※本記事はEvaluate社の許可のもと、オンコロが翻訳したものです。内容および解釈については英語の原文を優先します。正確な内容については原文をお読みください。
タルゼンナ(一般名:タラゾパリブ)の全例投与を裏付けるTalapro-2試験のデータは、Asco-GUの討論者によって批判的に評価された。それは、リムパーザ(一般名:オラパリブ)の結果から、失敗の可能性が示唆されたためである。
米ファイザー社のParp阻害剤タルゼンナは、前立腺がん全例で初回治療の効果を示す、という目標を達成したのだろうか?昨夜、NCI(米国国立がん研究所)のNeeraj Agrawal氏は、Asco-GUで最新のデータを発表し、Talapro-2試験の結果は、「HRR遺伝子変更の状態にかかわらず」タルゼンナとイクスタンジ(一般名:エンザルタミド)の使用を支持すると発表した。
しかし、そう簡単にはいかない。Parp阻害剤には、全例に効果があるかのような幻のデータがあり、リムパーザの別のデータが、なぜOS(全生存期間)を重要視すべきなのかを示している。そして肝心のTalapro-2試験では、OSがまだ発表されていない。Virgen de la Victoria大学病院のElena Castro氏は、Talapro-2試験を評して、Agrawal氏の全例に効果があるという主張を否定している。
昨日(2023年2月16日)のAsco-GUセッションの討論者であるCastro氏は、「私は、HRR(相同組み換え修復)の状態が重要だと思います」と述べている。彼女は、HRRの能力を持っている患者のみを対象とした場合、Talapro-2試験におけるPFS(無増悪生存期間)の有益性が低下することを強調し、Agrawal氏がHRRの状態によって分けた奏効率解析を提示しないことを批判した。
ファイザー社は、昨年(2022年)10月に、タルゼンナ+イクタンジ併用療法とイクタンジ単剤の一次治療を比較したTalzenna-2試験を発表しており、昨日、そのデータをFDA(米食品医薬品局)に提出したと発表した。この申請に対して、米国の規制当局は今年中に、タルゼンナの承認範囲を決定することになっている。 リムパーザの警告英アストラゼネカ社/米メルク社のリムパーザに大きく差をつけられ、4番目に市場に出たParp阻害剤として、タルゼンナはすべてを兼ね備えている。
Talapro-2試験では、イクスタンジにタルゼンナを追加することで、進行リスクを27%軽減することが示された(p<0.001)。これはHRR欠損患者(ハザード比0.46)によってもたらされた効果だが、HRRの状態が正常な患者(ハザード比0.66)でも明らかになったと、Agrawal氏は述べている。
しかし、これは一見支持されるべきことのように見えるが、HRR欠損症例における効果がより小さいことが肝心であり、Agrawal氏は、HRR欠損症例ではなく、全例で良好な全奏功率のデータのみを発表したことは特筆すべきである。
これはまさにリムパーザのPropel試験で起こったことであり、OSデータは昨日、Asco-GUで更新された。これらの結果は、HRR欠損患者においてのみ、リムパーザ+ザイティガ(一般名:アビラテロン)併用がザイティガ単剤よりも明らかに良好であり、HRR正常患者においては、ハザード比の信頼区間の上限が1.00を超えており、明らかにベネフィットがないことを示した。
もう一つの教訓は、卵巣がんという別の適応症に注目することである。ここでは、Parp阻害剤はHRR欠損を持たない患者(Brca変異がその最たる例である)において有益であるかどうか、特に規制当局の監視下におかれている。
卵巣がんの維持療法では、リムパーザ、英グラクソ・スミスクライン社/米ジョンソン・エンド・ジョンソン社のゼジューラ(一般名:ニラパリブ)、米Clovis Oncology社のルブラカ(一般名:ルカパリブ)が当初全例に承認されたが、これらは主にPFSデータに基づくものであった。その後、Nova試験でgBRCA(生殖細胞系列BRCA遺伝子変異)陰性患者は対照群よりゼジューラ群で悪いことが示され、11月にグラクソ・スミスクライン社はゼジューラの二次治療後の維持療法の適応をBRCA遺伝子変異陽性患者に限定することを決定した。
その直後、FDAはClovis Oncology社に、ルブラカについても同様の制限を設けるよう要請した。米Wolfe Research社のアナリストは、Clovis Oncology社が12月にこの要求に応じたと述べており、ゼジューラの一次治療後の維持療法の使用設定も同様のリスクにさらされる可能性があと指摘している。ルブラカの詳細な処方情報は現在入手不可能であり、Clovis Oncology社は連邦破産法第11条に基づく手続きを行っている。
PFSのみ卵巣がんに対する厳しい指摘は、前立腺がんの初回治療を対象としたTalapro-2試験を含むParp阻害剤を用いたすべての臨床試験が、PFSの観点でのみ有効であるという明白な事実に基づいている。
そして、前立腺がんについては、すでに規制当局が警告を発している兆しがある。アストラゼネカ社/メルク・アンド・カンパニー社は、Propel試験に基づいてリムパーザを全例対象で申請したが、12月にFDAはその対応時期を3ヶ月遅らせた。Asco-GUが明らかにしたPropel試験でHRR正常患者にOSのベネフィットがなかったことは、FDAが足踏みしている理由を強く示唆するものである。
前立腺がんの一次治療におけるParp阻害剤は、HRR欠損患者に限定される可能性が高まっているようだ。他の2剤のうち、ゼジューラは今のところEUでのみ承認待ちであり、しかもHRR欠損患者に対してのみである。ルブラカのCaspar試験は、全例を対象としたデザインで、今年中に結果が出る予定だ。
Castro氏は、Talapro-2のような試験におけるParp併用療法の有用性をよりよく理解する必要があると述べ、議論を締めくくった。「潜在的な有効性と副作用のバランスは、HRRの状態によって異なります」と、Castro氏は Asco-GUで語った。「PFSの有用性が必ずしもOSの有用性につながるとは限りません」。
■出典
asco-gu-talzenna-remains-wait-and-see-story-prostate-cancer