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トリプルネガティブ乳がんに対する術前化学療法としてのハラヴェンの長期予後解析 第33回日本乳癌学会学術集会より
[公開日] 2025.07.31[最終更新日] 2025.07.28
7月10日から7月12日に、第33回日本乳癌学会学術集会(JBCS 2025)が、京王プラザホテルにて開催された。
厳選口演12「臨床試験」のセッションの中で、【エリブリンメシル酸塩を用いたTriple negative乳癌術前化学療法の長期成績 (JBCRG-22F試験)】と題して、増田慎三先生(京都大学大学院医学研究科 乳腺外科)が講演を行った。
JBCRG-22試験は、トリプルネガティブ乳がん (TNBC)に対する術前療法としてのハラヴェン(一般名:エリブリン)ベースの治療法を検討した多施設共同無作為化第2相試験である。
グループAは65歳未満で相同組換え修復欠損(HRD)陽性、もしくはBRCA変異陽性を対象とし、「A1群:パクリタキセル+カルボプラチン→FEC療法またはAC療法→手術」と「A2群:エリブリン+カルボプラチン→FEC療法またはAC療法→手術」にランダム化した。
グループBは65歳未満でHRD陰性、もしくは65歳以上(BRCA変異陽性は除く)を対象とし、「B1群:エリブリン+シクロホスファミド→手術」と「B2群:エリブリン+カペシタビン→手術」にランダム化した。
今回は追跡期間中央値5.6年時点の結果が発表された。
CpCRypN0率(病理学的完全奏効、非浸潤性乳管がん遺残を許容)は、A1(23例)、A2(22例)、B1(27例)、B2(27例)群でそれぞれ、65%、45%、19%、19%であった。
5年時点における無浸潤疾患生存率はそれぞれの群において85.7%、86.4%、77.8%、70.4%、また5年時点における全生存率はそれぞれ95.2%、90.7%、81.5%、81.1%であり、A1/2群がB1/2群と比較してより良好な予後を示す傾向が認められた。
また、エリブリンベースの治療群 (A2+B1+B2) で、CpCRypN0を達成した20例の予後は、5年無浸潤疾患生存率が95%、5年全生存率が100%、一方 CpCRypN0 を達成しなかった56例では、それぞれ71.4%と80.2%であり、pCR群で有意に予後が良好であった(p<0.05)。
術前治療開始前のリンパ球数、好中球リンパ球(NLR)比と治療効果に関する探索的解析では、術前治療の効果(病理学的完全奏効率)には影響せず、リンパ球数1500/mm3以上、NLR<3の症例群で長期予後(無浸潤疾患生存期間および全生存期間)が良好な傾向が確認できた。
以上の結果は、エリブリンベースの術前化学療法によって病理学的完全奏効が得られた場合、良好な予後が期待できることを示唆している。
今回の結果を受けて増田先生は、「現在はKEYOTE-522が標準療法となっていますが、術前化学療法に対して本当に免疫チェックポイント阻害剤の追加や術後の治療継続が必要な患者さんを、もう一度検討していくことも提案していきたいです」と増田先生はコメントした。
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第33回日本乳癌学会学術集会 ウェブサイト
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