国内初の造血器腫瘍遺伝子パネル検査「ヘムサイト」が承認、血液がんのより精密な診断・治療選択・予後予測が可能に国立がん研究センターらが記者会見


  • [公開日]2024.10.01
  • [最終更新日]2024.09.30

9月26日、国立がん研究センターは「国内初の造血器腫瘍遺伝子パネル検査「ヘムサイト」の製造販売承認取得について」と題した記者会見を開催した。

造血器腫瘍とは血液のがんのことであり、主に白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫などに分類される。日本での年間罹患数は5-6万人であり、特に小児がんに占める割合が高く、白血病とリンパ腫を合わせると、小児がんの42%に上る。

血液がんは遺伝子異常に基づいて分類されるため、国際的なガイドラインではゲノム情報が診療に必須とされている一方で、日本では血液がんにおけるゲノム医療が進んでいないという背景があった。

そこで、造血器腫瘍ゲノム検査ガイドライン2023年版において、治療・診断・予後のそれぞれの観点から、ゲノム検査の有用性についてのエビデンスを付与。血液がんにおける遺伝子パネル検査の使用に推奨度を記載し、遺伝子パネル検査の必要性を明記した。そして、日本における造血器腫瘍遺伝子パネル検査の承認を目指し、国立がん研究センターと大塚製薬が開発した検査ツールに関して、ゲノム解析実勢を持つ医療機関の協力の下で性能を検証し、製品化を実現した。

片岡圭亮氏(国立がん研究センター 分子腫瘍学分野長)は、血液がんの詳細な分類は遺伝子異常により定義されること、その遺伝子異常に応じた治療選択が必須であること、そして遺伝子異常がリスク分類に直結することから、遺伝子検査が血液がんにおける診断・治療選択・予後予測に必須であることを強調。遺伝子検査ツールの有用性を評価した前向き研究により、最初の診断や予後予測の段階で特に有用性が高いことが示された。片岡氏は同結果を受けて、標準療法後のパネル検査が推奨されている固形がんと違い、初発時にパネル検査を実施することが、血液がんの精密な個別化治療には重要だ、と述べた。

今回承認された「ヘムサイト」は、診断薬と解析プログラムのふたつで構成されている。大橋達朗氏(大塚製薬株式会社 診断事業部 事業部長)によると、ヘムサイトの名前の由来は、血液を意味する「ヘム」と、広範囲を見渡し判断するという意味を含む「サイト」をつなげることで、血液がんにおける遺伝子異常を網羅的に見つけて精密に判断するという想いが込められている。

具体的には、ヘムサイトを使うことで、一塩基置換や遺伝子の挿入・欠損、また融合遺伝子や構造異常を含む計452の遺伝子を、DNAとRNAの解析によって同定することが可能である。検査の流れとしては、ヘムサイト診断薬により患者さんの検体から標的となる遺伝子領域を濃縮し、イルミナ社の医療機器を使った配列解析を実施。その後ヘムサイト解析プログラムにて血液がんに特徴的な遺伝子異常を検出し、その結果を専門家による会議で解釈し、診断や治療選択につなげていく。

今回の開発の中で、パネル検査の実施可能性や臨床的有用性の評価において臨床医の立場として責任者を務めた伊豆津宏二氏(国立がん研究センター中央病院 血液腫瘍科 科長)は、研究用途ではなく実臨床で網羅的な遺伝子検査を実施できる初めてのツールとして、ヘムサイトに大きな期待を寄せた。また、診断時の予後予測や推奨される治療選択に関する客観的なデータを示すことが可能となるため、患者さんの意志決定の強い根拠になり得るという点を、今回の開発の意義として強調した。

×

リサーチのお願い


会員登録 ログイン