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がん情報ウェブサイトに訪問者が求めるものは?
がん情報サービスによる医学誌発表


  • [公開日]2019.01.08
  • [最終更新日]2019.01.08

がん全体の共通ニーズとがん部位別の固有ニーズを分けた情報提供の重要性

公共医療機関などが提供しているがん関連情報は、検索してきた訪問者のニーズに応えているか、医療者とがん患者、がんサバイバーなどとの情報共有に寄与しているかといった疑問を、科学的な検証に基づいて明らかにし、がん情報をより洗練したものへとするための研究が行われている。

「がん情報サービス」アンケートから情報ニーズを吸い上げる

東京大学大学院公共健康医学専攻医療コミュニケーション学の木内貴弘教授らのグループは、がん情報を求める訪問者のニーズについて、がん種を問わず全体に共通する類似点と、がんの部位別に特有の相違点という視点から分析する研究を実施しており、国立がん研究センターが提供している国内最大規模のがん情報ウェブサイト「がん情報サービス」に寄せられるアンケート回答を対象に記述統計学の手法を駆使した分析を試みた。同研究成果は、2018年12月のPreventive Medicine Reports誌(2018年10月22日オンライン版)に掲載された。

2006年に国立がん研究センターが立ち上げた「がん情報サービス」は、今ではひと月におよそ270万アクセスがある日本最大規模のウェブサイトである。

2017年12月現在、がん情報を原発部位別に55種に分けて収載している。個々のウェブページでは、症状や検査、診断、治療、副作用などの基本的な情報を載せるとともに、診療ガイドラインの変更などに基づき随時更新している。そして、情報改善のための調査を目的とするアンケートが個々のページにリンクされており、調査目的に同意した上で、がん患者またはがんサバイバー本人、もしくはその家族、または家族以外で自覚症状などを直接見聞きしている周囲の者が匿名で回答することができる。

木内教授らのグループは、訪問者が求めているものの「がん情報サービス」では取得できなかった情報を、いわゆる情報ニーズと定義し、2012年4月から2017年12月までに収集したアンケート回答の計2794通のうち、分析に不適切な12通を除く2782通の回答を分析対象とした。国内外で公衆衛生研究に汎用され、記述回答内容を計量分析するテキストマイニングのソフトウェア「KH Corder」を用いて分析した。その結果、これまで報告されている研究では明確化されていなかった情報ニーズがみえてきた。

分析対象とした胃がん、大腸がん、食道がん、肺がん、膵がん、乳がん、子宮頸がん、前立腺がんの8がん種において、それぞれ出現頻度10位までの情報ニーズは、2005年から2016年にかけて公表された複数の研究報告とほぼ一致した。ただ、過去の報告は1つのがん種、あるいは複数のがん種混在で分析したもので、異なるがん種に共通する情報ニーズは確定しておらず、また、異なるがん種の間での情報ニーズの比較もされていなかった。本研究の手法では、がん種横断的な情報ニーズの類似点、がん部位別の情報ニーズの相違点を明確化することに成功した。

情報ニーズのがん種を越えた類似点

8種のがん種に共通する情報ニーズで出現頻度上位であったのは、症状、病期、治療、治癒可能性、回復、転移、および再発で、これらは過去の報告とほぼ同様であった。本研究で新たに分かったことは、これら上位の共通情報ニーズが患者、サバイバー、ならびにそれ以外を含めた全ての回答者から発せられていることであった。

さらに、全8がん種ではないが、4種から5種のがん種に共通する高頻度情報ニーズも明らかになった。例えば、治療の副作用に関する情報ニーズは大腸がん、肺がん、食道がん、乳がん、および前立腺がんでの類似点であった。

情報ニーズのがん部位ごとの相違点

8種のがん部位別に特有の情報ニーズは以下の通り。各がんに特異的な事情や、国内での診断や治療成績の現況を鑑みれば、想像し得る関心事が見いだされた。

(1)胃がん:スキルス胃がんに関する情報など
(2)大腸がん:便の異常に関する情報など
(3)肺がん:肺X線所見に関する情報など
(4)食道がん:症状と食事管理に関する情報など
(5)膵がん:早期発見と食事に関する情報など
(6)乳がん:転移と再発に関する情報など
(7)子宮頸がん:腺がん、性的行為、妊娠、出産に関する情報など
(8)前立腺がん:前立腺がん特異的なホルモン療法、尿問題に関する情報など

アンケート回答に高頻度出現する用語、段落からコード化して分析

前述の分析結果は、過去の報告では判明しなかった情報ニーズの傾向から導き出された。

本研究で分析対象となった8がん種で、回答は前立腺がんの505通が最も多く、食道がんの205通が最も少なかった。回答者は、患者またはサバイバーが31%から63%を占め、家族は15%から39%、周囲の者は22%から31%であった。回答に記述された計23875語の用語、計7032語の固有の用語、計3009の段落を分析対象とし、出現頻度上位100語の出現パターンや共起用語などの分析結果を組み合わせ、既に公表されている研究報告も参照しつつ、がん全体、ならびにがん種別のコードとコード化の規則を設定した。さらに、がん部位別の出現頻度10位のコードそれぞれに適合する段落について、回答者別の出現頻度の分布を調べ、回答者の群間で有意差がある20コードを見いだした。これにより、患者・サバイバー本人と家族や周りの者の間で異なる情報ニーズも明らかにされた。

本研究により、科学的手法を駆使した大量データの分析を積み重ねることで、医療者、患者・サバイバー、家族など全ての当事者に利益となる情報が蓄積、更新され、有益な情報として利用できる環境整備の重要性が示された。

Cancer information needs according to cancer type: A content analysis of data from Japan’s largest cancer information website(Prev Med Rep. 2018 Dec; 12: 245–252.)

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