この記事の3つのポイント
・HER発現陽性の進行固形がんを対象とした第2相試験
・HER2を標的とした抗体薬物複合体トラスツズマブ デルクスデカンの有効性と安全性の検証
・HER2発現陽性の幅広い固形がんに対して、トラスツズマブ デルクスデカンが奏効
2023年6月2日~6日、米国・シカゴにて開催されてた米国臨床腫瘍学会(ASCO2023)にて、HER2陽性の進行性固形がん患者に対する抗HER2抗体薬物複合体(ADC)であるトラスツズマブ デルクステカン(製品名:エンハーツ)単剤療法の有効性、安全性を検証した第2相のDPT02試験(NCT04482309)の結果がMemorial Sloan Kettering Cancer Center・Funda Meric-Bernstam氏らにより公表された。
本試験は、HER2陽性の進行性固形がん患者に対して、3週を1サイクルとしてトラスツズマブ デルクステカン5.4~6.4mg/kg単剤を病勢進行または有害事象が発現するまで投与し、主要評価項目として奏効率(ORR)、副次評価項目として奏効期間(DOR)、病勢コントロール率(DCR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、安全性などを検証した米国・日本多施設共同オープンラベルの第2相試験である。
トラスツズマブ デルクステカンは、HER2発現陽性の乳がん、胃がんで既に承認されている。一方で、HER2は他の固形がんでも発現が確認されており、抗腫瘍効果を発揮する可能性が示唆されている。以上の背景より、治療法がない、または標準治療抵抗性を示したHER2発現陽性の進行性固形がんに対するトラスツズマブ デルクスデカンの有効性・安全性を検証する目的で本試験が開始された。
全267例の追跡期間中央値9.7カ月時点でのORRは37.1%、また副次評価項目であるDORの中央値は11.8ヶ月を示した。HER2高発現(免疫組織染色(IHC)にて3+)の症例のORRは61.3%、ODRの中央値は22.1ヶ月を示した。
一方の安全性として、グレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)発症率は58.4%を示し、治療関連有害事象(TRAE)による治療中止率は11.6%、薬剤性間質性肺疾患/肺炎の発症率は6.7%(18例)を示した。
以上の第2相試験の結果よりFunda Meric-Bernstam氏らは「HER2陽性の進行性固形がん患者に対する抗HER2抗体薬物複合体トラスツズマブ デルクステカン単剤療法は、奏効率が良好で、有害事象も管理可能であるため、HER2発現固形がんに対する新しい治療選択肢になる可能性を示しています」と述べている。
Efficacy and safety of trastuzumab deruxtecan (T-DXd) in patients (pts) with HER2-expressing solid tumors: DESTINY-PanTumor02 (DP-02) interim results(ASCO 2023 Abst#LBA3000)あなたは医師ですか。