※本記事はEvaluate社の許可のもと、オンコロが翻訳したものです。内容および解釈については英語の原文を優先します。正確な内容については原文をお読みください。
肺がんの新たなニッチな領域はAscoの主要な焦点であり、中国のDizal社が最も魅力的なデータセットを誇っていると思われる。 先月、米ジョンソン・エンド・ジョンソン社の「Rybrevant」が承認を得たことは、EGFRエクソン20挿入変異肺がんの治療において歴史的な出来事だったが、同社がこの領域を独占できる期間はおそらく長くないだろう。 次に登場するのは武田薬品工業のモボセルチニブであり、米国での薬事申請の期限は10月26日となっているが、Rybrevantとは異なり低分子化合物である。今週末の米国癌治療学会議(Asco 2021)では、非小細胞肺がん(NSCLC)の2~4%を占めると考えられているこのニッチな遺伝子をターゲットにしようとする企業から多くの臨床データが発表されたが、モボセルチニブのデータは最も印象的、ではなかった。 DZD9008 (Dizal) その栄誉は、同変異を標的とする低分子化合物「DZD9008」を公開した米Cullinan Oncology社とほぼ無名の中国の未上場企業であるDizal Pharmaceuticals社のものだ。Dizal社の発表は、中国とグローバルの2つの研究から得られたデータをプールしたもので、最大の特徴は、EGFRエクソン20挿入変異を有する53人の被験者において40%という全奏効率(ORR)が得られたことだ。 この結果は、被験者が末期であったことや、Rybrevantで再発した4人の患者のうち2人が寛解したという事実を考慮すると、特に印象的である。米Spectrum Pharmaceuticals社のポゾチニブが有効でなかった2名の患者には効果がなかった。 Source: Dr James Chin-Hsin Yang & Asco. また、注目すべき点は、DZD9008によるグレード3以上の下痢の発生率が5%と、これはRybrevantの3%と同程度であり、武田薬品工業のモボセルチニブの別の試験で認められた21%よりもはるかに低い値だった。 モボセルチニブ(武田薬品工業) この試験は、武田薬品工業が米国FDAに提出した複雑な第1/2相試験である。化学療法後のEGFRエクソン20挿入コホートは、2月の世界肺癌学会(WCLC 2020)でデータが公表され、武田薬品工業によるAscoでのアップデートには、同じ114人の患者が含まれており、2020年11月1日のデータカットオフ時のORRは独立評価で28%(治験責任医師評価で35%)だった。 BDTX-189 (Black Diamond) スイス・Black Diamond Therapeutics社の低分子薬「BDTX-189」にも下痢が発生しているようで、Ascoにおける第1相データでは、肝酵素の上昇に加えて、グレード3以上の下痢の割合は約10%、最高用量では33%にまで上昇している。極初期の結果では、EGFRまたはHer2エクソン20挿入陽性で複数の前治療を受けた評価可能な6人の被験者のうち、EGFR変異体で1例の部分寛解が認められた。 CLN-081 (Cullinan) Her2とEGFRは関連しており、実際にEGFRはHer1と呼ばれることもあるが、これらは異なるドライバー変異を表している。EGFRエクソン20挿入にのみ作用し、Her2エクソン20変異体(あるいはEGFR野生型NSCLC)には作用しないと考えられている低分子化合物のひとつが米Cullinan社のCLN-081であり、ユニークなピロロピリミジン骨格を有するとされている。 CLN-081のヒト第1相試験は、4月1日のカットオフ時点で評価可能な42人の被験者で構成されており、Ascoにおける発表では、第2相試験の用量である1日2回100mg投与群における54%のORRを含む、すべての用量で21例の部分奏効が得られたことが明らかになった。 また、Cullinan社によると、最も長い寛解が得られた2例はモボセルチニブとポゾチニブの両方で不応となった患者であり、他の2例(ポゾチニブ投与後1例、モボセルチニブ投与後1例)は寛解が得られなかった。 Source: Dr Zofia Piotrowska & Asco. ジョンソン・エンド・ジョンソン社は、AscoでRybrevantのデータも発表したが、これはNSCLCの別のニッチな領域、つまり英アストラゼネカ社のタグリッソに抵抗性を示したEGFRエクソン19欠失/エクソン21L858R患者を対象としたもので、治験であるChrysalis試験の別のコホートの発表だった。 この結果は、さまざまな下流の変異を有する患者において36%のORRが得られたことだけでなく、RybrevantがJ&Jの低分子化合物であるlazertinibと併用されたことでも注目された。Rybrevantとlazertinibの併用療法は、ジョンソン・エンド・ジョンソン社がMariposa試験で第一選択薬として推し進めているものだ。 一方、脳転移のある患者に焦点を当てたSpectrum社のポゾチニブは、Ascoでは控えめな存在だったが、EGFRの適応で失敗した後、今年の薬事申請はHer2エクソン20挿入変異を適応として行われる予定だ。 このように、ポゾチニブはEGFRエクソン20の領域では残念な結果となったが、他のプロジェクトでは遅かれ早かれRybrevantに挑戦することになりそうだ。