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高リスク早期トリプルネガティブ乳がんに対する周術期治療としての化学療法へのキイトルーダ併用:KEYNOTE-522試験の日本人サブ解析データ 第33回日本乳癌学会学術集会より
[公開日] 2025.07.30[最終更新日] 2025.07.30
7月10日から7月12日に、第33回日本乳癌学会学術集会(JBCS 2025)が、京王プラザホテルにて開催された。
厳選口演12「臨床試験」のセッションの中で、【Pembrolizumab or Placebo Plus Chemotherapy in Early-Stage TNBC: KEYNOTE-522 Japan Subgroup Analysis】と題して、高野利実先生(がん研有明病院 腫瘍内科)が講演を行った。
KEYNOTE-522試験(NCT03036488)は、高リスク早期トリプルネガティブ乳がん(TNBC)を対象に、化学療法に対するキイトルーダ(一般名:ペンブロリズマブ)の追加を検討した第3相試験。既に病理学的完全奏効(pCR)、無イベント生存期間(EFS)、全生存期間(OS)が統計的に有意かつ臨床的に意義のある改善を示し、日本でも承認を取得している。
今回は、7回目の中間解析における日本人サブグループのEFSおよびOSの結果が発表された。
同試験では、未治療の早期TNBC患者を対象として、術前キイトルーダ+ 化学療法(パクリタキセル+カルボプラチン 4サイクル、その後ドキソルビシンまたはエピルビシン+シクロホスファミド4サイクル)またはプラセボ+化学療法に2:1の割合で無作為に割り付け、手術後はキイトルーダまたはプラセボを最大9サイクルまで投与した。
日本からは76例(キイトルーダ+化学療法45例、プラセボ群31例)が登録された。患者背景は、全体集団と比較して日本人において、PD-L1陽性症例が少ない傾向、およびカルボプラチン投与スケジュールとして3週毎ではなく毎週投与の割合が高い傾向が認められた。
データカットオフ(2024年3月22日)時点で、追跡期間の中央値は76.3(範囲、66.0~81.8)ヵ月であった。
EFSの中央値は両治療群とも未到達であり、ハザード比は0.54(95%信頼区間:0.20~1.50)であった。 5年時点のEFS率は、キイトルーダ+化学療法群で84.4%(95%信頼区間:70.1-92.3)に対してプラセボ+化学療法群で73.2%(95% 信頼区間:53.4-85.6)であった。
OSの中央値に関しても両群で未到達であり、ハザード比は0.82(95%信頼区間:0.22-3.04)であった。5年時点のOSは、キイトルーダ+化学療法群で88.9%(95% 信頼区間:75.3-95.2)に対してプラセボ+化学療法群で86.5%(95%信頼区間:67.9-94.7)であった。
グレード3/4の治療関連有害事象は、キイトルーダ+化学療法群で82.2%、プラセボ+化学療法群で76.7%に発生したが、頻度は全体集団とおおむね一致していた。一方の免疫関連有害事象の発症については、日本人で高い傾向が認められた(全グレード:全体集団では両群それぞれ35.0%と13.1%に対して日本人集団では53.3%と33.3%)。この点に関して高野先生は、特に甲状腺機能障害や大腸炎、肺臓炎、副腎不全などが特徴的であったことをコメントした。
また、治療中止に至った有害事象は、キイトルーダ+化学療法群で24.4%に対してプラセボ+化学療法群で16.7%であったが、死亡に至った有害事象は認められなかった。
以上の結果から、KEYNOTE-522試験に登録された日本症例においても、キイトルーダ+化学療法群のEFSおよびOSは、全体集団と同様の優位性を示すことが明らかになった。また、安全性プロファイルもこれまでの中間解析の結果を一致していたことから、高リスクの早期TNBCを有する日本人患者におけるキイトルーダ+化学療法の使用を支持する結果と言える。
質疑においては、キイトルーダに耐性化した場合の次の治療選択が話題となった。この点に関しては、現在WJOG16522B (PRELUDE)試験(周術期免疫チェックポイント阻害薬投与歴のあるトリプルネガティブ乳がんに対して、キイトルーダ+パクリタキセル+アバスチン(一般名:ベバシズマブ)併用療法とキイトルーダ+パクリタキセル併用療法を比較するランダム化第2相試験)が進行中であり、この結果を見ながら答えを出していきたい、と高野先生は今後の展望を述べた。
関連リンク:
第33回日本乳癌学会学術集会 ウェブサイト
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