・ファーストライン治療としてのカルボプラチン+アリムタ+アバスチン併用療法、
その後の維持療法としてのアリムタ+アバスチン併用療法の有効性・安全性を比較検証
・全生存期間はを統計学有意に改善しなかったが、
無増悪生存期間等は併用療法により臨床的意義のある結果を示した
2019年12月27日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にて未治療の進行性非小細胞肺がん患者に対するファーストライン治療としてのカルボプラチン+ペメトレキセド(商品名アリムタ;以下アリムタ)+ベバシズマブ(商品名アバスチン;以下アバスチン)併用療法後の維持療法としてのアリムタ+アバスチン併用療法の有効性、安全性を比較検証した第3相のCOMPASS試験の結果が国立病院機構九州がんセンター・ 瀬戸貴司氏らにより公表された。
COMPASS試験とは、未治療のEGFR(EGFR19,L858R)陰性の進行性非小細胞肺がん患者に対してファーストライン治療としてカルボプラチン+アリムタ+アバスチン併用療法後の維持療法として3週を1サイクルとしてアリムタ500mg/m2+アバスチン15mg/kg併用療法を投与する群、または3週を1サイクルとしてアバスチン15mg/kg単剤療法を投与する群に1対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として全生存期間(OS)を比較検証した第3相試験である。
本試験に登録された患者背景は下記の通りである。
年齢中央値
併用群=65歳(32‐77歳)
単剤群=65歳(27‐81歳)
性別
併用群=男性74%、女性26%
単剤群=男性71%、女性29%
ECOG Performance
併用群=スコア0 61%、スコア1 39%
単剤群=スコア0 58%、スコア1 42%
EGFRステータス
併用群=野生型 92%
単剤群=野生型 90%
喫煙歴
併用群=あり 75%、なし 25%
単剤群=あり 80%、なし 20%
脳転移の有無
併用群=あり 5%
単剤群=あり 5%
ファーストライン治療で奏効率30%以上を達成した患者割合
併用群=59%
単剤群=60%
以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。主要評価項目である全生存期間(OS)中央値は併用群23.3ヶ月に対して単剤群19.6ヶ月、併用群で死亡(OS)のリスクを13%(HR:0.87,95%信頼区間:0.73‐1.05,P=0.069)減少したにも関わらず統計学有意な差は確認されなかった。また、EGFR野生型患者群のみでは併用群で死亡(OS)のリスクを18%(HR:0.82,95%信頼区間:0.68‐0.99,P=0.020)減少した。副次評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値は併用群5.7ヶ月に対して単剤群4.0ヶ月、併用群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを33%(HR:0.67,95%信頼区間:0.57‐0.79,P<0.001)減少した。
一方の安全性として、最も多くの患者で確認されたグレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)発症率は下記の通りである。併用群で好中球数減少14.0%、高血圧11.7%、貧血4.7%、蛋白尿4.7%に対して単剤群で高血圧16.6%、蛋白尿8.8%を示した。なお、本試験では薬剤コストにおいても算出しており、維持療法の薬剤コスト(1ドル=112円換算)は併用群4,531,000円(IQR:1,986,000円-8,463,000円)に対して単剤群1,917,000円(IQR:901,000円-3,505,000円)で高価であったが、併用群で薬剤コストが効果である主な原因は治療期間中央値が長いためである。
以上のCOMPASS試験の結果より瀬戸貴司氏らは以下のように結論を述べている。”未治療の進行性非小細胞肺がん患者に対する維持療法としてのアリムタ+アバスチン併用療法は、アバスチン単剤療法に比べて主要評価項目である全患者群における全生存期間(OS)を統計学有意に改善しませんでした。しかしながら、全患者群における無増悪生存期間(PFS)、EGFR野生型患者群における全生存期間(OS)は併用療法により臨床的意義のある結果を示しました。”
Randomized Phase III Study of Continuation Maintenance Bevacizumab With or Without Pemetrexed in Advanced Nonsquamous Non–Small-Cell Lung Cancer: COMPASS (WJOG5610L)(J Clin Oncol. 2019 Dec 27:JCO1901494. doi: 10.1200/JCO.19.01494.)