局所進行性頭頸部扁平上皮がんに対する放射線療法+アービタックス、放射線療法+化学療法に比べて優越性を認めずJournal of Clinical Oncologyより


  • [公開日]2020.10.29
  • [最終更新日]2020.10.29
この記事の3つのポイント
・局所進行性頭頸部扁平上皮がん患者が対象の第3相試験
・放射線療法+アービタックス併用療法の有効性安全性を比較検証
・3年全生存率は放射線療法+シスプラチン群88%に対して放射線療法+アービタックス群78%であり、死亡リスクが63%増加した

2020年10月14日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にて局所進行性頭頸部扁平上皮がん患者に対する放射線療法+化学療法、放射線療法+抗EGFR抗体薬であるアービタックス(一般名:セツキシマブ、以下アービタックス)併用療法の有効性、安全性を比較検証した第3相のARTSCANIII試験(NCT01969877)の結果がSkåne University HospitalのMaria Gebre-Medhin氏らにより公表された。

ARTSCANIII試験とは、局所進行性頭頸部扁平上皮がん患者に対して放射線療法1週間前にアービタックス400mg/m2単剤を1サイクル投与し、その後放射線療法+1週を1サイクルとしてアービタックス250mg/m2併用療法を投与する群、または放射線療法+1週を1サイクルとしてシスプラチン40mg/m2併用療法を投与する群に1対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として全生存期間OS)、副次評価項目として安全性などを比較検証した多施設共同ランダム化の第3相試験である。なお、放射線量は68.0Gyまたは73.1Gyに1:1で割り付けた。

局所進行性頭頸部扁平上皮がん患者に対する放射線療法+抗EGFR抗体薬アービタックス併用療法は、放射線療法単独に比べて全生存期間(OS)を改善することが示されている。しかしながら、放射線療法+シスプラチン併用療法に対する放射線療法+アービタックスの優越性は示されていない。以上の背景より、ARTSCANIII試験が開始された。

本試験の結果、主要評価項目である3年全生存率(OS)は放射線療法+シスプラチン併用群88%(95%信頼区間:83%-94%)に対して放射線療法+抗アービタックス併用群78%(95%信頼区間:71%-85%)を示し、放射線療法+アービタックス併用群で3年死亡(OS)のリスクが63%増加(HR:1.63、95%信頼区間:0.93-2.86、P=0.086)した。

副次評価項目である3年局所再発率(locoregional failures)は放射線療法+シスプラチン併用群9%(95%信頼区間:4%-14%)に対して放射線療法+アービタックス併用群23%(95%信頼区間:16%-31%)を示した(P=0.0036)。なお、遠隔再発率(distant failures)は両群間で統計学的有意な差は確認されなかった。

以上のARTSCANIII試験の結果よりMaria Gebre-Medhin氏らは「局所進行性頭頸部扁平上皮がん患者に対する放射線療法+アービタックス併用療法は、放射線療法+化学療法に比べて抗腫瘍効果が良好とは認められませんでした」と結論を述べている。

ARTSCAN III: A Randomized Phase III Study Comparing Chemoradiotherapy With Cisplatin Versus Cetuximab in Patients With Locoregionally Advanced Head and Neck Squamous Cell Cancer(J Clin Oncol. 2020 Oct 14;JCO2002072. doi: 10.1200/JCO.20.02072.)

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