FLT3-ITD変異陽性の再発難治性急性骨髄性白血病(AML)患者に対するFLT3阻害薬キザルチニブ、複合完全寛解 (CRc)率47.4%を示す医学誌『blood』より


  • [公開日]2018.08.27
  • [最終更新日]2018.09.27
この記事の3つのポイント
・FLT3-ITD変異陽性の再発難治性急性骨髄性白血病患者対象の第Ⅱb相試験
造血幹細胞移植またはサルベージ治療後のキザルチニブ単剤療法有効性を検証した
・複合完全寛解(CRc)率が高く、副作用も管理可能

2018年8月9日、医学誌『blood』にてFLT3-ITD変異を有する再発または難治性急性骨髄性白血病(AML)患者に対するFLT3阻害薬であるキザルチニブ単剤療法の有効性を検証した第IIb相試験(NCT01565668)の結果がThe University of Texas MD Anderson Cancer Center・Jorge E. Cortes氏らにより公表された。

本試験は造血幹細胞移植またはサルベージ治療歴のあるFLT3-ITD変異を有する再発または難治性急性骨髄性白血病(AML)患者(N=76)に対して1日1回キザルチニブ30mg単剤療法を投与する群(N=38人)、または1日1回キザルチニブ60mg単剤療法を投与する群(N=38人)に1対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として複合完全寛解(CRc)率、QT延長発症率、副次評価項目として全生存期間OS)、造血幹細胞移植移行率、安全性などを比較検証した第IIb相試験である。

本試験に登録された患者背景は下記の通りである。年齢中央値は30mg群57歳(19-77歳)に対して53歳(20-74歳)。性別は30mg群で男性58%(N=22人)に対して60mg群で男性58%(N=22人)。ECOG Performance Statusは30mg群でスコア0が21.1%(N=8人)、スコア1が60.5%(N=23人)、スコア2が18.4%(N=7人)に対して60mg群でスコア0が18.4%(N=7人)、スコア1が63.2%(N=24人)、スコア2が10.5%(N=4人)。

遺伝子変異ステータスは30mg群でNPM1変異陽性21%(N=8人)、CEBPA変異陽性0%に対してNPM1変異陽性29%(N=11人)、CEBPA変異陽性0%。遺伝子学的異常に基づくリスク分類は30mg群でFavorableが0%、Intermediateが68%(N=26人)、Unfavorableが11%(N=4人)に対して60mg群でFavorableが5%(N=2人)、Intermediateが66%(N=25人)、Unfavorableが8%(N=3人)。

前治療歴は30mg群で造血幹細胞移植歴24%(N=9人)、化学療法レジメン数中央値3(1-6)レジメンに対して60mg群で造血幹細胞移植歴32%(N=12人)、化学療法レジメン数中央値3(1-9)レジメン。以上のように両群間における患者背景の大きな偏りはなかった。

以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。主要評価項目である複合完全寛解 (CRc)率は30mg群47.4%(N=18人)に対して60mg群47.4%(N=18人)を示した。また、複合完全寛解 (CRc)の奏効持続期間(DOR)中央値は30mg群4.2週(95%信頼区間:2.1-9.7週)に対して60mg群9.1週(95%信頼区間:4.1-22.3週)、60mg群で延長傾向を示した。

もう一方の主要評価項目であるQT延長発症率30mg群でQTcF>480msecが11%、QTcF>500msecが5%に対して60mg群でQTcF>480msecが17%、QTcF>500msecが3%、60mg群でQTcF>480msecの患者割合が多かった。なお、トルサード・ド・ポワントグレード4の心室性不整脈、そして突然死などを発症した患者は両群で確認されなかった。

副次評価項目である全生存期間(OS)中央値は30mg群20.9週(95%信頼区間:17.7-25.3週)に対して60mg群27.3週(95%信頼区間:17.3-34.9週)。造血幹細胞移植移行率は30mg群32%(N=12人)に対して60mg群42%(N=16人)。全生存期間(OS)、造血幹細胞移植移行率ともに60mg群で良好であった。

一方の安全性として全グレードの治療関連有害事象(TRAE)発症率は30mg群78.9%(N=30人)に対して60mg群80.6%(N=29人)、10%以上の患者で確認された全グレードの治療関連有害事象(TRAE)は下記の通りである。

貧血は30mg群で21.1%(N=8人)に対して60mg群で19.4%(N=7人)、疲労30mg群で13.2%(N=5人)に対して60mg群で11.1%(N=4人)、吐き気は30mg群で10.5%(N=4人)に対して60mg群で22.2%(N=8人)、発熱性好中球減少症は30mg群で10.5%(N=4人)に対して60mg群で11.1%(N=4人)、下痢は30mg群で10.5%(N=4人)に対して60mg群で11.1%(N=4人)、血小板減少症は30mg群で10.5%(N=4人)、味覚異常は30mg群で10.5%(N=4人)、消化不良は30mg群で10.5%(N=4人)、QT延長は60mg群で13.9%(N=5人)、胸痛は60mg群で11.1%(N=4人)、好中球減少症は60mg群で11.1%(N=4人)、嘔吐は60mg群で11.1%(N=4人)。

以上の第IIb相試験の結果よりJorge E. Cortes氏らは以下のように結論を述べている。”FLT3-ITD変異を有する再発または難治性急性骨髄性白血病(AML)患者に対するFLT3阻害薬であるキザルチニブ単剤療法は複合完全寛解(CRc)率をはじめ有効性が高く、グレード3以上のQT延長発症率も3%から5%と管理可能でした。”

Phase 2b study of 2 dosing regimens of quizartinib monotherapy in FLT3-ITD–mutated, relapsed or refractory AML(Blood 2018 132:598-607; doi: https://doi.org/10.1182/blood-2018-01-821629)

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