・キイトルーダ単剤療法を投与し、客観的奏効率、全生存期間などを検証
・キイトルーダ単剤療法は未治療、既治療に関わらず長期的な抗腫瘍効果を示した
2019年5月31日より6月4日までアメリカ合衆国・イリノイ州・シカゴで開催されている米国臨床腫瘍学会(ASCO 2019)にて、進行性非小細胞肺がん患者に対する抗PD-1抗体薬であるペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ;以下キイトルーダ)単剤療法の有効性、安全性を検証した第1相のKEYNOTE-001試験の5年フォローアップ成績の結果がUniversity of CaliforniaのEdward B. Garon氏らにより公表され、医学誌『Journal of Clinical Oncology』に6月2日付で掲載された。
KEYNOTE-001試験とは、未治療の進行性非小細胞肺がん患者(N=101人)、治療歴のある進行性非小細胞肺がん患者(N=449人)に対して2~3週を1サイクルとしてキイトルーダ2~10mg単剤療法を投与し、主要評価項目として客観的奏効率(ORR)、全生存期間(OS)などを検証した第1相試験である。
本試験が実施された背景として、非小細胞肺がん患者の予後は不良であり、2008年~2014年時点における5年全生存率(OS)は24%程度である。そこで、他の臨床試験にて進行性非小細胞肺がんに対する有用性が確認されている抗PD-1抗体薬キイトルーダ単剤療法の有用性が本試験にて確認された。
本試験に登録された患者背景は下記の通りである。
年齢中央値
未治療群=68歳(39-93歳)
既治療群=62歳(28-85歳)
性別
未治療群=男性 59%、女性 41%
既治療群=男性 51%、女性 49%
ECOG Performance Status
未治療群=スコア0 44%、スコア1 56%
既治療群=スコア0 33%、スコア1 67%
組織学的分類
未治療群=扁平上皮 19%(N=19人)、非扁平上皮 78%(N=79人)
既治療群=扁平上皮 17%(N=76人)、非扁平上皮 82%(N=367人)
遺伝子ステータス
未治療群=EGFR遺伝子陽性 3%(N=3人)、KRAS遺伝子陽性 27%(N=12人)、ALK遺伝子陽性 1%(N=1人)
既治療群=EGFR遺伝子陽性 17%(N=74人)、KRAS遺伝子陽性 26%(N=74人)、ALK遺伝子陽性 2%(N=8人)
以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。主要評価項目である全生存期間(OS)中央値は未治療群22.3ヶ月(95%信頼区間:17.1-32.3ヶ月)に対して既治療群10.5ヶ月(95%信頼区間:8.6-13.2ヶ月)を示した。また、5年全生存率(OS)は未治療群23.2%に対して既治療群15.5%を示した。
また、PD-L1発現率50%以上の患者群における全生存期間(OS)中央値は35.4ヶ月(95%信頼区間:20.3-63.5ヶ月)、5年全生存率(OS)は29.6%を示した。なお、PD-L1発現率50%未満の患者群における全生存期間(OS)中央値は8.5ヶ月(95%信頼区間:6.0-12.6ヶ月)、5年全生存率(OS)は12.6%を示した。
もう1つの主要評価項目である客観的奏効率(ORR)は未治療群41.6%(95%信頼区間:31.9%-51.8%)に対して既治療群22.9%(95%信頼区間:19.1%-27.1%)、奏効の内訳は未治療群で完全奏効率(CR)3.0%(N=3人)、部分奏効率(PR)38.6%(N=39人)に対して既治療群で完全奏効率(CR)1.1%(N=5人)、部分奏効率(PR)21.8%(N=98人)。
一方の安全性として、全グレードの治療関連有害事象(TRAE)発症率は71%、グレード3~5の治療関連有害事象(TRAE)発症率は13%、重篤な治療関連有害事象(TRAE)発症率は42%を示した。また、免疫関連有害事象(irAE)発症率は17%を示し、最も多くの患者で確認された免疫関連有害事象(irAE)は甲状腺機能低下症9%、肺炎5%、甲状腺機能亢進症2%であった。
以上のKEYNOTE-001試験の5年フォローアップ成績の結果よりEdward B. Garon氏らは以下のように結論を述べている。”進行性非小細胞肺がん患者に対する抗PD-1抗体薬キイトルーダ単剤療法は、未治療、既治療に関わらず長期的な抗腫瘍効果を示しました。また、PD-L1発現率50%以上の患者に対しては、標準的な予後期間である5年全生存率(OS)25%を超える結果を示しました。”