再発難治性多発性骨髄腫 カイプロリスが週1回静注でも週2回より有効性向上を実証した第3相試験、スケジュール簡便化でQOLに寄与医学誌『The Lancet Oncology』より


  • [公開日]2018.07.19
  • [最終更新日]2018.07.19

再発または難治性多発性骨髄腫の治療薬カルフィルゾミブ(商品名カイプロリス)は、承認用法用量である27mg/㎡週2回静注(試験当時)を70mg/㎡週1回静注のスケジュールに変更しても安全性に大きな問題はなく、臨床転帰は有意に改善することが検証された。米国MayoクリニックのA Keith Stewart氏らが実施した第3相試験(A.R.R.O.W.、NCT02412878)の中間解析結果で、2018年6月1日、Lancet Oncology誌オンライン版に論文が掲載された。

A.R.R.O.W.試験は、2015年9月から2016年8月、主に欧州や米国など118施設で患者登録された無作為化非盲検試験で、プロテアソーム阻害薬や免疫修飾薬を含む2剤から3剤の治療経験を持つ18歳以上の再発または難治性多発性骨髄腫患者478例を対象に実施された。直近の前治療(プロテアソーム阻害薬のボルテゾミブ[商品名ベルケイド]、イキサゾミブ[商品名ニンラーロ]を含む)が効かず、全身状態を示すECOG PSスコアが0または1であることが主要な適格基準とされた。

登録患者478例をカルフィルゾミブ70mg/㎡週1回群(1回静注時間30分)、または27mg/㎡週2回群(1回静注時間10分)に無作為に割り付け、それぞれ週1回3週間(1、8、15日目)、週2回3週間(1、2、8、9、15、16日目)投与した。両群ともに初回の用量のみ20mg/㎡とし、デキサメタゾン(40mg静注または経口)を週1回併用投与した。主要評価項目は無増悪生存(PFS)期間の群間比較であった。

その結果、解析対象は70mg/㎡週1回群は240例、27mg/㎡週2回群は238例で、PFS期間中央値は週1回群(11.2カ月)が週2回群(7.6カ月)より有意に延長し(p=0.0029)、増悪または死亡のリスクが31%低下した(ハザード比[HR]0.69)。無増悪生存(PFS)期間中央値は、年齢や性別、人種、治療歴などあらゆる因子別の解析でも週1回群の方が週2回群より延長したことが明らかとなった。

奏効率も週1回群(62.9%)が週2回群(40.8%)より22%程度有意に高く(p<0.0001)、奏効持続時間の中央値は8%延長した。特に週1回群では17/240例(7%)が完全奏効(13例)、またはより厳格な基準による完全奏効(4例)で、82/240例(34%)が極めて良好な部分奏効以上と判定された。週2回群では4/238例(2%)が完全奏効で、32/238例(13%)が極めて良好な部分奏効以上であった。

全生存期間OS)は中央値の特定に至っていない。

グレード3以上の有害事象発現率は週1回群、週2回群の間に差はなく(各68%、62%)で、主に貧血(各18%、18%)、肺炎(各10%、7%)、および血小板減少症(各7%、7%)であった。グレード3以上の心不全は週1回群(3%)が週2回群(4%)よりわずかに少なかった。治療関連死は週1回群5例、週2回群2例で、死因は敗血症や急性肺障害、形質細胞骨髄腫などであった。

A.R.R.O.W.試験は、カルフィルゾミブの70mg/㎡週1回静注と27mg/2週2回静注の有効性と安全性を直接比較した初めての無作為化試験である。週1回スケジュールの臨床転帰が週2回スケジュールよりもすぐれ、安全性が特に劣ることがないという検証結果は、時間効率と利便性の点で意義が大きい。特に、加齢とともに活動性が低下してくる高齢患者の場合は、週2回連続して静注の治療を受けるスケジュールを週1回に減らせるのは、ライフスタイルを邪魔しない点でも有益である。

A.R.R.O.W.試験のデザイン決定時には、カルフィルゾミブの標準的用法用量は27mg/㎡週2回とされていたが、その後、56mg/㎡週2回静注が承認された。日本でも、レナミドミド+デキサメタゾンとの3剤併用療法では27mg/㎡週2回(1回静注時間10分)、デキサメタゾンとの2剤併用療法では56mg/㎡週2回(1回静注時間30分)が承認されている。

Once weekly versus twice weekly carfilzomib dosing in patients with relapsed and refractory multiple myeloma (A.R.R.O.W.): interim analysis results of a randomised, phase 3 study(The Lancet Oncology, DOI: https://doi.org/10.1016/S1470-2045(18)30354-1)

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