5月28日、厚生労働省薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会は、審議項目として5製品の審議を行った。5製品すべてが抗がん剤関連。また、報告事項※として2製品を報告し、ともに抗腫瘍効果を増強するために用いられる薬剤であった。
※報告事項:医薬品医療機器総合機構(PMDA)の審査段階において、承認して差し支えないとされ、部会では審議せず報告のみでいいと判断されたもの。
審議品目
タズベリク錠200mg(タゼメトスタット臭化水素酸塩)
効能・効果:再発または難治性のEZH2遺伝子変異陽性濾胞性リンパ腫(標準的な治療が困難な場合に限る)
タズベリクはEZH2を標的とするファーストインクラスの経口低分子阻害剤。EZH2とS-アデノシルメチオニン(メチル基供与体)を阻害することで、ヒストンタンパクのメチル化を抑制し、がんの遺伝子発現を抑制する。なお、EZH2遺伝子変異陽性を判定するためにコンパニオン診断薬が用いられる。
ルタテラ静注(ルテチウムオキソドトレオチド)
効能・効果:ソマトスタチン受容体陽性の神経内分泌腫瘍
ルタテラはペプチド受容体放射性核種療法(PRRT)という放射性リガンド療法に用いられる。ソマトスタチン類似物質に放射性同位元素のルテチウム177を標識した治療用放射性医薬品。
ライザケア輸液(L-リシン塩酸塩、L-アルギニン塩酸塩)
効能・効果:ルテチウムオキソドトレオチドによる腎被曝の低減
ライザケアはルタテラと併用して使用し、ルタテラによる腎臓の被爆を低減する。
ユニツキシン点滴静注17.5mg/5mL(ジヌツキシマブ(遺伝子組換え))
効能・効果:大量化学療法後の神経芽腫
ユニツキシンは神経外胚葉性腫瘍に多く発現する抗原GD2に対し特異的に反応し、抗体依存性細胞傷害作用(ADCC)と補体依存性細胞傷害作用(CDC)を介して神経芽腫細胞の溶解を惹起する遺伝子組換えキメラモノクローナル抗体。同日の報告品目であるG-CSF製剤フィルグラスチムと遺伝子組換え型インターロイキン-2製剤テセロイキンと併用でする。
ハイヤスタ錠10mg(ツシジノスタット、Huya Japan)
効能・効果:再発又は難治性の成人T細胞白血病リンパ腫
ハイヤスタはベンズアミド系ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤。エピジェネティックな作用を持つイムノモジュレーターであり、HDAC1/2/3/10を阻害することで腫瘍細胞内のアセチル化されたヒストンの集積を促す。これにより細胞周期の停止を誘導し、多くのがん遺伝子の発現を抑制する。
報告品目
グラン注射液75、同注射液150、同注射液M300、同シリンジ75、同シリンジ150、同M300(フィルグラスチム(遺伝子組換え))
効能・効果:神経芽腫に対するジヌツキシマブ(遺伝子組換え)の抗腫瘍効果の増強
グランは遺伝子組換えキメラモノクローナル抗体・ユニツキシン点滴静注とテセロイキンと併用する。顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)受容体と結合して好中球を増加させ骨髄からの放出を促進し、血液中や組織内の好中球の働きを高める。
イムネース注35(テセロイキン(遺伝子組換え))
効能・効果:神経芽腫に対するジヌツキシマブ(遺伝子組換え)の抗腫瘍効果の増強
イムネースはヒト脾臓由来のリンパ球から得たmRNAを用いて、遺伝子組換え技術により大腸菌内で産生されたヒト・インターロイキン-2製剤。ヒト・インターロイキン-2とはTリンパ球から産生される糖タンパク質。ユニツキシン点滴静注とフィルグラスチムと併用する。
参照元:厚生労働省 薬事・食品衛生審議会(薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会)