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前立腺がん治療ワクチンPROSTVAC、去勢抵抗性前立腺がん患者の生存期間を改善しない

[公開日] 2019.03.20[最終更新日] 2019.03.20

この記事の3つのポイント ・PROSTVACは、PSAを標的として2種類ウイルスを用いて作成されたワクチン
・症状が無症状または最小限の去勢抵抗性前立腺がん患者に対する第3相試験の結果が公表
・忍容性は問題なかったが、全生存期間を改善する有用性を示すことはできなかった

2019年2月28日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にて症状が無症状または最小限の転移性去勢抵抗性前立腺がん患者に対して前立腺がん治療ワクチンであるPROSTVACの有効性、安全性を比較検証した第III相試験(NCT01322490)の結果がNational Institutes of HealthのJames L. Gulley氏らにより公表された。

本試験は、症状が無症状または最小限の転移性去勢抵抗性前立腺がん患者に対してPROSTVAC単独療法を投与するV群(N=432人)、またはPROSTVAC+GM-CSF併用療法を投与するVG群(N=432人)、またはプラセボを投与するP群(N=433人)の3群に分け、主要評価項目として全生存期間(OS)、副次評価項目として病勢進行、痛みの進行、化学療法の開始、死亡として定義された無イベント生存期間(AWE;Alive without events)などを比較検証した第III相試験である。

PROSTVACとは、前立腺特異的抗原(PSA)を標的として、2種類ウイルスを用いて作成されたワクチンである。PROSTVACにより免疫反応を誘発し、前立腺がん細胞を攻撃することで抗腫瘍効果を発揮する。また、従来の治療薬に比べて副作用の発現も少ないことが期待されている。

本試験に登録された患者背景は下記の通り。

年齢中央値
V群=71.3歳
VG群=70.6歳
P群=71.4歳

人種
V群=白人93.5%(N=404人)、アフリカ系アメリカ人3.9%(N=17人)、アジア人1.6%(N=7人)
VG群=白人92.6%(N=400人)、アフリカ系アメリカ人5.8%(N=25人)、アジア人1.4%(N=6人)
P群=白人93.1%(N=403人)、アフリカ系アメリカ人5.3%(N=23人)、アジア人1.6%(N=7人)

ECOG Performance Status
V群=スコア0が71.8%(N=310人)、スコア1が27.8%(N=120人)、スコア2が0.2%(N=1人)
VG群=スコア0が74.5%(N=322人)、スコア1が24.8%(N=107人)、スコア2が0.5%(N=2人)
P群=スコア0が76.2%(N=330人)、スコア1が23.8%(N=103人)

HLA-A2ステータス
V群=陽性46.3%(N=200人)、陰性44.0%(N=190人)
VG群=陽性44.4%(N=192人)、陰性42.8%(N=185人)
P群=陽性42.3%(N=183人)、陰性46.9%(N=203人)

PSA中央値
V群=71.4ng/ml
VG群=69.4ng/ml
P群=82.6ng/ml

転移部位
V群=骨74.1%(N=320人)、リンパ節14.4%(N=62人)、内蔵系9.5%(N=41人)
VG群=骨74.8%(N=323人)、リンパ節16.7%(N=72人)、内蔵系7.4%(N=32人)
P群=骨75.3%(N=326人)、リンパ節15.9%(N=69人)、内蔵系8.3%(N=36人)

以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。主要評価項目である全生存期間(OS)中央値はV群で34.4ヶ月、VG群で33.2ヶ月、VG群で34.3ヶ月を示した。また、プラセボ群と比較した時のV群、VG群の死亡のリスクはV群で1%増加(HR:1.01,95%信頼区間:0.84-1.20,P=0.47)、VG群で2%増加(HR:1.01,95%信頼区間:0.86-1.22,P=0.59)した。

副次評価項目である6ヶ月無イベント生存率(AWE)はV群29.4%(OR:0.96,95%信頼区間:0.71-1.29)、VG群28.0%(OR:0.89,95%信頼区間:0.66-1.20)を示した。なお、無イベント生存(AWE)の中で最も多くの患者で確認されたイベントは病勢進行であり、その割合は約60%程であった。

また、その他評価項目である客観的奏効率(ORR)はV群で0.9%(N=4人)、VG群で0.7%(N=3人)、P群で0.2%(N=1人)を示し、全群で1%未満の客観的奏効率(ORR)であった。

一方の安全性として、全グレードの治療関連有害事象(TRAE)発症率はV群72.7%(N=312人)に対してVG群79.3%(N=340人)に対してP群70.6%(N=302人)、グレード3~5の治療関連有害事象(TRAE)発症率はV群3.3%(N=14人)に対してVG群4.7%(N=20人)に対してP群2.6%(N=11人)を示した。

なお、最も多くの患者で確認された治療関連有害事象(TRAE)は注射部位反応でありV群62%、VG群72%を示した。また、注射部位反応以外の治療関連有害事象(TRAE)としては倦怠感であるV群21%、VG群24%を示した。

治療関連有害事象(TRAE)による治療中止率はV群4.9%(N=21人)に対してVG群6.5%(N=28人)に対してP群5.8%(N=25人)を示し、最も多くの患者で確認された治療中止に至った治療関連有害事象(TRAE)としては骨痛であり、それぞれの群で2人ずつ確認された。

以上の第III相試験の結果よりJames L. Gulley氏らは以下のように結論を述べている。”転移性去勢抵抗性前立腺がん患者に対するPROSTVACは、忍容性が問題ないにも関わらず、全生存期間(OS)を改善する有用性を示すことができませんでした。”

Phase III Trial of PROSTVAC in Asymptomatic or Minimally Symptomatic Metastatic Castration-Resistant Prostate Cancer(Journal of Clinical Oncology, Published:February 28, 2019.)

ニュース 前立腺がん PROSTVAC

山田創

製薬会社、オンコロジーメディアの運営を経て、フリーのメディカルライターへ転身。Twitterアカウント「@So_Yamada_」

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