9月10日MSD株式会社は、切除不能な進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する直腸・結腸がん(大腸がん)の治療薬として抗PD-1抗体薬キイトルーダ(一般名:ペンブロリズマブ、以下キイトルーダ)の適応拡大の申請を行ったと発表した。
キイトルーダは、PD-1というT細胞に発現する受容体に結合し、腫瘍細胞に発現するそのリガンドであるPD-L1/PD-L2との結合を阻害する抗体薬である。それによりT細胞に生じたPD-1経路を介する抗腫瘍活性の抑制を解除する。
結腸・直腸がんは、日本では年間約15万3,000人が結腸・直腸がんと診断され、年間約5万人が死亡していると推定されており、罹患数で第1位、死亡数で第2位である。腫瘍は結腸または直腸に発生し、通常は内側の粘膜にポリープ呼ばれるものから始まり、徐々にがん化する。切除不能の結腸・直腸がんの約5%にMSI-Highが認められ、標準治療である化学療法の有効性が乏しく予後不良の傾向があることから、新規治療薬の開発が求められている。
今回の承認申請は、KEYNOTE-177の結果に基づく。この臨床試験は治療歴のない切除不能な進行・再発のMSI-Highまたはミスマッチ修復機能欠損(dMMR)を有する結腸・直腸がん患者を対象にキイトルーダ単剤療法と標準化学療法を比較検証した多施設共同無作為化非盲検対照薬比較試験である。
キイトルーダは、米国をはじめとする93カ国で承認を取得しており、現在、世界において30種類以上のがん種について1200以上の臨床試験が行われている。
KEYNOTE-177試験について KEYNOTE-177試験(NCT02563002)は、MSI-HighまたはdMMRの進行大腸がん患者(N=308人)を初回治療としてキイトルーダの単剤療法群と標準化学療法群に割り付け比較した第3相試験。主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)で、副次評価項目は奏効率(ORR)とした。 キイトルーダ単剤療法群は3週1サイクルとしてキイトルーダ200mgを投与し、標準化学療法群は、治験担当医師が選択するmFOLFOX6、mFOLFOX6+ベバシズマブ、mFOLFOX6+セツキシマブ、FOLFIRI、FOLFIRI+ベバシズマブ、FOLFIRI+セツキシマブのいずれかを投与した。 (参照元:MSD株式会社 4月9日ニュースリリース)
キイトルーダについて 日本では2017年2月に販売を開始し、これまでに悪性黒色腫、切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌、再発または難治性の古典的ホジキンリンパ腫など8つのがん種で効能・効果について承認を取得している。その中には、がん化学療法後に増悪した進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する固形癌(標準的な治療が困難な場合に限る)も含まれている。また、現在は乳がん、前立腺がん、胃がん、肝細胞がん、小細胞肺がん、子宮頸がん、進行性固形がんなどを対象とした臨床試験が進行中している。
参照元:MSD株式会社 ニュースリリース