2月24日、メルクバイオファーマ株式会社は、抗PD-L1抗体薬であるバベンチオ(一般名:アベルマブ(遺伝子組換え)、以下バベンチオ)について「根治切除不能な尿路上皮がんにおける化学療法後の維持療法」の適応追加の承認を取得したと発表した。なお、バベンチオはファイザー株式会社と共同開発中の免疫チェックポイント阻害薬である。
尿路上皮がんは膀胱がんの約90%を占めており、転移性尿路上皮がんの5年生存率は5%程度※と予後不良。進行性尿路上皮がんのファーストライン治療は複数薬剤による化学療法であり、奏効率は高いが、長期持続および完全奏功の報告は少なく、治療開始から9ヶ月以内に進行することが多い。
※ SEER. Cancer Stat Facts: Bladder Cancer. https://seer.cancer.gov/statfacts/html/urinb.html.Accessed January 2020 【参考リンク】 ・日本国内の膀胱がんの生存率(出典:日本のがん診療連携拠点病院等院内がん登録生存率集計)今回の承認は第3相臨床試験であるJAVELIN Bladder 100試験(NCT02603432の結果に基づくもの。同試験は、ファーストライン治療としての白金製剤を含む化学療法終了後に疾患進行が認められなかった局所進行/転移性の尿路上皮がん患者(N=700人)を対象に、維持療法として4週間を1サイクルとしてバベンチオを2週間投与+ベストサポーティブケア(BSC)を行う群とBSCのみを行う群に割り付け比較検討した。その結果、主要評価項目である全生存期間(OS)は全患者およびPD-L1陽性患者いずれにおいても統計学的有意に延長が示された。また、安全性においてはこれまでのJAVELIN試験で認められていたものと一貫していた。
メルクバイオファーマ社の取締役研究開発本部長である松下信利氏は「本日のバベンチオの承認により、局所進行または転移性尿路上皮がんの一次治療における標準治療のパラダイムシフトに貢献する機会が得られたことを大変うれしく思います。この新しい治療概念が、標準的な治療となることに期待を寄せ、これからも治療に従事する専門家の皆さま方により一層の協力をして、患者さんのベネフィットを向上する機会創出に尽力してまいります」と述べている。
また、バベンチオにおいて戦略的提携を締結しているファイザー社の社長石橋太郎氏は「進行すると治療が難しい尿路上皮がんは、長年にわたりOSを改善する治療法が求められていました。本日、尿路上皮がんにおける維持療法として、バベンチオの適応拡大が承認されたことを嬉しく思います。治験にご参加いただいた患者さまとご家族の皆さまに心より感謝申し上げます。今後も革新的な薬剤の開発を進め、アンメットニーズを満たすことができるよう尽力してまいります」としている。
バベンチオとは PD-L1と呼ばれるタンパク質を特異的に阻害するヒト型抗体。バベンチオがPD-L1に結合することでT細胞を介した免疫反応の抑制が解除され、抗腫瘍作用の活性化が起こる。動物モデルにおいては、自然および獲得性の免疫のどちらにおいても活性化が認められている。海外では2020年6月に米国で局所進行または転移性の尿路上皮がんに対する維持療法として適応拡大が承認された。
参照元:メルクバイオファーマ株式会社 プレスリリース