I期のHER2陽性乳がんに対する術後療法としてのトラスツズマブ エムタンシン、長期的な予後の改善を示すJournal of Clinical Oncologyより


  • [公開日]2024.07.05
  • [最終更新日]2024.07.02
この記事の3つのポイント
・I期のHER2陽性乳がんを対象とした第2相ATEMPT試験
・術後療法としてのトラスツズマブ エムタンシンの長期予後を検討
・トラスツズマブ エムタンシンによる1年間の術後療法は、良好な転帰を示す

2024年06月27日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にて、I期のHER2陽性乳がんに対する術後療法としての抗HER2抗体薬物複合体であるトラスツズマブ エムタンシン(T-DM1、カドサイラ)療法の有効性安全性を検証した第2相ATEMPT試験の結果がDana-Farber Cancer InstituteのPaolo Tarantino氏らにより公表された。

ATEMPT試験はI期のHER2陽性乳がんに対する術後療法として、T-DM1療法を1年間実施する群、もしくはパクリタキセルハーセプチン(一般名:トラスツズマブ)併用療法を実施する群に3対1の割合で振り分け、主要評価項目として、有害事象発現率の群間での比較と、T-DM1による浸潤無病生存期間iDFS)の比較が設定された。今回の報告は長期フォローアップの有効性の結果である。

本試験のフォローアップ期間中央値5.8年時点における結果、主要評価項目である5年iDFSはT-DM1療法群で97.0%(95%信頼区間:95.2%-98.7%)を示した。T-DM1療法群におけるiDFSの改善効果は、腫瘍径、ホルモン受容体の発現、HER2免疫組織化学的スコア、T-DM1の投与期間(6ヶ月以上 vs 6ヶ月未満)に関わらず同等であった。また、5年無再発率(RFI)は98.3%(95%信頼区間:97.0%-99.7%)、5年全生存率(OS)は97.8%(95%信頼区間:96.3%-99.3%)、5年乳がん特異的生存率(breast cancer-specific survival)は99.4%(95%信頼区間:98.6%-100%)を示した。

HER2DX検査に十分な組織を有する患者(187人、うちT-DM1を投与された患者数は147人)において5年の転帰を調べた結果、HER2DX高リスク腫瘍の方が再発リスクが高いことが示された。HER2DX低リスク腫瘍と高リスク腫瘍のそれぞれにおいて、RFI(98.1%対81.8%、ハザード比[HR]、0.10、P = 0.01)およびiDFS(96.3%対81.8%、HR、0.20、P = 0.047)であった。

以上のATEMPT試験の結果よりDPaolo Tarantino氏らは、「I期HER2陽性乳癌患者に対する術後療法としてのT-DM1療法は、長期的な予後の改善に貢献する可能性が示唆されました。また、HER2DX スコアは再発リスクと有意に相関していることが示されました」と結論付けた。

参照元:
Adjuvant Trastuzumab Emtansine Versus Paclitaxel Plus Trastuzumab for Stage I Human Epidermal Growth Factor Receptor 2–Positive Breast Cancer: 5-Year Results and Correlative Analyses From ATEMPT(Journal of Clinical Oncology 2024. DOI:10.1200/JCO.23.02170)

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