・キイトルーダ単剤療法の有効性、安全性を検証
・マイクロサテライト不安定性の高い患者で部分奏効を達成したが、客観的奏効率基準を満たすことはできなかった
2019年7月3~6日までスペイン・バルセロナで開催されたthe ESMO World Congress on Gastrointestinal Cancer 2019(WCGC 2019)にて進行性小腸腺がん患者に対する抗PD-1抗体薬であるペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ;以下キイトルーダ)単剤療法の有効性、安全性を検証した第2相試験(NCT02949219)の結果がWashington University School of MedicineのKatrina S. Pedersen氏らにより公表された。
本試験は、進行性小腸腺がん患者(N=40人)に対してキイトルーダ200mg単剤療法を病勢進行または予期せぬ有害事象(AE)が発現するまで投与し、主要評価項目として客観的奏効率(ORR)、副次評価項目として無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、安全性を検証した第2相試験である。なお、主要評価項目の達成基準として、35分の7人以上の患者で奏効が確認される場合として設定されている。
本試験が実施された背景として、小腸腺がんの発症割合は年間100万人中6~7人程度であるが、最近は米国、欧州にて発症患者数が増加している。また、ファーストライン治療としてFOLFOX/CAPOX療法後の標準治療は不足しており、新たな標準治療法の確立が必要であった。以上の背景より、進行性小腸腺がん患者に対する抗PD-1抗体薬キイトルーダ単剤療法の有用性を前向きに検証した初の大規模試験が開始された。
本試験に登録された患者背景は下記の通りである。腫瘍部位は十二指腸60%、空腸25%、回腸15%。マイクロサテライト不安定性(MSI)検査の実施率は55%(N=22人)だった。
以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。なお、結果公表時点で32人の患者は治療中止をしており、その理由は病勢進行78%(N=25人)、死亡16%(N=5人)、有害事象6%(N=2人)である。
主要評価項目である客観的奏効率(ORR)は8%(95%信頼区間:2%-20%)を示し、3人の患者で部分奏効(PR)が確認されるも、主要評価項目である達成基準を満たすことはできなかった。副次評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値は2.8ヶ月(95%信頼区間:2.7-5.1ヶ月)。全生存期間(OS)中央値は6.9ヶ月(95%信頼区間:5.1ヶ月-未到達)であった。
また、マイクロサテライト不安定性(MSI)ステータス別の客観的奏効率(ORR)は下記の通りである。マイクロサテライト不安定性のない(MSS)患者18人の内6%(N=1人)は部分奏効(PR)を示し、マイクロサテライト不安定性の低い(MSI-L)患者2人の内1人は病勢安定(SD)を示し、マイクロサテライト不安定性の高い(MSI-H)患者2人の内2人は部分奏効(PR)を示した。
一方の安全性として、グレード3以上の有害事象(AE)は58%(N=23人)、グレード4または5の有害事象(AE)は23%(N=9人)の患者で確認された。
以上の臨床試験の結果よりKatrina S. Pedersen氏らは以下のように結論を述べている。”進行性小腸腺がん患者に対する抗PD-1抗体薬キイトルーダ単剤療法は、主要評価項目である客観的奏効率(ORR)基準を満たすことはできませんでしたが、マイクロサテライト不安定性の高い(MSI-H)患者2人とも部分奏効(PR)を達成しました。”
https://www.oncnet.com/news/pembrolizumab-fails-achieve-goal-response-rate-patients-advanced-small-bowel-adenocarcinomaWorld Congress on Gastrointestinal Cancer 2019 #O-007)