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乳がんを取り巻くがん遺伝子パネル検査の現状と課題:最適な検査方法とそのタイミングを考える 第33回日本乳癌学会学術集会より
[公開日] 2025.07.28[最終更新日] 2025.07.25
7月10日から7月12日に、第33回日本乳癌学会学術集会(JBCS 2025)が、京王プラザホテルにて開催された。
ワークショップ1「がんゲノム医療の現状と課題」のセッションの中で、【乳癌におけるがんゲノム検査の現在地~保険収載された検査の"使いどころ"を徹底整理~】と題して、池田貞勝先生(東京科学大学・がんゲノム診療科)が講演を行った。
現在日本において使用できるがん遺伝子パネル検査(CGP検査)は、がんの組織検体を使うものについては「FoundationOne(F1) CDx」「NCCオンコパネル」「GenMine TOP」、また血液検体を使うものについては、「BRACAnalysis」「FoundationOne(F1) Liquid」「Guardant360 CDx」、とそれぞれ3つの検査方法がある。これらの検査に関して池田先生は、どの検査をどのタイミングで使うのかという、乳がんにおける遺伝子検査の課題を提示し、自身の見解を述べた。
まず検査方法に関しては、原則として組織検査を検討する、と池田先生。特に、多くの遺伝子変異を検出可能であることに加え、結果のレポートにアノテーション(検出された遺伝子の解析や臨床的意義付けなど)がついていること、また今年からトルカプ(一般名:カピバセルチブ)のコンパニオン診断薬にもなっていることから、F1 CDxが推奨されるという。またF1 CDxのもうひとつの利点として、古い検体でも結果が出やすい傾向があり、池田先生は「18年前の乳がん患者さんの検体を使った経験もある」とコメントした。ただし、検体量が少ない場合や遺伝性腫瘍を疑う場合にはNCCオンコパネル、融合遺伝子を検出したい場合にはGenMine TOPが望ましいと述べた。
一方で、組織検査が難しい場合には血液検査の使用が推奨される。池田先生は、検出できる遺伝子変異数や免疫療法(キイトルーダ)の適応に必要なTMB(腫瘍遺伝子変異量)の情報が得られる点においてF1 Liquidが望ましいが、体内のがん組織が少ない場合には感度が高いGuardant360が、また厚労省によるゲノム医療の指定を受けていない病院ではBRACAnalysisが望ましいとした。
続いて検査のタイミングに関しては、厚生労働省や医薬品医療機器総合機構(PMDA)、がんゲノム医療中核拠点病院等連絡会議診療ワーキンググループ、3学会(⽇本癌治療学会・⽇本臨床腫瘍学会・⽇本癌学会)合同ゲノム医療推進タスクフォース等の様々な見解において、これまで議論になってきた「標準治療終了(見込み)」の解釈が、「初回治療中にCGP検査を実施しても問題ない」という考えに統一されたと池田先生。例えば大腸がんにおいては、初回治療開始後の段階からのCGP検査の実施が既に2024年版のガイドライン上に明記されている。
また、今年の6月に公表された「次世代シークエンサー等を用いた遺伝子パネル検査に基づく固形がん診療に関するブリーフィングレポート」の中では、コンパニオン診断として運用する場合には、初回治療前から実施できるという道筋も示されており、「早期からの検査の使用について整理された」と池田先生は説明した。
最後に池田先生は、乳がん領域における新しい動向として、先進医療Aとして標準治療終了前のCGP検査の実施が検討されていること、またアストラゼネカ社がトルカプの対象患者を同定するコンパニオン診断薬を開発中であり、新規コンパニオン診断薬が承認されるまでは、F1 CDxの無償提供プログラムが実施されていることに言及。今後のCGP検査の広がりに期待を寄せるとともに、引き続き使用方法の最適化の必要性を語り、講演を締めくくった。
また質疑の中で、CGP検査はがんの性質を遺伝子レベルで知る目的があり、「早めに実施することで治療戦略が立てやすくなる」と池田先生。CGP検査が必要なトルカプが標準療法となったこと、また複雑な検査方法が少しずつ整理されてきたことを機に、これから検査が普及していくことへの期待を語った。
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