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これからのがん研究の優先課題~ASCOが注目するがん研究の最新動向と今後の課題(6)

[公開日] 2020.05.18[最終更新日] 2020.05.18

目次

米臨床腫瘍学会(ASCO)が発表した15th Clinical Cancer Advances 2020では、がん研究の発展、加速に向けて優先すべき課題を明確化し、認識を共有することが重要としている。その上で、臨床上の意思決定の基礎となる知識をさらに深めるために、未だ改善の余地が多い研究分野を取り上げ、次のように指摘した(表記順は優先順位ではない)。

免疫療法に対する反応や抵抗性の予測を確実にする

飛躍的に進歩したがん免疫療法で、治療効果や長期病勢コントロール、耐性化、ならびに有害事象を客観的に予測し得るバイオマーカーは重要な意味を持つ。バイオマーカーは血中、あるいは組織内に存在する膨大な分子から発見しなくてはならない。また、免疫療法に伴う重度の免疫関連毒性は、患者によって時に生命にかかわるもの、長期化するものもある。

昨今急速に普及している生命情報科学やデータサイエンスの手法を十分に活用することで、バイオマーカーの探索や同定を加速できる。また、既存の患者データを資源に予測モデルやアルゴリズムを構築することで、重度有害事象を予測することも可能になっている。

全身療法を最適化することで手術の範囲を限定する

原発がんの摘出術前後に行う薬物療法や放射線療法(ネオアジュバント、アジュバント)は、再発リスクを減らし生存ベネフィットを提供する意味で有効であるが、患者個別のリスクとベネフィットのバランスを見極める必要がある。

再発リスクを科学的に特定するための分析技術と信頼性の高いバイオマーカーの開発が待たれる。術前後の全身療法で有益性が予測される患者集団については、病理学的、遺伝学的、生化学的根拠などを伴って、様々な側面からその特徴を明らかにし、手術の負担軽減と手術の効果向上を両立することが理想である。

小児がんや希少がんを対象とする精密医療と治療アプローチを開発する

遺伝子変異などのゲノム情報の解析技術が進歩していることで、そうしたデータを根拠とする個別化医療など新しい治療法が開発されているが、小児がんや希少がんを対象とするものはまだ少ない。

それらの技術を小児がんや希少がんの治療標的探索にも活用し、有効なゲノム医療、精密医療へと発展させる余地がある。また、すでに成人患者集団で効果が確認されている遺伝子治療などの既知の標的分子について、小児がんや希少がんでも標的妥当性を研究する余地もある。

高齢患者に対するケアを最適化する

一般に、がん患者の多くは65歳以上の高齢者が占めている。だが、高齢患者に対するがんケアにおいては、医療者は単に年齢のみで老化の状態を正確に認識することはできない。実際には、治療や予後、副作用など様々な場面で個別の老化状態を考慮したケアを行う必要がある。

まず、生理学的な老化を定義付けるための実臨床で利用可能な評価手法を標準化する。そして、身体機能や認知機能などへの影響を加味した治療の有効性や安全性の評価に実臨床データを活用し、老化の状態に応じたケアの指針を作成、その有用性を検証すべきである。

臨床試験の参加機会を等しくする仕組みを構築する

臨床試験に参加する被験者は、限られた患者集団に偏る傾向があり、年齢、人種や民族、居住・活動地域、社会的経済的な様々な点で多様性に乏しいのが現状である。その結果として、実施された臨床試験のデータも生物学的、社会的、文化的因子などの多様性を説明するには不十分となり、試験成績の統計学的データも幅広い説得力に欠ける。

参加機会を等しくし、患者背景の多様性を確保するために、試験登録の障壁を理解し、患者登録を促進するための介入方法を開発・検証すること、同時に、これまで試験参加機会がなかった患者と主治医を対象に、臨床試験に関する知識を深める手助けができる仕組みを作ることが必要である。また、参加機会の少ない患者集団における発がん、発症、自然経過、治療経験とその有効性や毒性など、実臨床データを活用して試験登録の効率化を図ることも期待できる。

がんの進行と治療による有害な影響を減らす

がん自体に伴う痛みを取り除き、がん治療に伴う有害事象を最小化するための戦略は極めて重要である。

がん性疼痛では、痛みをコントロールするための選択肢を増やして十分に活用するとともに、患者が自己申告する症状を長期追跡することができる新たなツールを用いるのも有益な方法である。がん治療に付随する末梢神経障害や認知機能障害、心毒性など、生活の質を低下させる慢性的な有害事象に対しては、症状を緩和、管理するための仕組みを作る、毒性リスクに関与する遺伝子異常などを同定する、長期的な毒性を引き起こすメカニズムそのものをさらに深く解明し、その上で毒性を軽減・除去する方法を開発することが望まれる。

発がんと治療成績におよぼす肥満の影響を減らす

肥満ががんの発生や発症、転帰、治療効果、副作用に悪影響をおよぼす因子であることは複数報告されており、現在の米国の肥満傾向が今後20年も継続すれば、肥満は回避し得るがんリスクとして喫煙を上回る可能性があるという。

体重とエネルギー消費のバランスについて、改めてそのメカニズムに関する理解を深め、がん治療に対する反応や再発リスクなどにおよぼす肥満の影響を再評価することが重要である。そして、減量や身体活動量の増加、食事の質改善といった具体的な介入方法を評価し、エネルギーバランスを最適化する効率的な介入方法を確立することが求められる。

前がん病変を的確に特定し治療開始時期を予測する

前がん病変がその後、浸潤がんに進行するハイリスク病変であるか、あるいは治療を必要としない前がん病変のままで共存していくかを判断する方法がない。前がん病変が悪性のがんになる前に、ハイリスク病変を抑えて除去するアプローチを導く指針が必要である。

前がん病変の進行リスクが高い、低いという指標となる特徴を明確化し、浸潤前の病変が浸潤がんに進行する経路に特異的な分子を同定すること、その分子を標的として進行遅延、進行阻止に向けた介入方法を確立する。前がん病変の微小環境の特徴を明確化することも重要である。

参照元:
Clinical Cancer Advances 2020 Research Priorities to Accelerate Progress Against Cancer
ニュース がん一般

医療ライター 川又 総江

国内製薬企業研究所研究員、大学医学部研究室助手を経てフリーのメディカルライターに転身。医薬・バイオ関連出版社等の文献翻訳、医療記事作成を執筆すること20年。

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