免疫チェックポイント阻害薬使用時の口腔ケアの重要性第59回日本肺癌学会学術集会より


  • [公開日]2019.01.22
  • [最終更新日]2019.02.15

口腔ケアを行うことで、カンジタ症による食欲不振が改善

2018年11月29日から12月1日に開催された第59回日本肺癌学会学術集会にて、県立広島病院の濵井 宏介氏らにより、免疫チェックポイント阻害剤投与時の口腔ケアに関する発表が行われた。

免疫チェックポイント阻害薬を使用する際の有害事象は、間質性肺疾患や大腸炎、内分泌障害といった免疫関連有害事象が特徴的であるが、従来の抗がん剤でも認められる食欲不振や悪心嘔吐、全身倦怠感などが生じることがある。

これまでに行われたKEYNOTE-010試験やCheckmate-017試験の2つの非小細胞肺がん対象の臨床試験において、免疫チェックポイント阻害薬使用時の食欲不振の発生率はペムブロリズマブキイトルーダ)、ニボルマブオプジーボ)、共に10~15%程度と報告されている。

県立広島病院において、進行再発非小細胞肺がんに対して免疫チェックポイント阻害薬を使用した症例のうち8名(12.7%)に食欲不振が認められ、4名が入院を要した。またこの8名の臨床経過を後方視的に解析した結果、少なくとも4症例が口腔内カンジダ症を併発しており、食欲不振の原因になっている可能性が考えられた。

これらの患者は歯科に併診を依頼するなどして、口腔ケアを行うことで症状が改善し、免疫チェックポイント阻害剤の投与継続が可能であった。今回の発表では免疫チェックポイント阻害剤を使用した患者の最新データをもとに、その患者背景を(後ろ向きに)解析し、食欲不振を発現した患者の特徴を検討した上で、県立広島病院における現在の取り組みについて発表された。

免疫チェックポイント阻害剤で治療を行う際、主治医の判断で必要があると判断された場合には歯科医に紹介し口腔ケア(義歯洗浄、アズノール含嗽等)が行われた。これまで63例が口腔ケア無し、19例が口腔ケア有りであった。

口腔ケアの有無で食欲不振の発現頻度に変化はなかった。しかし口腔ケアなしの群では69例中19例で予定外の入院があり、その理由として食欲不振が多かった。一方で口腔ケア有の群では19例中4例で予定外の入院があったが、食欲不振が原因の入院は1例も無かった。

食欲不振を訴えている症例を確認すると舌の発疹が見られ、口腔内カンジダ症との診断がされた。口腔内を清潔に保つことでカンジダ症は改善し、食欲不振も回復した。

口腔ケアはビスフォスフォネート製剤、血管新生阻害剤等を使用する際に重要であると認知されているが、免疫チェックポイント阻害薬投与時にも適切に行うことで、口腔内カンジダ症を予防し、食欲不振を防ぐことが可能だと考えられる。

なお、口腔ケアの方法に関してはサポーティブケア学会のホームページで確認可能とのこと。

「JASCCがん支持医療ガイド翻訳シリーズ」 口腔ケアガイダンス第1版日本語版

×

リサーチのお願い


この記事に利益相反はありません。

会員登録 ログイン