2021年1月14日、医学誌『JAMA Oncology』にて切除可能膵管腺がん(PDA)患者に対する術前化学療法としてのmFOLFIRINOX(オキサリプラチン+イリノテカン+フルオロウラシル)療法、ゲムシタビン+ナブパクリタキセル療法の有効性、安全性を検証した第2相試験(NCT02562716)の結果がUniversity of CincinnatiのDavendra P. S. Sohal氏らにより公表された。
本試験は、切除可能膵管腺がん(PDA)患者(N=102人)に対する術前化学療法としてmFOLFIRINOX療法を投与する群(N=55人)、またはゲムシタビン+ナブパクリタキセル療法を投与する群(N=47人)に無作為に振り分け、主要評価項目として2年全生存率(OS:事前設定された閾値は40%)、副次評価項目として無病生存期間(DFS)、客観的奏効率(ORR)、安全性などを検証した第2相試験である。
本試験が開始された背景として、治癒的切除療法後の切除可能膵管腺がん(PDA)患者における治療転帰は依然として不良である。術前化学療法をはじめとする早期の治療介入により、切除可能膵管腺がん(PDA)患者の予後が改善するどうかを検証する目的で本試験が開始された。
本試験に登録された102人の患者背景は下記の通りである。年齢中央値はmFOLFIRINOX療法群で66歳(44~76歳)に対してゲムシタビン+ナブパクリタキセル療法群で64歳(46~76歳)。性別はmFOLFIRINOX療法群で男性65%に対してゲムシタビン+ナブパクリタキセル療法群で男性51%。Performance Scoreはゲムシタビン+ナブパクリタキセル療法群でステータス0が62%に対してゲムシタビン+ナブパクリタキセル療法群でステータス0が66%。完全切除を実施した患者割合はmFOLFIRINOX療法群で73%に対してゲムシタビン+ナブパクリタキセル療法群で男性70%。
以上の背景を有する患者における本試験の結果は下記の通りである。主要評価項目である2年全生存率(OS)はmFOLFIRINOX療法群47%(95%信頼区間:31-61%)、ゲムシタビン+ナブパクリタキセル療法群48%(95%信頼区間:31-63%)をそれぞれ示した。また、全生存期間(OS)中央値はmFOLFIRINOX療法群23.2ヶ月(95%信頼区間:17.6-45.9ヶ月)、ゲムシタビン+ナブパクリタキセル療法群23.6ヶ月(95%信頼区間:17.8-31.7ヶ月)をそれぞれ示した。
副次評価項目である治癒切除後の無病生存期間(DFS)中央値はmFOLFIRINOX療法群10.9ヶ月、ゲムシタビン+ナブパクリタキセル療法群14.2ヶ月をそれぞれ示した。
以上の第2相試験の結果よりDavendra P. S. Sohal氏らは「切除可能膵管腺がん(PDA)患者に対する術前化学療法としてのmFOLFIRINOX療法、ゲムシタビン+ナブパクリタキセル療法の2年全生存率(OS)はmFOLFIRINOX療法群47%、ゲムシタビン+ナブパクリタキセル療法48%を示し、過去の治療成績に比べて顕著な改善効果を示しませんでした」と結論を述べている。
Efficacy of Perioperative Chemotherapy for Resectable Pancreatic Adenocarcinoma:A Phase 2 Randomized Clinical Trial(JAMA Oncol. 2021 Jan 21. doi: 10.1001/jamaoncol.2020.7328.)