・セルメチニブ単剤療法の有効性・安全性を検証
・BRAF遺伝子変異、神経線維腫症I型を有する患者で良好な抗腫瘍効果を示した
2019年5月28日、医学誌『The Lancet Oncology』にて治療歴のある再発難治性低悪性度神経膠腫小児患者に対するMEK 1/2阻害薬であるセルメチニブ単剤療法の有効性、安全性を検証した第2相試験(NCT01089101)の結果がChildren's Healthcare of Atlanta and Emory UniversityのJason Fangusaro氏らにより公表された。
本試験は、少なとも1レジメンの治療歴のある3~21歳の再発難治性低悪性度神経膠腫小児患者に対して28日1サイクルとして1日2回セルメチニブ25mg/m2単剤療法を投与し、主要評価項目として層別の客観的奏効率(ORR)などを検証した多施設共同第2相試験である。なお、本試験は腫瘍部位、神経線維腫症I型(NF1)ステータス、BRAF遺伝子変異ステータス、組織学的分類に基づいて患者を6グループに分けて結果を検証している。
本試験が実施された背景として、低悪性度神経膠腫は小児期の最も一般的な中枢神経系腫瘍であり、その予後は良好であるが、しばし再発が起こる疾患である。現在のところ本疾患の標準治療は存在しないが、一般的に殺細胞性抗がん剤により治療されている。以上の背景より、再発難治性低悪性度神経膠腫小児患者に対するMEK 1/2阻害薬であるセルメチニブ単剤療法の有用性が本試験で検証された。
本試験に登録された25人の患者のうち、BRAF遺伝子変異を有する患者9人、神経線維腫症I型(NF1)を有する患者10人の結果は下記の通りである。BRAF遺伝子変異を有する患者におけるフォローアップ期間中央値36.4ヶ月時点における客観的奏効率(ORR)は36%(95%信頼区間:18%–57%)、神経線維腫症I型(NF1)を有する患者におけるフォローアップ期間中央値48.6ヶ月時点における客観的奏効率(ORR)は40%(95%信頼区間:21%–61%)を示した。
一方の安全性として、最も多くの患者で確認されたグレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)はクレアチンホスホキナーゼ上昇10%(N=5人)、黄斑疹10%(N=5人)であった。なお、治療関連有害事象(TRAE)による死亡は1人の患者でも確認されていない。
以上の第2相試験の結果よりJason Fangusaro氏らは以下のように結論を述べている。”治療歴のある再発難治性低悪性度神経膠腫小児患者に対するMEK 1/2阻害薬であるセルメチニブ単剤療法は、BRAF遺伝子変異、神経線維腫症I型(NF1)を有する患者において良好な抗腫瘍効果を示し、化学療法の代替治療になり得る可能性が本試験により示唆されました。”