再発転移性頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)患者に対するマルチキナーゼ阻害薬ヴォトリエント+抗EGFR抗体薬アービタックス併用療法の安全性を検証した用量漸増第Ib相試験医学誌『The Lancet Oncology』より


  • [公開日]2018.07.13
  • [最終更新日]2019.02.22
この記事の3つのポイント
・本試験は再発転移性頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)患者に対するマルチキナーゼ阻害薬であるヴォトリエント+抗EGFR抗体薬であるアービタックス併用療法の安全性有効性を検証した用量漸増第Ib相試験である
・本試験の主要評価項目である最大耐用量(MTD)は1日1回ヴォトリエント800mgでも到達せず、第II相推奨用量(RPIID)は1日1回ヴォトリエント800mg+1週間に1回アービタックス250mg/m2(初回は400mg/m2 )として決定された
・ヴォトリエント+アービタックス併用療法において最も多くの患者で確認されたグレード3または4の治療関連有害事象(TRAE)は高血圧32%、リンパ球数減少23%、嚥下障害23%であった

2018年7月9日、医学誌『The Lancet Oncology』にて再発転移性頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)患者に対するマルチキナーゼ阻害薬であるパゾパニブ(商品名ヴォトリエント;以下ヴォトリエント)+抗EGFR抗体薬であるセツキシマブ(商品名アービタックス;アービタックス)併用療法の安全性、有効性を検証し、その後拡大コホートを実施する第Ib相試験(NCT01716416)の結果がWashington University School of Medicine・Douglas Adkins氏らにより公表された。

本試験は、再発転移性頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)患者(N=31人)に対して1日1回ヴォトリエント200mgより開始し、400mg、600mg、800mgへ漸増+1週間に1回アービタックス250mg/m2(初回は400mg/m2 )併用療法を投与し、主要評価項目として最大耐用量(MTD)、第II相推奨用量(RPIID)、副次評価項目として完全奏効(CR)または部分奏効(PR)を達成した患者割合として定義した全奏効率ORR)などを検証し、その後拡大コホートを実施した用量漸増第Ib相試験である。

本試験の第Ib相(N=22人)に登録された患者背景は下記の通りである。年齢中央値59歳(43-72歳)。性別は男性77%(N=17人)、女性23%(N=5人)。人種は白人73%(N=16人)、アフリカ系アメリカ人27%(N=6人)、ECOG Performance Statusはスコア0が59%(N=13人)、スコア1が41%(N=9人)。

喫煙歴ありの患者73%(N=16人)。原発巣部位は中咽頭27%(N=6人)、口腔36%(N=8人)、下咽頭18%(N=4人)、喉頭14%(N=3人)、上咽頭5%(N=1人)。前治療歴の種類はアービタックス55%(N=12人)、プラチナ系抗がん剤64%(N=14人)、アービタックス+プラチナ系抗がん剤45%(N=10人)。前治療歴は2レジメン以上41%(N=9人)、1レジメン36%(N=8人)、0レジメン23%(N=5人)。

以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。主要評価項目である最大耐用量(MTD)は到達せず、第II相推奨用量(RPIID)は1日1回ヴォトリエント800mg+1週間に1回アービタックス250mg/m2(初回は400mg/m2 )として決定された。

また、第Ib相、拡大コーホートにおいて最も多くの患者で確認されたグレード3または4の治療関連有害事象(TRAE)は下記の通りである。高血圧32%(N=10/31人)、リンパ球数減少23%、嚥下障害23%であり、治療関連により死亡は1例も確認されなかった。

一方の有効性として、副次評価項目であるヴォトリエント+アービタックス併用療法の全奏効率(ORR)は下記の通りである。ヴォトリエント200mg/日群33%(N=1/3人)、400mg/日群17%(N=1/6人)、600mg/日群29%(N=2/7人)、800mg/日群47%(N=7/15人)。また、病勢コントロール率DCR)はヴォトリエント200mg/日群33%(N=1人)、400mg/日群67%(N=4人)、600mg/日群86%(N=6人)、800mg/日群93%(N=14人)。

以上の第Ib相試験の結果よりDouglas Adkins氏らは以下のように結論を述べている。”再発転移性頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)患者に対するヴォトリエント+アービタックス併用療法のヴォトリエントの用量は800mg/日で忍容性が確認されました。”

Pazopanib plus cetuximab in recurrent or metastatic head and neck squamous cell carcinoma: an open-label, phase 1b and expansion study(The Lancet Oncology, https://doi.org/10.1016/S1470-2045(18)30350-4)

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