・ナザルチニブ(EGF816)単剤療法の有効性・安全性を検証
・忍容性は良好だったが、患者によっては減量などの用量調整が必要か
2020年1月15日、医学誌『The Lancet Respiratory Medicine』にてEGFR陽性の進行性非小細胞肺がん患者に対する第3世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬であるNazartinib(EGF816)単剤療法の有効性、安全性を検証した第1相試験(NCT02108964)の結果がNational Cancer Centre SingaporeのDaniel S-W Tan氏らにより公表された。
本試験は、EGFR陽性の進行性非小細胞肺がん患者に対して1日1回Nazartinib(EGF816)75mg~350mg単剤療法を投与し、主要評価として用量制限毒性(DLT)、客観的奏効率(ORR)、副次評価項目として無増悪生存期間(PFS)などを検証した第1相試験である。
本試験が開始された背景として、EGFR陽性の進行性非小細胞肺がん患者の約50~60%はEGFRチロシンキナーゼ阻害薬に対して耐性を示し、その耐性はThr790Met変異が原因として考えられている。以上の背景より、Thr790Met変異を選択的に阻害する作用機序を有する第3世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬Nazartinib(EGF816)の有用性が本試験にて検証された。
本試験に登録された180人の患者背景は下記の通りである。年齢中央値は60歳(52‐69歳)。性別は男性36%、女性64%。ECOG Performance Statusはスコア1が64%。Nazartinib(EGF816)の用量レベルは75mg(N=17)、100mg(N=38人)、150mg(N=73人)、200mg(N=8人)、225mg(N=28人)、300mg(N=5人)、350mg(N=11人)。
以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。主要評価項目である用量制限毒性(DLT)の発現は1日1回Nazartinib(EGF816)150mg、225mg、350mg用量群で6人の患者で確認された。以上の結果より、1日1回Nazartinib(EGF816)150mgは最大耐量(MTD)を満たさないものの、第2相試験推奨用量として決定された。
最も多くの患者で確認された全グレードの有害事象(AE)は黄斑丘疹発疹40%、瘡様皮膚炎12%、下痢45%、掻痒症39%、倦怠感30%、口内炎30%の患者で確認されるも、ほとんどがグレード1~2であった。また、グレード3~4の有害事象(AE)は55%の患者で確認され、その内訳は皮膚障害15%、肺炎7%、貧血6%、呼吸困難5%であった。
以上の第1相試験の結果よりDaniel S-W Tan氏らは以下のように結論を述べている。”第3世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬であるNazartinib(EGF816)単剤療法は忍容性は良好でした。また、Nazartinib(EGF816)を原因とする低グレードの黄斑丘疹発疹をはじめとした皮膚障害が発症しますので、患者さんによっては減量などの用量調整が必要になるでしょう。”
Safety and efficacy of nazartinib (EGF816) in adults with EGFR-mutant non-small-cell lung carcinoma: a multicentre, open-label, phase 1 study(Lancet Respir Med. 2020 Jan 15. pii: S2213-2600(19)30267-X. doi: 10.1016/S2213-2600(19)30267-X.)