タキサン系化学療法後の転移性去勢抵抗性前立腺がんに対する維持療法としてダロルタミド単剤療法、12週無増悪生存率64.7%を示すJournal of Clinical Oncologyより


  • [公開日]2023.02.20
  • [最終更新日]2023.02.20
この記事の3つのポイント
転移性去勢抵抗性前立腺がん患者が対象の第2相試験
タキサン化学療法後の維持療法としてのダロルタミド単剤療法有効性安全性プラセボと比較検証
・12週無増悪生存率は64.7%であり、プラセボ群(52.2%)に対して有意に延長を認めた

2月8日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にてタキサン系化学療法後の転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)患者に対する維持療法としてのアンドロゲン受容体阻害薬であるダロルタミド(ODM-201)の有効性、安全性を比較検証した第2相SAKK 08/16試験(NCT02933801)の結果がEOC—Istituto Oncologico della Svizzera ItalianaのSilke Gillessen氏らにより公表された。

本試験は、アンドロゲン受容体(AR)標的薬であるエンザルタミド、アビラテロンによる治療後、タキサン系の化学療法を実施し、病勢進行しなかった転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)患者(N=92人)に対する維持療法として1日2回ダロルタミド(ODM-201)600mgを投与する群、もしくはプラセボを投与する群に無作為に振り分け、12週後の放射線検査による無増悪生存率(radiographic progression-free survival;治療開始より病勢進行またはいかなる理由による死亡のイベントとして定義)、副次評価項目としてPSA再発率(Time-to-PSA-progression)、無イベント生存期間(EFS)、全生存期間OS)などを比較検証した多施設共同ランダム化二重盲検下の第2相試験である。

本試験が開始された背景として、転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)患者に対するファーストライン治療としてのドセタキセル療法後の維持療法としての非ステロイド性選択的男性ホルモン合成酵素阻害薬であるOrteronel単剤療法は、プラセボ療法に比べて無イベント生存期間(EFS)を統計学的有意に改善することが第3相のSAKK 08/11試験(NCT01707966)で示されている。しかしながら、SAKK 08/11試験は、Orteronelの開発中止となり、早期に試験が終了となった。(参考:Prostate. 2016 Dec;76(16):1519-1527. doi: 10.1002/pros.23236. Epub 2016 Jul 25.

そのため、本試験は新規ホルモン療法歴のある転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)患者に対する維持療法としてのアンドロゲン受容体阻害薬ダロルタミド(ODM-201)の有用性を検証する目的で開始された。

本試験の結果、12週無増悪生存率(rPFS)は介入群であるダロルタミド(ODM-201)群の64.7%に対してプラセボ群で52.2%と、ダロルタミド(ODM-201)群で12週無増悪生存期間(rPFS)を統計学的有意に改善した(P=0.127)。

無増悪生存期間(rPFS)中央値はダロルタミド(ODM-201)群の5.5ヶ月に対してプラセボ群で4.5ヶ月を示し、ダロルタミド(ODM-201)群で病勢進行または死亡(rPFS)のリスクを46%改善(HR:0.54、95%信頼区間:0.32-0.91、P=0.017)した。

無イベント生存期間(EFS)中央値はダロルタミド(ODM-201)群の5.4ヶ月に対してプラセボ群で2.9ヶ月(HR:0.46、95%信頼区間:0.29-0.73、P=0.001)、全生存期間(OS)中央値はダロルタミド(ODM-201)群の24ヶ月に対してプラセボ群で21.3ヶ月と、ダロルタミド(ODM-201)群で死亡(OS)のリスクを38%改善(HR:0.62、95%信頼区間:0.3-1.26、P=0.181)した。

一方の安全性として、治療関連有害事象(TRAE)発症率は両群間で同等であった。

以上のSAKK 08/16試験の結果より、Silke Gillessen氏らは「タキサン系化学療法後の転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)患者に対する維持療法としてのアンドロゲン受容体阻害薬であるダロルタミド(ODM-201)は12週無増悪生存率(rPFS)の改善と良好な忍容性をもたらした。より大規模な試験においても有効性が示されれば、転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)の新しい戦略になる可能性があります」と結論を述べている。

Darolutamide Maintenance in Patients With Metastatic Castration-Resistant Prostate Cancer With Nonprogressive Disease After Taxane Treatment (SAKK 08/16)(J Clin Oncol. 2023 Feb 8;JCO2201726.doi:10.1200/JCO.22.01726.)

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