増加しているのだ。 ここで米国における妊娠関連がんの発生率を年別に見ると、100,000件の出産あたり乳がんが約3.7件、甲状腺がんが約3.3件、次いで子宮頚がん、卵巣がん、中枢神経系原発悪性リンパ腫、ホジキンリンパ腫、白血病と続く。 妊娠中のがん治療については、複雑で治療上・倫理上の課題がある。特に妊娠初期にがんか診断された場合には問題が大きい。 治療の受益者は母親である。がんに対する最良の治療法が特定の薬剤であり母親がそれを望んでいたとしても、それが何らかの催奇形性を引き起こす可能性がある場合、難しい判断が必要となってくる。 胎児の健康は、短期的には母体の健康に依存する。妊娠中にがんと診断された場合、何らかの妥協が必要となるが、安全性と有効性の基準を裏付ける患者ケアの基準となる臨床試験のデータが当然ながら不足している。 なぜならば妊娠中の女性を対象とした臨床試験の場合、まずランダム化が倫理的に困難、前向き研究もほとんどないのが現状であるため、ここで示すデータは症例報告、観察コホート、および振り返り分析から得ている。したがって、これらのデータはさまざまな品質、異質性、バイアスの影響を受ける。 しかし、本セミナーでは、患者を中心にどのように支援できるかを考え、妊娠を継続する場合の胎児へのリスクを最小限に抑えながら、がんを患っている女性にとって最も効果的な治療を目標として、標準治療を考えることが重要である。 そして、倫理面や法律面など学際的なサポートを関与させる必要がある。チームだけでなく、患者やその愛する人たちと、徹底的に話し合うことを確実に行うこともまた重要だ。

PRESENTATION 2

Treatment Options and Timing in the Management of Cancer during Pregnancy

妊娠中のがん管理における治療の選択肢とタイミング Alison W. Loren, MD, MSCE がんと診断された妊婦はさまざまな懸念を抱えており、意思決定に役立つ情報を求めているのは明らかだが、多くの場合その情報はないのが現状である。 原則、優先事項は患者にとってのがん治療を最適化することである。 最近の見地では、妊娠後期の細胞傷害性化学療法への胎児の曝露は、リスクはあるものの許容できる可能性があり、実際、早産の実質的なリスクよりも好ましい可能性があることが認識されている。 もちろん、妊娠を遅らせることによって母体の健康が著しく脅かされたり損なわれたりする場合や、悪性腫瘍自体によって胎児の健康が損なわれる可能性がある場合など、妊娠中絶を検討することが最も適切な状況もあることは確かである。 課題は山積しているが、そのうちの1つに妊娠中の診断がある。妊婦は気分が良くないことがよくあり、疲れ気味で息切れしたり汗をかいたり浮腫がある場合も多く、妊娠中の患者の腹部の変化を認識するのはより困難と言える。 そのため、何が正常な妊娠症状で何が異常なのかを判断するのが難しい場合がある。そして、妊娠している多くの人々も、何が正常なのかをよく理解していないこともある。そのため、診断を下すのが難しい場合もあるのだ。 画像診断やその他の診断に関しては、放射線を避けることが望ましい。許容できる、または安全であると考えられている放射線被ばくはかなり少ない。したがって、一般に、妊娠している人に対してCTおよびPET-CTイメージングを行うことはできない。 妊婦に対して好ましい画像診断法は全身拡散強調MRIである。ヨウ素の曝露は新生児甲状腺機能低下症を引き起こす可能性があるが、ガドリニウムは禁忌のため、ヨウ素およびその他のCT関連の造影剤が用いられる。 診断だけでなく、がんの治療そのものも課題の1つである。 胎児は発育中であり、器官形成の時期は妊娠初期の12~14週目までが最も顕著だ。したがって、これは胎児が有毒物質への曝露による危害、催奇形性、さらには胎児死亡の可能性が非常に高い非常に重要な段階である。一方、妊娠後期になると、子宮内発育の遅延、さらには早産に関連する他の懸念はあるが、臓器の発達への害はそれほど大きくない。胎児への害を予測する上で最も重要な考慮事項は、使用している薬が何なのか、そしてそれが胎児に到達するかどうかということである。 胎盤で薬剤がどのように機能するかについては、まだよくわかっていない。しかし、低分子量で脂溶性の薬物は胎盤を通過して胎児に到達する傾向があるのに対し、タンパク質に結合した薬物や高度に帯電した薬物は通過しない傾向があることはわかっている。一方で新しい薬剤に関してはデータがない。ただし、これらの薬剤が胎児に到達する可能性が高いかどうかをその化学的特徴に基づいて予測し、その作用機序に基づいてどの臓器が影響を受ける可能性があるかを予測することは可能である。現時点ではそれが私たちの最善の推測である。 手術に関しては、妊娠第2期が最も安全で、リスクを最小限に抑えることができると考えられている。12~14週間の重要な器官形成期間を経た後が最も忍容性が高いと考えられているからである。 妊娠は周術期と同様に高度に血栓形成が促進される状態であるため、患者に対する適切な静脈血栓塞栓症(VTE)予防策を考えることが非常に重要である。放射線に関しては、常に骨盤への放射線を避け、必要に応じて腹部を遮蔽することで放射線照射野から胎児までの距離を最大化する方法を採ることもある。 また、住んでいる場所によっては、妊娠中の中絶の選択肢を持てないことがあることも認識していなければならない。これは非常に複雑な課題である。 化学療法については、治療の目的が治癒である場合、化学療法を遅らせることは適切ではない。しかし、高用量のアルキル化剤、高用量のメトトレキサートは絶対禁忌であるなど、守らなければならいことも念頭に置く必要がある。 妊娠中に化学療法を続行する決定がなされた場合、理想的には妊娠後期に経膣分娩を行うことが最も適切であり、腫瘍科チームと産婦人科チームの間で緊密な協力を行う必要がある。 治療後1~3週間の間に血液学的回復を予測し、出産時に患者が血液学的に回復していることを確認する。免疫チェックポイント阻害薬は推奨できない。トラスツズマブ、抗血管新生薬、急性前骨髄球性白血病の主要治療法の一つであるATRA(全トランス型レチノイン酸)、当然のことながらサリドマイドおよび関連薬剤など、絶対に禁忌とされる薬剤も多数存在する。 重要なことは、まず化学療法への標準的なアプローチを特定すること、可能であれば、患者に最適な治療を提供すること、これらの最適な治療法によってもたらされる可能性のある胎児へのリスクを考え、治療効果と胎児への害の可能性をオールチームで検討することだ。

