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未治療のEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん患者に対するタルセバ+サイラムザ併用療法、無増悪生存期間を統計学的有意に延長

[公開日] 2019.06.14[最終更新日] 2019.06.14

この記事の3つのポイント ・未治療の遠隔転移を有するEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん患者が対象の第3相試験
・タルセバ+サイラムザ併用療法の有効性・安全性を比較検証
・タルセバ+プラセボ群に対して、病勢進行または死亡のリスクを40.9%統計学的有意に改善

2019年5月31日から6月4日までアメリカ合衆国・イリノイ州・シカゴで開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO 2019)にて、未治療の遠隔転移を有するEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん患者に対してEGFRチロシンキナーゼ阻害薬であるエルロチニブ(商品名タルセバ;以下タルセバ)+ヒトVEGFR-2に対するIgG1モノクローナル抗体であるラムシルマブ(商品名サイラムザ;以下サイラムザ)併用療法の有効性、安全性を比較検証した第3相のRELAY試験(NCT02411448)の結果が近畿大学医学部内科学腫瘍内科の中川和彦氏らにより公表された。

RELAY試験とは、未治療の遠隔転移を有するEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん患者(N=449人)に対して1日1回タルセバ150mg+2週を1サイクルとしてサイラムザ10mg/kg併用療法を投与する群(N=224人)、または1日1回タルセバ150mg+プラセボ併用療法を投与する群(N=225人)に1対1の割合で振り分け、主要評価項目として無増悪生存期間(PFS)、その他評価項目として客観的奏効率(ORR)、全生存期間(OS)、安全性などを比較検証した多施設共同、二重盲検ランダム化比較の第3相試験である。

本試験が実施された背景として、EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がんはEGFRおよびVEGFR経路を二重に阻害することでEGFR経路のみの阻害よりも抗腫瘍効果が増強される可能性が示唆されている。以上の背景より、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬タルセバ、ヒトVEGFR-2に対するIgG1モノクローナル抗体サイラムザの併用療法の有用性を評価する目的で本試験が実施された。

本試験に登録された患者背景は下記の通りである。

年齢中央値
タルセバ+サイラムザ群=65歳(27-86歳)
タルセバ+プラセボ群=64歳(23-89歳)

性別
タルセバ+サイラムザ群=女性 63%
タルセバ+プラセボ群=女性 63%

人種
タルセバ+サイラムザ群=アジア人 77%
タルセバ+プラセボ群=アジア人 77%

喫煙歴
タルセバ+サイラムザ群=なし 60%
タルセバ+プラセボ群=なし 62%

ECOG Performance Status
タルセバ+サイラムザ群=スコア0 52%
タルセバ+プラセボ群=スコア0 53%

EGFR遺伝子変異
タルセバ+サイラムザ群=Exon 19 deletion 55%、Exon 21 mutation 45%
タルセバ+プラセボ群=Exon 19 deletion 54%、Exon 21 mutation 46%

なお、両群間で患者背景に大きな偏りはなかった。

以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値はタルセバ+サイラムザ群19.4ヶ月(95%信頼区間:15.4-21.6ヶ月)に対してタルセバ+プラセボ群12.4ヶ月(95%信頼区間:11.0-13.5ヶ月)、タルセバ+サイラムザ群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを40.9%統計学的有意に改善した(HR:0.591,95%信頼区間:0.461-0.760,P<0.0001)。

また、Exon 19 deletion患者群における無増悪生存期間(PFS)中央値はタルセバ+サイラムザ群19.6ヶ月(95%信頼区間:15.1-22.2ヶ月)に対してタルセバ+プラセボ群12.5ヶ月(95%信頼区間:11.1-15.3ヶ月)、タルセバ+サイラムザ群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを30.9%改善した(HR:0.651,95%信頼区間:0.469-0.903)。

Exon 21 mutation患者群における無増悪生存期間(PFS)中央値はタルセバ+サイラムザ群19.4ヶ月(95%信頼区間:14.1-21.9ヶ月)に対してタルセバ+プラセボ群11.2ヶ月(95%信頼区間:9.6-13.8ヶ月)、タルセバ+サイラムザ群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを38.2%改善した(HR:0.618,95%信頼区間:0.437-0.874)。

一方の安全性として、多くの患者で確認された全グレードの治療関連有害事象(TRAE)は下記の通りである。出血はタルセバ+サイラムザ群55%に対してタルセバ+プラセボ群26%、高血圧はタルセバ+サイラムザ群45%に対してタルセバ+プラセボ群12%、蛋白尿はタルセバ+サイラムザ群34%に対してタルセバ+プラセボ群8%を示した。

以上のRELAY試験の結果よりKazuhiko Nakagawa氏らは以下のように結論を述べている。”未治療の遠隔転移を有するEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん患者に対するEGFRチロシンキナーゼ阻害薬タルセバ+ヒトVEGFR-2に対するIgG1モノクローナル抗体サイラムザ併用療法は、無増悪生存期間(PFS)を統計学的有意に延長し、本患者の新たな治療選択肢になり得る可能性が示唆されました。”

RELAY: A multinational, double-blind, randomized Phase 3 study of erlotinib (ERL) in combination with ramucirumab (RAM) or placebo (PL) in previously untreated patients with epidermal growth factor receptor mutation-positive (EGFRm) metastatic non-small cell lung cancer (NSCLC).(ASCO 2019, Abstract No.9000)

ニュース 肺がん NCT02411448

山田創

製薬会社、オンコロジーメディアの運営を経て、フリーのメディカルライターへ転身。Twitterアカウント「@So_Yamada_」

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