・オプジーボ+ヤーボイ併用療法の有効性・安全性をPD-L1発現率、腫瘍遺伝子変異量別に検証
・PD-L1発現1%以上、TMB 10mut/Mb以上の患者で奏効率、無増悪生存期間を改善
2019年2月20日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にて未治療の進行性非小細胞肺がん患者に対するファーストライン治療としての抗PD-1抗体薬であるニボルマブ(商品名オプジーボ;以下オプジーボ)+抗CTLA-4抗体薬であるイピリムマブ(商品名ヤーボイ;以下ヤーボイ)併用療法の有効性、安全性をPD-L1発現率、腫瘍遺伝子変異量(TMB)別に検証した第2相のCheckMate568試験(NCT02659059)の結果がDuke University Medical CenterのNeal Ready氏らにより公表された。
本試験は、未治療のステージIIIB/IV非小細胞肺がん患者に対して2週を1サイクルとしてオプジーボ3m/kg+6週を1サイクルとしてヤーボイ1mg/kg併用療法を投与し、主要評価項目としてPD-L1発現率、腫瘍遺伝子変異量(TMB)別に客観的奏効率(ORR)を検証したオープンラベルシングルアームの第2相試験である。
本試験が実施された背景として、進行性非小細胞肺がん患者に対するファーストライン治療としては抗PD-1抗体薬であるペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ;以下キイトルーダ)単剤、キイトルーダ+化学療法併用療法等が標準治療として確立している。これら標準治療により治療成績は向上しているが、依然としてこれら治療により恩恵を受ける患者のバイオマーカーは特定されていない。以上の背景より、PD-L1発現率、腫瘍遺伝子変異量(TMB)別にオプジーボ+ヤーボイ併用療法の有効性、安全性が本試験で検証された。
本試験に登録された患者背景(N=288人)は下記の通りである。年齢中央値は65.0歳(39-91歳)。性別は女性50.7%。ECOG Performance Statusはスコア0が37.2%、スコア1が61.8%、スコア2が1.0%。喫煙歴は現在も吸っている19.4%、以前に吸っていた71.2%、一度も吸っていない8.7%。
進行病期はステージIIIbが26.4%、ステージIVが85.4%。組織分類は扁平上皮がん26.4%、非扁平上皮がん73.6%。PD-L1発現率は1%未満45.2%、1%以上54.8%。腫瘍遺伝子変異量(TMB)は10mut/Mb以上49.0%、10mut/Mb未満51.0%。
以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。主要評価項目である客観的奏効率(ORR)は全患者群で29.9%(95%信頼区間:24.6-35.5%)、PD-L1発現1%未満群で14.9%(95%信頼区間:8.9-22.8%)、PD-L1発現1%以上群で41.3%(95%信頼区間:33.0-50.0%)、PD-L1発現50%以上群で50.0%(95%信頼区間:37.6-62.4%)。
なお、完全奏効率(CR)は全患者群で2.4%(N=7/288)、PD-L1発現1%未満群で2.6%(N=3/114)、PD-L1発現1%以上群で2.9%(N=4/138)、PD-L1発現50%以上群で4.4%(N=3/68)。
また、腫瘍遺伝子変異量(TMB)別の客観的奏効率(ORR)は5mut/Mb未満群で8.7%(95%信頼区間:1.1-28.0%)、5mut/Mb以上10mut/Mb未満群で14.8%(95%信頼区間:4.2-33.7%)、10mut/Mb以上群で43.8%(95%信頼区間:29.5-58.8%)、10mut/Mb以上15mut/Mb未満群で50.0%(95%信頼区間:27.2-72.8%)、15mut/Mb以上群で39.3%(95%信頼区間:21.5-59.4%)。
なお、完全奏効率(CR)は5mut/Mb未満群で0%(N=0/23人)、5mut/Mb以上10mut/Mb未満群で3.7%(N=1/4)、10mut/Mb以上群で8.3%(N=4/48人)、10mut/Mb以上15mut/Mb未満群で10.0%(N=2/20人)、15mut/Mb以上群で7.1%(N=2/28人)。
その他評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値は下記の通りである。PD-L1発現1%以上群では6.8ヶ月(95%信頼区間:4.0-11.3ヶ月)に対してPD-L1発現1%未満群では2.8ヶ月(95%信頼区間:2.1-4.0ヶ月)を示した。また、6ヶ月無増悪生存率(PFS)はPD-L1発現1%以上群52%に対してPD-L1発現1%未満群32%を示した。
また、腫瘍遺伝子変異量(TMB)10mut/Mb以上群では7.1ヶ月(95%信頼区間:3.6-11.3ヶ月)に対して10mut/Mb未満群では2.6ヶ月(95%信頼区間:1.4-5.4ヶ月)を示した。また、6ヶ月無増悪生存率(PFS)は10mut/Mb以上群55%に対して10mut/Mb未満群31%を示した。
一方の安全性としては、全グレードの治療関連有害事象(TRAE)発症率は80%、グレード3~4の治療関連有害事象(TRAE)発症率は29%の患者で確認された。最も多くの患者で確認された全グレードの治療関連有害事象(TRAE)は倦怠感24.7%(N=71人)、下痢22.9%(N=66人)、そう痒15.6%(N=45人)、吐き気13.9%(N=40人)、リパーゼ上昇10.4%(N=30人)、食欲減退10.1%(N=29人)、食欲減退10.1%(N=29人)、黄斑疹10.1%(N=29人)。
また、最も多くの患者で確認されたグレード3~4の治療関連有害事象(TRAE)はリパーゼ上昇6.6%(N=19人)、下痢3.1%(N=9人)、倦怠感1.7%(N=5人)、そう痒0.7%(N=2人)、吐き気0.7%(N=2人)、黄斑疹0.7%(N=2人)。
以上のCheckMate568試験の結果よりNeal Ready氏らは以下のように結論を述べている。”進行性非小細胞肺がん患者に対するファーストライン治療としてのオプジーボ+ヤーボイ併用療法は、PD-L1発現1%以上、腫瘍遺伝子変異量(TMB)10mut/Mb以上の患者で奏効率(RR)、無増悪生存期間(PFS)を改善しました。そして、本試験により腫瘍遺伝子変異量(TMB)は本治療のバイオマーカーになり得る可能性が示唆されました。”