2022年12月10日~13日、米国ルイジアナ州・ニューオーリンズで開催されたASH 2022 Annual Meetingにて治療歴のある再発/難治性慢性リンパ性白血病(CLL)/小リンパ球性リンパ腫(SLL)/B細胞性悪性腫瘍患者に対するブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)を標的にしたタンパク質分解誘導薬であるNX-2127単剤療法の有効性、安全性を検証した第1相試験(NCT04830137)の結果がMemorial Sloan Kettering Cancer CenterのAnthony R. Mato氏らにより公表された。
本試験は、治療歴のある再発難治性慢性リンパ性白血病(CLL)/小リンパ球性リンパ腫(SLL)/B細胞性悪性腫瘍患者(N=28人)に対して28日を1サイクルとして1日1回NX-2127 100mg(治療開始用量)単剤を投与し、評価項目として安全性、忍容性を検証した米国ベースのオープンラベル多施設共同の初の臨床試験である。
本試験が開始された背景として、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)はB細胞性悪性腫瘍における重要なシグナル経路である。そのため、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬は慢性リンパ性白血病(CLL)をはじめB細胞性悪性腫瘍に対して有効性が高いことが示されている。しかしながら、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)は遺伝子変異により、共有結合型(cBTKi)、非共有結合型(ncBTKi)ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬に対して抵抗性、耐性を示す場合がある。以上の背景より、慢性リンパ性白血病(CLL)/小リンパ球性リンパ腫(SLL)をはじめB細胞性悪性腫瘍に対しては新規の治療薬の開発が必要とされており、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)を標的にしたタンパク質分解誘導薬であるNX-2127は本疾患に対して有用性を示す可能性がある。以上の背景より本試験が開始された。
本試験に登録された慢性リンパ性白血病(CLL)/小リンパ球性リンパ腫(SLL)/B細胞性悪性腫瘍患者28人の患者背景は下記の通りである。性別は男性が64.3%、年齡中央値は76歳(61~92歳)。慢性リンパ性白血病(CLL)/小リンパ球性リンパ腫(SLL)患者は17人。NX-2127の用量は100mg、200mg、300mg。以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。
本試験の結果、用量制限毒性(DLT)は1日1回NX-2127 300mg群で認知機能障害が1人確認された。全グレードの有害事象(AE)発症率は96%、グレード3以上の有害事象(AE)発症率は58%、グレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)発症率は46%であった。多くの患者で確認された全グレードの有害事象(AE)は疲労が62%、好中球数減少が39%、貧血が27%、挫創が27%、高血圧が27%であり、多くの患者で確認されたグレード3以上の有害事象(AE)は好中球数減少が35%、貧血が15%であった。
一方の有効性として、奏効評価可能であった12人の患者における客観的奏効率(ORR)は33%を示し、治療開始2ヶ月時点では16.7%、4ヶ月時点では42.9%、6ヶ月時点では50%であった。なお、臨床的に重要な結果としては、奏効はBTK阻害薬、BCL2阻害薬の2剤に対して抵抗性を示した患者、非共有結合型(ncBTKi)ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬に病勢進行を示した患者で確認された点である。
以上の第1相試験の結果よりAnthony R. Mato氏らは「治療歴のある再発難治性慢性リンパ性白血病(CLL)/小リンパ球性リンパ腫(SLL)/B細胞性悪性腫瘍患者に対するブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)を標的にしたタンパク質分解誘導薬NX-2127単剤療法は、共有結合型(cBTKi)、非共有結合型(ncBTKi)ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬、BCL2阻害薬の2剤、3剤に対して抵抗性の示した患者に対しても臨床的ベネフィットがある可能性が示唆されました」と結論を述べている。
NX-2127-001, a First-in-Human Trial of NX-2127, a Bruton’s Tyrosine Kinase-Targeted Protein Degrader, in Patients with Relapsed or Refractory Chronic Lymphocytic Leukemia and B-Cell Malignancies(64th ASH Annual Meeting & Exposition,Abstract 965)