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ホルモン受容体陽性HER2陰性進行乳がんに対するCDK4/6阻害剤の使用タイミングを再考:一次治療で使用するのが最適か? 第33回日本乳癌学会学術集会より

[公開日] 2025.07.29[最終更新日] 2025.07.25

7月10日から7月12日に、第33回日本乳癌学会学術集会(JBCS 2025)が、京王プラザホテルにて開催された。 特別企画4「どこまでガイドラインに従うべきか?」のセッションの中で、CDK4/6阻害剤の使用について議論された。 ホルモン受容体(ER)陽性HER2陰性進行乳がんに対するCDK4/6阻害剤は、ガイドライン上は1次治療での使用が推奨されているものの、毒性や治療費の問題も大きい。このような背景の中、同セッションで議論された内容を、当日発表された複数の演題とともに紹介する。 ER+/HER2-進行乳がんにおける治療ライン毎のアベマシクリブの全生存への影響:徳永えり子先生(九州がんセンター 乳腺科) CDK4/6阻害剤であるアベマシクリブ(製品名:ベージニオ)を実施したER陽性HER2陰性進行乳がん(ABC)患者さんを対象に、アベマシクリブの治療ライン毎の成績を解析した後ろ向き試験の結果が発表された。 対象は、2018年12月から2024年1月までに九州がんセンターにおいてアベマシクリブ+内分泌療法を開始し、3ヵ月以上の治療継続および追跡が可能であった114例のER陽性HER2陰性ABC患者さんであり、臨床病理学的特徴と治療成功期間(TTF)および全生存期間(OS)が評価された。 患者背景は、年齢の中央値が61歳、閉経前の症例が25.4%に対して閉経後が74.6%、アベマシクリブの使用ラインは、1次が43.9%、2次治療が20.2%、3次治療以降が36.0%であった。閉経前や内臓/肝転移を有する患者さんでは、1次治療で使用する傾向があり、逆に術後内分泌療法終了後12ヶ月以上経過した後の再発症例では、3次以降での使用が多い傾向を示した。 TTFの中央値は、1次、2次、3次治療以降でのアベマシクリブ併用療法において、それぞれ19.6、12.7、14.9ヶ月、またアベマシクリブ開始からのOSの中央値はそれぞれ43.3、40.7、57.8ヶ月であり、いずれも統計的な有意差を示さなかった。一方、ER陽性HER2陰性ABCと診断されてからのOSの中央値はそれぞれ43.7、58.8、135.4ヶ月であり、アベマシクリブを3次治療以降で使った患者群で最長であった(p<0.0001)が、これは「3次治療まで治療が可能な患者さんのみが偏って選択されていることも考慮する必要がある」と徳永先生はコメントした。 徳永先生は今回の試験に関して、少ない症例を対象とした後ろ向き解析であるという制限はあるものの、1次治療からのアベマシクリブ併用は、ER陽性HER2陰性ABCの全例で必ずしも必要な治療ではなく、2次治療以降で使用しても良好な予後が十分に期待できる症例がいることを示唆していると結論付けた。 日本のリアルワールドデータからみえたパルボシクリブの有効性:関 大仁先生(杏林大学医学部乳腺外科学教室) ER陽性HER2陰性ABC患者さんを対象に、CDK4/6阻害剤であるパルボシクリブ(製品名:イブランス)の治療ライン毎(1次、2次、3次治療以降)で分類した3つのコホート(A、B、C) の成績を解析した前向き観察研究の結果が発表された。 対象は、2019年4月から2023年1月までに登録された閉経後のER陽性HER2陰性ABC患者さん700例(コホートAは246例、コホートBは282例、コホートCは65例)であり、主要評価項目は各治療ラインにおける無増悪生存期間(PFS;パルボシクリブ開始から増悪または死亡までの期間)、副次的評価項目は、OS、臨床的有用率(CBR;6ヶ月時点でSD以上の奏効が得られた割合)、PFS2(1次治療開始から2次治療中の増悪・死亡までの期間)などが評価された。 年齢等の患者背景は、コホート間で大きなばらつきはなかったものの、術後化学療法実施率は各コホートについてそれぞれ25.6%、55%、46.2%、再発後の内分泌療法の実施率はそれぞれ0%、44.7%、100%、また肺/肝転移を有する症例の割合はそれぞれ38.3%、58.9%、58.1%であった。 それぞれのコホートにおけるCBRは、86.2%、78.4%、70.8%であり、2次治療以降でも良好な数値であることを関先生は強調した。また、主要評価項目であるPFSの中央値はそれぞれ、25.8ヵ月、18.0ヵ月、12.0ヵ月であり、3年の生存率(統計解析前の参考値)はそれぞれ76.3%、68.0%、58.5%であった。 そして今回の解析の中で関先生が注目したのはPFS2のデータだという。コホートAでは36.4ヶ月であったのに対してコホートBでは57.9ヶ月と、予想以上に良好な結果を示した。これは、コホートBでは1次治療後にパルボシクリブを使用できた症例のみに限定したため、理想的な2次治療へのパルボシクリブ導入が前提となった結果だとコメントした。 今回の前向き試験の結果は、2次治療としてのパルボシクリブの使用が容認されるべき患者さんもいるということを示唆しており、CDK4/6阻害剤をガイドライン通り一律に一次治療として推奨することが最適とは限らないのではないか、と関先生は結論付けた。 また、CDK4/6阻害剤を1次治療から使う場合と、2次治療以降で使う場合を比較した第3相SONIA試験*の責任医師であり、今回の演者にもなっていたGabe S. Sonke先生は、1次治療としての内分泌療法単独の有用性を述べ、CDK4/6阻害剤の2次治療以降での使用を考慮することの重要性を強調した。 最後に座長の徳永えり子先生は、「ガイドラインの推奨が全てではない」とし、ガイドラインには反映されていない最新のエビデンスや、個々の患者さんの毒性(有害事象、経済毒性、時間毒性、等)を加味して、最適な治療を検討していくことの重要性を語り、セッションを締めくくった。 *SONIA試験:ER陽性HER2陰性ABCを対象に、CDK4/6阻害薬を1次治療で投与する群と2次治療で投与する群に1 : 1で無作為に割り付けて比較検証した世界で唯一のランダム化第3相試験。1次治療群は、 2次治療群と比べてPFSの中央値の有意な改善が示された一方で、PFS2およびOSの中央値では有意差が認められなかった。 また1次治療から投与することで、Grade3以上の有害事象の増加や、 患者1人あたりの治療コストの増大が認められた。 関連リンク: 第33回日本乳癌学会学術集会 ウェブサイト
ニュース 乳がん CDK4/6阻害剤ホルモン受容体陽性HER2陰性乳がん

浅野理沙

東京大学薬学部→東京大学大学院薬学系研究科(修士)→京都大学大学院医学研究科(博士)→ポスドクを経て、製薬企業のメディカルに転職。2022年7月からオンコロに参加。医科学博士。オンコロジーをメインに、取材・コンテンツ作成を担当。

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