AACR 2023 – モデルナのネオアンチゲン免疫療法にさらなる希望Evaluate Vantage(2023.4.16)より


  • [公開日]2023.04.28
  • [最終更新日]2023.04.28

※本記事はEvaluate社の許可のもと、オンコロが翻訳したものです。内容および解釈については英語の原文を優先します。正確な内容については原文をお読みください。

12月の米モデルナ社/米メルク・アンド・カンパニー社の発表後、Keynote-942試験の完全なデータが注目を集めた。

2022年12月、モデルナ社のがん免疫療法であるmRNA-4157の臨床試験で、史上初の良好な結果が報告され、脚光を浴びた。グループの評価額は150億ドル上昇し、このニュースは、メルク社がこのプロジェクトに2億5千万ドルを投じた妥当性を示すものであった。

しかし、その期待は的中したのだろうか。本日(2022年4月16日)、米国癌学会(AACR)で発表されたKeynote-942試験(悪性黒色腫の術後補助療法)の全データを見ると、その答えは「おそらくYES」であった。この結果は、12月に発表されたとき程の大きな疑問を引き起こすものではなかった。また、潜在的な問題の1つであったキイトルーダ(一般名:ペムブロリズマブ単剤療法の比較対象群の成績不良は緩和されたようだ。

KEYNOTE-942試験の主な限界は、規模が小さいことだったようだ。この試験は、腫瘍を切除した悪性黒色腫患者157名のみを登録し、主要評価項目である無再発生存期間RFS)において、キイトルーダ+mRNA-4157がキイトルーダ単独と比較して優位性を示すようデザインされた。

昨年12月、このエンドポイントが達成され、再発または死亡率が44%減少した、と両社は発表した。しかし今日まで、2つのコホートで見られた決定的な結果については何も分かっていなかった。

RFS curves in Keynote-942. Source: Jeffrey Weber & AACR.

AACRでは、18カ月時点のRFSがキイトルーダ単剤の62.2%に対して、今回の併用療法では78.6%であることが明らかにされた。重篤な有害事象はそれぞれ25%対18%で発現し、mRNA-4157併用療法群ではグレード4の事象や死亡は認められなかった。

mRNA-4157は、患者の腫瘍に存在する最大34個のネオアンチゲン(がん抗原)をもとに、患者毎に作成される個別化mRNA治療薬である。キイトルーダは、III期の悪性黒色腫(Keynote-054試験の結果に基づく)およびより早期であるIIB/C期の悪性黒色腫(Keynote-716)の両方に対して、術後補助療法として承認されている。

Keynote-942試験におけるキイトルーダの過小評価を示唆するのは、Keynote-054試験の結果であろう。Keynote-054試験における18ヶ月RFSは71%であったため、今回のKeynote-942試験における62%は低いとみなすことも可能である。試験間の比較は不確実であるが、もしキイトルーダ単剤の実際の18ヶ月RFSのベネフィットが70%に近いとすれば、mRNA-4157との併用による79%という結果は、それほどインパクトがないように思われる。

とはいえ、さらに考慮すべきことがある。それは、Keynote-942試験には、Keynote-054試験が対象としていたIII期の悪性黒色腫患者に加えて、より進行したIV期の症例が含まれていたことである。Keynote-942試験の被験者157名のうち22名がIV期であり、この事実が試験全体の有効性を低下させる要因であったかもしれない。

メルク社はEvaluate Vantageチームに対し、キイトルーダはこれまで観察されてきたものと一貫した効果を発揮したと述べている。米ブリストル・マイヤーズ スクイブ社のオプジーボ(一般名:ニボルマブ)は、IV期およびIII期の術後補助療法として承認されており、Checkmate-238試験では18ヶ月RFSが約65%であった。

Keynote-942試験の全データが発表される以前から、みずほ証券はキイトルーダ単剤群の1年RFSが75%以上、mRNA-4157併用群のコホートがそれ以上であれば、最高のシナリオになると考えてきた。12ヶ月後のRFSは、対照群で77%、キイトルーダ+mRNA-4157群で83%となり、みずほ証券の描く理想的なシナリオを満たす結果となった。

片側だけのp値の使用や、ハザード比の上限が1.00を超えること(サンプル数が少ないためと説明される可能性がある)についてのこれまでの懸念は、依然として残されている。このような議論は、モデルナ社のポストコロナ期における非常に重要な資産であるmRNA-4157の市場成長の可能性を評価する上で鍵となる。

mRNA-4157の薬事規制がどうなるかはまだ不明だが、モデルナ社は発表の中で、悪性黒色腫の第3相試験がまもなく開始され、「肺がんおよびそれ以外」の試験も計画されていると述べた。

Keynote-942試験の他の関連する側面として、ネオアンチゲンとPD-L1発現によるデータのカットオフが挙げられる。別のAACRの演題では、患者のTMB(遺伝子変異量)で結果を切り分け、キイトルーダ単剤療法はTMB高値集団の方が低値集団よりも効果が高いが、mRNA-4157+キイトルーダではそうした差がないことを明らかにしている。

その他

mRNA-4157は、この種のネオアンチゲン免疫療法としては初めて有効性を示したプロジェクトであることから、バイオテクノロジーの専門家にとって大きな関心事である。

AACR2020において、独Biontech社がスイスのロシュ社と提携しているautogene cevumeran(RO7198457)は、期待を裏切る結果を示した。提携企業は、キイトルーダとの併用で、悪性黒色腫を対象とした第2相試験に移行し、その結果は今年中に発表と予想されている。

ここで注目すべきもう1つの重要な企業は米Gritstone Bio社で、同社のGraniteプロジェクトは第2/3相試験が進行中である。Gritstone Bio社は、自社の技術には強力なT細胞プライミング効果があり、“Cold(免疫不活性型)”な腫瘍を“Hot(免疫活性型)”な腫瘍にすることを目的としていると主張している。このため、Graniteを悪性黒色腫のようなもともと比較的免疫活性の高い腫瘍ではなく、むしろ大腸癌で試験している。

Gritstone社の第2相試験から得られる最初のランダム化データは、第4四半期に予定されている。

これは、以前に掲載された記事の更新版です。

■出典
aacr-2023-more-hope-modernas-neoantigen

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