・術前化学放射線療法後のオプジーボ単剤療法の有効性・安全性を検証
・病理学的完全奏効率は30%を示した
2019年7月3~6日までスペイン・バルセロナで開催されたthe ESMO World Congress on Gastrointestinal Cancer 2019(WCGC 2019)にて、マイクロサテライト安定性(MSS)切除可能局所進行性直腸がん患者に対する術前化学放射線療法後の抗PD-1抗体薬であるニボルマブ(商品名オプジーボ;以下オプジーボ)単剤療法の有効性、安全性を検証したVOLTAGE試験(UMIN000023148)の結果が国立がん研究センター東病院の吉野孝之氏により公表された。
VOLTAGE試験とは、切除可能局所進行性直腸がん患者をマイクロサテライト安定性(MSS)群(コーホートA1;N=39人)、高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)群(コーホートA2;N=2人)に分け、同意が得られた患者に対して化学放射線療法(カペシタビン+50Gy)を実施後14日以内に2週を1サイクルとしてオプジーボ240mg単剤療法を5サイクル投与し、主要評価項目として独立中央評価による病理学的完全奏効率(pCR;期待pCR率は30%と設定)、副次評価項目として各施設判定による病理学的完全奏効率(pCR)、根治的切除率などを検証したオープンラベル単群医師主導試験である。
本試験のコーホートA1において登録された患者37人の結果は下記の通りである。主要評価項目である独立中央評価による病理学的完全奏効率(pCR)は30%(95%信頼区間:18%-44%)、11人の患者で病理学的完全奏効(pCR)が確認された。なお、マイクロサテライト安定性(MSS)群におけるPD-L1発現率別の病理学的完全奏効率(pCR)はPD-L1発現率1%以上群で60%に対して1%未満群で19%を示した。
化学放射線療法前に採取した検体でのバイオマーカー解析の結果、PD-L1発現率と腫瘍浸潤リンパ球(TIL)におけるCD8/eTreg比が病理学的完全奏効率(pCR)に関連している可能性が示唆された。マイクロサテライト安定性(MSS)群におけるCD8/eTreg比別の病理学的完全奏効率(pCR)はCD8/eTreg比2以上群で62%に対して2未満で10%を示した。一方の安全性として、全グレードの治療関連有害事象(TRAE)発症率は51.3%、グレード3/4は7.7%を示した。
以上のVOLTAGE試験の結果より吉野孝之氏らは以下のように結論を述べている。”マイクロサテライト安定性(MSS)切除可能局所進行性直腸がん患者に対する術前化学放射線療法後の抗PD-1抗体薬オプジーボ単剤療法は、病理学的完全奏効率(pCR)30%を示し、主要評価項目を達成しました。”