この記事の3つのポイント
・治療開始時のステロイド投与がPD-(L)1抗体の効果に与える影響を調査
・非小細胞肺がん患者を対象としたリアルワールドデータの解析研究
・開始時のステロイドの使用はPD-(L)1抗体の効果減弱を示唆
2018年8月20日、「JOURNAL OF CLINICAL ONCOLIGY」にて、非小細胞肺がん患者における使用開始時のステロイドの使用が免疫チェックポイント阻害薬であるPD-1抗体やPD-L1抗体(以下、PD-(L)1抗体)の効果に与えるインパクトに関するデータがMemorial Sloan Kettering Cancer CenterのKathryn Cらにより報告された。
オプジーボ、キイトルーダ、テセントリクなど、PD-(L)1抗体は、現在、非小細胞肺がん患者の標準治療である。コルチコステロイドの免疫抑制効果は、PD-(L)1抗体の有効性を減弱させる可能性がある。免疫関連有害事象(irAE)の治療のためのコルチコステロイド投与はPD-(L)1抗体の有効性に影響を与えないようであるが、治療開始時のベースラインのコルチコステロイドが効果に与える影響は不明である。
臨床試験では通常、ベースラインでコルチコステロイドを受けた患者は除外されているため、本研究では実臨床データ(リアルワールドデータ)を用いて治療開始時のコルチコステロイドの影響を検討することを目的としている。
2つの施設(Memorial Sloan Kettering Cancer CenterおよびGustave Roussy Cancer Center)にて、進行性非小細胞肺がん患者でPD-(L)1抗体未治療の患者のうち、PD-(L)1抗体単剤で治療が行われた患者を対象とした。PD-(L)1抗体治療開始時のコルチコステロイド使用を同定するために、臨床および薬剤記録を確認し、Cox比例ハザードモデルとロジスティック回帰を用いて多変量解析を行った。
治療された640人の患者の90人(14%)が、PD-(L)1抗体の開始時に10mg以上のプレドニゾン相当のコルチコステロイドを日々投与されていた。コルチコステロイドの一般的適応症は、呼吸困難(33%)、疲労(21%)、脳転移(19%)であった。
Memorial Sloan Kettering Cancer Center(n = 455)およびGustave Roussy Cancer Center(n = 185)の独立した両コホートにおいて、ベースラインコルチコステロイドは、PD-(L)1抗体の全奏効率(ORR)、無増悪生存率(PFS)および全生存率(OS)の低下を示した。
全体の多変量解析では、喫煙歴、PS、および脳転移歴、ベースラインでのコルチコステロイド使用が無増悪生存率(PFS)(HR 1.3; P=0.03)と全生存率(OS)の短縮(HR 1.7、P<0.001)に大幅に関与していた。
本試験の結果、以下のように考察されている。10mg以上のプレドニゾンに相当するベースラインでのコルチコステロイドの使用は、PD-(L)1抗体で治療を行った非小細胞肺がん患者患者の不良な転帰と関連していた。PD-(L)1抗体開始時のコルチコステロイドは慎重な使用が推奨される。
Impact of Baseline Steroids on Efficacy of Programmed CellDeath-1 and Programmed Death-Ligand 1 Blockade inPatients With Non–Small-Cell Lung Cancer