造血幹細胞移植非適応の未治療多発性骨髄腫患者に対するダラザレックス+レブラミド+デキサメタゾン併用療法、無増悪生存期間を統計学有意に改善するThe New England Journal of Medicineより


  • [公開日]2019.06.06
  • [最終更新日]2019.06.05
この記事の3つのポイント
造血幹細胞移植非適応の未治療多発性骨髄腫患者が対象の第3相試験
ダラザレックス+レブラミド+デキサメタゾン併用療法有効性安全性をコントロール群と比較検証
・ダラザレックス群で病勢進行または死亡のリスクを44%統計学的有意に減少

2019年5月30日、医学誌『The New England Journal of Medicine』にて造血幹細胞移植非適応の未治療多発性骨髄腫患者に対する抗CD38モノクローナル抗体薬であるダラツムマブ(商品名ダラザレックス;ダラザレックス)+免疫調節薬であるレナリドミド(商品名レブラミド;以下レブラミド)+デキサメタゾン併用療法の有効性、安全性を比較検証した第3相のMAIA試験(NCT02252172)の結果がLille. University HospitalのThierry Facon氏らにより公表された。

本試験は、造血幹細胞移植非適応の未治療多発性骨髄腫患者(N=737人)に対してダラザレックス16mg/kg(週1回を8週間、その後2週に1回を16週間、その後4週に1回)+28日を1サイクルとして1~21日目に1回レブラミド25mg+1、8、15、22日目にデキサメタゾン40mg併用療法を投与する群(N=368人)、またはレブラミド+デキサメタゾン併用療法を投与する群(N=369人)に無作為に振り分け、主要評価項目として無増悪生存期間PFS)、副次評価項目として完全奏効率(CR)、安全性、客観的奏効率(ORR)などを比較検証した第3相試験である。

本試験が実施された背景として、未治療多発性骨髄腫患者に対する標準治療としてレブラミド+デキサメタゾン併用療法は無増悪生存期間(PFS)を統計学有意に改善することが示されている。また、再発難治性多発性骨髄腫に対するダラザレックス+レブラミド+デキサメタゾン併用療法は、レブラミド+デキサメタゾン併用療法に比べて無増悪生存期間(PFS)を統計学有意に改善することが示されている。以上の背景より、本試験が実施された。

本試験に登録された患者背景は下記の通りである。

年齢中央値
ダラザレックス群=73.0歳(50-90歳)
コントロール群=74.0歳(45-89歳)

ECOG Performance Status
ダラザレックス群=スコア0 34.5%、スコア1 48.4%、スコア2 17.1%
コントロール群=スコア0 33.3%、スコア1 50.7%、スコア2 16.0%

ISSステージ分類
ダラザレックス群=ステージI 26.6%、ステージII 44.3%、ステージIII 29.1%
コントロール群=ステージI 27.9%、ステージII 42.3%、ステージIII 29.8%

遺伝子異常のリスク
ダラザレックス群=標準リスク85.0%、ハイリスク15.0%
コントロール群=標準リスク86.4%、ハイリスク13.6%

以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値はダラザレックス群で未到達に対してコントロール群で31.9ヶ月(95%信頼区間:28.9ヶ月-未到達)、ダラザレックス群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを44%統計学的有意に減少した(HR:0.56,95%信頼区間:0.43-0.73,P<0.001)。また、30ヶ月無増悪生存率(PFS)はダラザレックス群70.6%(95%信頼区間:65.0%-75.4%)に対してコントロール群55.6%(95%信頼区間:49.5%-61.3%)を示した。

副次評価項目である完全奏効率(CR)以上の奏効率はダラザレックス群47.6%に対してコントロール群24.9%を示し、ダラザレックス群で統計学的有意に高率であった。また、最良奏効以上(VGPR)の奏効率はダラザレックス群79.3%に対してコントロール群53.1%を示し、ダラザレックス群で統計学的有意に高率であった。なお、客観的奏効率(ORR)はダラザレックス群92.9%に対してコントロール群81.3%を示した。

一方の安全性として、全グレードの血液関連有害事象(AE)発症率はダラザレックス群で好中球減少症56.9%、貧血34.6%、白血球減少症18.7%、リンパ球減少症18.1%に対してコントロール群でで好中球減少症42.2%、貧血37.8%、白血球減少症9.3%、リンパ球減少症12.3%を示した。

また、全グレードの非血液関連有害事象(AE)発症率はダラザレックス群で感染症86.3%、下痢56.9%、便秘40.9%、疲労40.4%に対してコントロール群で感染症73.4%、下痢46.0%、便秘35.6%、疲労28.5%を示した。なお、二次癌発症率はダラザレックス群で8.8%に対してコントロール群で7.1%を示した。

以上のMAIA試験の結果よりThierry Facon氏らは以下のように結論を述べている。”造血幹細胞移植非適応の未治療多発性骨髄腫患者に対するダラザレックス+レブラミド+デキサメタゾン併用療法は、無増悪生存期間(PFS)を統計学有意に改善しました。なお、安全性としては好中球減少症、感染症はダラザレックス群で多くの患者で確認されました。”

Daratumumab plus Lenalidomide and Dexamethasone for Untreated Myeloma(N Engl J Med. 2019 May 30;380(22):2104-2115. doi: 10.1056/NEJMoa1817249.)

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