院内がん登録 小児・AYA世代がん~小児がん中央機関による初めての集計データ~がん診療連携拠点病院等院内がん登録2016-2017年小児AYA集計報告書


  • [公開日]2019.10.18
  • [最終更新日]2019.10.18
この記事の3つのポイント
・小児がん中央機関の協働により、小児・AYA世代に該当する患者について院内がん登録を詳細に集計した報告
・AYA世代(15~39歳)のがんは、年齢によりがんの種類の分布が異なり、20歳以上のがんは女性に多く、20~39歳のがんでは約80%を女性が占めている
・小児がん診療は、全国15か所の小児がん拠点病院だけでなく、がん診療連携拠点病院等でも行われている

2019年10月18日、厚生労働省より小児がん中央機関として指定されている、国立がん研究センター(所在地:東京都中央区築地)と国立成育医療研究センター(所在地:東京都世田谷区大蔵)は、全国のがん診療連携拠点病院等をはじめとするがん専門施設において実施されている2016年および2017年の院内がん登録のデータを集計し、小児がんおよび若年成人(Adolescent and Young Adult, AYA世代)に特化した報告書をまとめた。2つのナショナルセンターが協働で集計する体制は初めて構築されたものであり、今回はその最初の報告となる。

小児・AYA世代のがん分類の集計結果

小児がん(20歳未満)に関しては、「国際小児がん分類(International Classification of Childhood Cancer)」を用いた集計は2015年分までも実施されていたが、今回AYA世代についても焦点を当てて集計を行なった。

AYA世代に関しては、これまでは未成年と成人という区切りのために20歳を区切りとして分類したが、今回初めて0~14歳を小児、15~39歳をAYA世代として区別して、都道府県別、施設別に集計。なお、この世代のがんは数が少ないため直近で登録済みの2016年と2017年の2年分を合算しての公表である。

集計の結果、2016年、2017年の2年間に、自施設で初回治療を開始している小児がんは4,534例(2016年2,136例、2017年2,398例)、AYA世代のがんは5万8,837例(2016年2万9,544例、2017年2万9,293例)であった。
(注:2017年集計では任意参加病院が集計対象に追加されているため、2016年と2017年の集計を単純に比較できない)
このうち卵巣境界悪性腫瘍を除く小児がん4,513例、AYA世代のがん5万7,788例を集計している。

また、これらについてSEER(Surveillance, Epidemiology, and End Results Program)によって提唱された「国際小児がん分類」と「AYA世代がん分類(AYA Site Recode/WHO 2008 Definition)」に従って集計した(図1、図2)。

AYA世代のがんの特徴

AYA世代のがんは、25歳を過ぎると飛躍的に増加し、30~39歳で発症しているものが40歳未満のがん全体の約70%、AYA世代のがんに限ると約75%を占めていた(図3)。

また、20歳以後のがんの症例の約80%が女性で、年齢に従って増加していくことが分かる(図4)。

AYA世代では、「甲状腺がん、その他の頭頸部がん、気管・気管支・肺のがん、乳がん、泌尿生殖器がん、消化管がん、その他及び部位不明のがん」に該当する「がん腫」と、SEERの「AYA世代がん分類」には該当する分類がない「変換不能例」が約80%を占めていた。

「変換不能例」のうち上皮内がん等について「局在」と「組織型」をもとに再分類を行った結果、変換不能例の97%が再分類後に「がん腫」に該当し、「がん腫」のうち子宮頸部上皮内がんが最多で、次に乳房上皮内がんの順だった。

したがって、25歳以降のがんの急激な増加は、女性における子宮頸がんと乳がんの増加によるものと考えられる。すなわち、AYA世代のがんは、25歳までとそれ以降で、病気の種類が大きく異なっているため、AYA世代のがん対策を考える際には、このような性別、年齢によるがんの種類の違いも考慮するべきと考えられる。

小児がんの診療実態

AYA世代のがんには症例数も多く成人の患者分布に近いものがある一方、小児がんは症例数全体も少ないうえに種類も希少な種類のがんが多く、診療の集約化が必要との指摘もなされている。

がん診療連携拠点病院等(小児がん拠点病院を除く、地域がん診療病院含む)の約49%および各都道府県から推薦されて院内がん登録全国集計に参加している病院(以降、都道府県推薦病院)の約84%では、小児がんの初回治療実績がなかった。

また、がん診療連携拠点病院等の約25%、都道府県推薦病院の約15%では、調査対象の2年間に1−3例の小児がん患者の初回治療を実施していた(図5)。

2年間で小児がん1-3例の初回治療を実施した施設数は146施設、初回治療を受けた症例数は202症例。初回治療が行われた疾患では、脳腫瘍が約40%と最多、次いで胚細胞腫瘍が多いことが分かった(図6)。

「がん診療連携拠点病院等院内がん登録2016-2017年小児AYA集計報告書」調査・集計の概要

対象期間:2016年1月~2017年12月まで
対象病院:がん診療連携拠点病院等452施設(うち、小児がん拠点病院15施設)
都道府県推薦病院(各都道府県から推薦された病院):337施設
任意参加病院(院内がん登録全国集計に任意で参加を希望する病院2017年診断例から):55施設
合計:844施設
集計:上記対象期間中に対象病院で初回治療を開始したがん症例のうち40歳未満(小児およびAYA世代に該当)のがんを対象に、性、年齢、がんの種類、病院種別に集計

院内がん登録について
「院内がん登録の実施に係る指針」(平成27年12月15日厚生労働省公布)における「病院において、がん医療の状況を適確に把握するため、当該病院におけるがん患者について、全国がん登録情報よりも詳細な治療の状況を含む情報を収集し、院内がん登録データベースに記録し、および保存すること」に基づき実施されている。

さらに、そのデータベースを活用することで、専門的ながん医療を提供する医療機関の実態把握や、がん患者及びその家族等の医療機関の選択等に資することとされている。

参照元:国立がん研究センタープレスリリース

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