未治療の進展型小細胞肺がん患者に対するシスプラチン+エトポシド+ベリパリブ、無増悪生存期間を統計学有意に改善するJournal of Clinical Oncology


  • [公開日]2018.12.28
  • [最終更新日]2018.12.28
この記事の3つのポイント
・未治療の進展型小細胞肺がん患者対象の第Ⅱ相試験
シスプラチン+エトポシド+ベリパリブ併用療法群とプラセボ併用療法群を比較検証
・ベリパリブ+化学療法無増悪生存期間を統計学有意に改善

2018年12月5日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にて、未治療の進展型小細胞肺がん患者に対するシスプラチン+エトポシド(CE)+PARP阻害薬であるベリパリブ併用療法の有効性を比較検証した第ⅡのECOG-ACRIN 2511試験(NCT01642251)の結果がEmory University・Taofeek K. Owonikoko氏らにより公表された。

ECOG-ACRIN 2511試験とは、未治療の進展型小細胞肺がん患者(N=128人)に対して3週を1サイクルとして1日目にシスプラチン75mg/㎡+1~3日目にエトポシド100mg/㎡+1~7日目に1日2回ベリパリブ100mg併用療法を投与する群(N=64人,CE+V;以下CE+V)、または3週を1サイクルとして1日目にシスプラチン75mg/㎡+1~3日目にエトポシド100mg/㎡+プラセボ併用療法を投与する群(N=64人,CE+P;以下CE+P)に無作為に振り分け、主要評価項目として無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目として全生存期間OS)、客観的奏効率ORR)などを比較検証した二重盲検下ランダム比較の第Ⅱ相試験である。

本試験が実施された背景として、未治療進展型小細胞肺がんのファーストライン治療の標準治療であるプラチナ製剤ベースの化学療法よりも治療成績の高い治療レジメンを開発するためである。プラチナ製剤ベースの化学療法は客観的奏効率(ORR)50%~70%程度を示しものの、その効果の持続性は高くなく、全生存期間(OS)中央値は9~11ヶ月程度、5年生存率(OS)は5%未満である。また、小細胞肺がんは他の肺がんに比べてPARP発現率が高いために、PARPの修復機能の停止によるがん細胞の合成致死を誘導させる作用機序であるPARP阻害薬の有効性が期待されている。以上の背景より、本試験では未治療の進展型小細胞肺がん患者に対するCE+V併用療法の有効性、安全性が検証された。

本試験に登録された患者背景は以下の通りである。

年齢中央値はCE+V群66歳(59-72歳)に対してCE+P群64歳(59-70歳)。
・性別はCE+V群で男性53%、女性47%に対してCE+P群で男性50%、女性50%。
ECOG Performance StatusはCE+V群でスコア0が23%、スコア1が77%に対してCE+P群でスコア0が34%、スコア1が66%。
・人種はCE+V群で白人95%、黒人3%、その他2%に対してCE+P群で白人89%、黒人3%、その他8%。
TNM分類におけるN因子ステージはCE+V群でN0が5%、N1が0%、N2が29%、N3が48%、NXが5%に対してCE+P群でN0が11%、N1が21%、N2が38%、N3が5%、NXが5%。
・クレアチニン値の異常を有する患者はCE+V群で0%に対してCE+P群で9%。
・LDH値の異常を有する患者はCE+V群で69%に対してCE+P群で67%。
胸水を有する患者はCE+V群で38%に対してCE+P群で36%。
・脳転移を有する患者はCE+V群で0%に対してCE+P群で0%。
・両群間における患者背景に大きな偏りはなかった。

以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は以下の通りである。主要評価項目である118件(CE+V群58件、CE+P群60件)のイベント確認時点における無増悪生存期間(PFS)中央値はCE+V群6.1ヶ月(95%信頼区間:5.9-6.7ヶ月)に対してCE+P群5.5ヶ月(95%信頼区間:5.0-6.1ヶ月)、CE+V群で病勢進行または死亡のリスクを25%減少(HR:0.75,80%信頼区間:0.59-0.95,P=0.06)した。なお、stratified解析ではCE+V群で病勢進行または死亡のリスクを27%減少(HR:0.63,P=0.01)し、主要評価項目を達成した。

副次評価項目である105件(CE+V群51件、CE+P群54件)のイベント確認時点における全生存期間(OS)中央値はCE+V群10.3ヶ月(95%信頼区間:8.9-12.0ヶ月)に対してCE+P群8.9ヶ月(95%信頼区間:8.3-11.3ヶ月)、stratified解析ではCE+V群で死亡のリスクを17%減少(HR:0.83,80%信頼区間:0.64-1.07,P=0.17)した。また、客観的奏効率(ORR)はCE+V群71.9%に対してCE+P群65.6%、両群間で統計学的有意な差は確認されなかった(P=0.29)。

一方の安全性として、CE+V群の5%以上の患者で確認されたグレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)はCD4リンパ球減少症でCE+V群8%に対してCE+P群0%(P=0.06)、好中球減少症でCE+V群49%に対してCE+P群32%(P=0.08)。なお、CE+P群でグレード5の発熱性好中球減少症2%であった。

以上のECOG-ACRIN 2511試験の結果より、Taofeek K. Owonikoko氏らは以下のように結論を述べている。“未治療進展型小細胞肺がん患者に対するファーストライン治療としてのベリパリブ+化学療法は無増悪生存期間(PFS)を統計学有意に改善しました。”

Randomized Phase II Trial of Cisplatin and Etoposide in Combination With Veliparib or Placebo for Extensive-Stage Small-Cell Lung Cancer: ECOG-ACRIN 2511 Study

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