局所治療後の少数個転移非小細胞肺がん患者に対するキイトルーダ、無増悪生存期間を統計学的有意に改善するJAMA Oncologyより


  • [公開日]2019.07.31
  • [最終更新日]2019.07.30
この記事の3つのポイント
・局所治療後の少数個転移非小細胞肺がん患者が対象の第2相試験
キイトルーダ単剤療法の有効性安全性を検証
・増悪生存期間を統計学的有意に改善

2019年7月11日、医学誌『JAMA Oncology』にて局所治療後の少数個転移(オリゴメタスタシス)非小細胞肺がん患者に対する抗PD-1抗体薬であるペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ;以下キイトルーダ)単剤療法の有効性、安全性を検証した第2相試験(NCT02316002)の結果がUniversity of PennsylvaniaのJoshua M. Bauml氏らにより公表された。

本試験は、局所治療後の少数転移非小細胞肺がん患者(N=45人)に対して3週を1サイクルとしてキイトルーダ200mg単剤療法を投与し、主要評価項目として無増悪生存期間PFS)を検証した第2相試験である。なお、本試験における少数個転移(オリゴメタスタシス)は4箇所以下として定義している。

本試験が実施された背景として、他の臨床試験にて少数個転移(オリゴメタスタシス)非小細胞肺がん患者に対するファーストライン治療として局所治療を実施したところ、緩和療法に比べて無増悪生存期間(PFS)を統計学的有意に改善することが示されている。また、近年は非小細胞肺がんに対する治療法として免疫チェックポイント阻害薬標準治療として確立している。以上の背景より、局所治療後の少数個転移(オリゴメタスタシス)非小細胞肺がん患者に対する抗PD-1抗体薬キイトルーダ単剤療法の有用性を確認する目的が本試験が開始された。

本試験に登録された患者背景は下記の通りである。

年齢中央値
64歳(46-82歳)

性別
男性=53%(N=24人)
女性=47%(N=21人)

ECOG Performance Status
スコア0=49%(N=22人)
スコア1=51%(N=23人)

喫煙歴
現在も吸っている=11%(N=5人)
以前は吸っていた=78%(N=35人)
一度も吸っていない=11%(N=5人)

がんの組織学的分類
腺がん76%(N=34人)
扁平上皮がん18%(N=8人)
その他7%(N=3人)

TNM分類T因子
T1=42%(N=19人)
T2=27%(N=12人)
T3=7%(N=3人)
T4=16%(N=7人)

TNM分類のN因子
N0=36%(N=16人)
N1=18%(N=8人)
N2=27%(N=13人)
N3=9%(N=4人)

転移部位
肺=31%(N=14人)
脳=36%(N=16人)
副腎=13%(N=6人)
骨=11%(N=5人)
肝臓=11%(N=5人)

以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値は局所治療開始時点より病勢進行までの期間で19.1ヶ月(95%信頼区間:9.4-28.7ヶ月,P=0.005)を示し、過去の治療成績である6.6ヶ月よりも統計学的有意に改善した。また、キイトルーダ治療開始時点より病勢進行までの期間は18.7ヶ月(95%信頼区間:10.1-27.1ヶ月)を示した。副次評価項目である全生存期間OS)中央値は41.6ヶ月(95%信頼区間:27.0-56.2ヶ月)、12ヶ月全生存率(OS)は90.9% 、24ヶ月全生存率(OS)は90.9% を示した。

一方の安全性として、最も多くの患者で確認された全グレードの治療関連有害事象(TRAE)は下記の通りである。痛み42%(19/45人)、疲労36%(N=16人)、皮膚障害22%(N=10人)、呼吸困難18%(N=8人)、咳16%(N=7人)、そう痒6%(N=7人)。最も多くの患者で確認されたグレード3または4の治療関連有害事象(TRAE)は痛み2%(1人)、呼吸困難2%(1人)、吐き気2%(1人)、グレード3の肺炎4%(N=2人)、グレード4の肺炎2%(N=1人)。

以上の第2相試験の結果よりJoshua M. Bauml氏らは以下のように結論を述べている。”局所治療後の少数個転移(オリゴメタスタシス)非小細胞肺がん患者に対する抗PD-1抗体薬キイトルーダ単剤療法は、無増悪生存期間(PFS)を既存の臨床成績よるも統計学的有意に改善しました。”

Pembrolizumab After Completion of Locally Ablative Therapy for Oligometastatic Non–Small Cell Lung Cancer A Phase 2 Trial(JAMA Oncol. 2019 July 11. doi: 10.1001/jamaoncol.2019.1449.)

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