PRESENTATION 3

Obstetric and Neonatal Issues in the Multidisciplinary Management of Cancer during Pregnancy

妊娠中のがんの集学的管理における産科および新生児の問題 Frederic Amant, MD
UZ Gasthuisberg - Katholieke University Leuven
妊娠中のがんは緊急事態ではないこと、妊娠中の化学療法は可能であることを示したい(2004年に設立されたがん、不妊症、妊娠に関する国際ネットワークの登録に基づく/INCIP)。 現在、INCIPには3,000件を超える症例が登録されている。これらの患者および胎児には様々なリスクがあるが、そのリスクを最小限にするには、産科医が中心的な役割を担う必要がある。 がんの診断の際には、超音波検査による胎児の確認が何より重要だ。そして産科医は、複雑な医学的、倫理的、心理的、宗教的な問題を議論するために、チームの一員であるべきで、腫瘍の種類と段階、妊娠中の診断のタイミングに応じて、どのタイプの治療法を選択するかを一緒に決定する必要がある。 母体だけでなく胎児も化学療法による骨髄抑制によって引き起こされる免疫抑制効果から回復できるよう考慮する必要がある。経膣分娩は、失血が少なく、感染症のリスクが軽減され、入院期間も短いため推奨されるが、帝王切開の適応がある場合もある。子宮頸がんは帝王切開が適応される。 治療は分娩で終了するのではなく、多くの場合、腫瘍治療を続ける必要があり、また新生児の世話も必要であるため、在宅治療の検討も必要となる。母乳育児は生理学的に可能かどうかについては進行中の化学療法に左右される。また、化学療法後の最初の数日間は、母乳を廃棄することを検討すべきだが、腫瘍治療は経腟分娩後すぐに継続である。妊娠中の化学療法は確実に胎児に影響するのではなく、子が正常である可能性は十分にある。 したがって、妊娠中のがんは緊急事態ではなく、熟慮しセカンドオピニオンを得る時間がある。だからこそ、我々はアカウントがなくても無料でアクセスできるAdvisory Board on Cancer, Infertility and Pregnancy(ABCIP)というウェブサイトを開設した。このサイトの掲示板で治療のアドバイスを求めることできる。我々は、1週間以内に回答を提供することを目標としている。 関連記事:
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ニュース AYA 妊孕性 ASCO

高橋さくら

米国州立大学生物学科卒後、国内の臨床検査会社、大学病院研究室で研究開発の後、製薬会社でがん関連製剤の学術情報・マーケティング担当。その後CROにてがん関連治験の立ち上げ業務を経験。また、福祉系大学に社会人入学卒業し、社会福祉士、精神保健福祉士取得。 日本臨床腫瘍学会会員、日本癌治療学会員

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