治療歴のある再発難治性胸腺上皮性腫瘍(TET)患者に対する抗PD-1抗体薬キイトルーダ単剤療法、全奏効率(ORR)21.2%を示す医学誌『Journal of Clinical Oncology』より


  • [公開日]2018.07.06
  • [最終更新日]2019.02.15
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・本試験は、少なくとも1レジメン以上のプラチナ系抗がん剤ベースの化学療法後に病勢進行(PD)した再発難治性胸腺上皮性腫瘍(TET)患者に対して抗PD-1抗体薬であるキイトルーダ単剤療法の有効性安全性を検証した第II相試験である
・本試験の主要評価項目である全奏効率ORR)は全患者群21.2%、胸腺腫群28.6%、胸腺がん群19.2%、その他評価項目である病勢コントロール率DCR)は全患者群78.8%、胸腺腫群100%、胸腺がん群73.1%であった
・本試験の副次評価項目である無増悪生存期間PFS中央値は全患者群6.1ヶ月、胸腺腫群6.1ヶ月、胸腺がん群6.1ヶ月。6ヶ月無増悪生存率(PFS)は全患者群54.5%、胸腺腫群57.1%、胸腺がん群53.8%であった

2018年6月15日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にて再発難治性胸腺上皮性腫瘍(TET)患者に対する抗PD-1抗体薬であるペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ;以下キイトルーダ)単剤療法の有効性、安全性を検証した第II相試験(NCT02607631)の結果がMacquarie University・Jinhyun Cho氏らにより発表された。

本試験は、少なくとも1レジメン以上のプラチナ系抗がん剤ベースの化学療法後に病勢進行(PD)した再発難治性胸腺上皮性腫瘍(TET)患者(N=33人,胸腺腫7人,胸腺がん26人)に対して3週に1回キイトルーダ200mg単剤療法を投与し、主要評価項目として全奏効率(ORR)、副次評価項目として無増悪生存期間(PFS)、治療関連有害事象(TRAE)発症率などを検証した第II相試験である。なお、過去1年以内に全身療法を必要とする自己免疫疾患、もしくは重篤な自己免疫疾患の既往歴のある患者は本試験より除外している。

本試験に登録された患者背景は下記の通りである。年齢中央値は胸腺腫群57歳(38-66歳)、胸腺がん群57歳(26-78歳)。性別は男性42.9%(N=3人)、69.2%(N=18人)。ECOG Performance Statusはスコア0-1が100%(N=11人)、100%(N=22人)。

転移部位は胸膜100%(N=7人)、69.2%(N=18人)、リンパ節28.6%(N=2人)、65.4%(N=17人)、肺14.3%(N=1人)、57.7%(N=15人)、肝臓14.3%(N=1人)、38.5%(N=10人)、骨14.3%(N=1人)、34.6%(N=9人)、心膜28.6%(N=2人)、15.4%(N=4人)、その他14.3%(N=1人)、11.5%(N=3人)。

化学療法の前治療歴は1レジメン42.9%(N=3人)、42.3%(N=11人)、2レジメン14.3%(N=1人)、30.8%(N=8人)、3レジメン以上42.9%(N=3人)、26.9%(N=7人)。放射線の前治療歴は0%、46.2%(N=12人)。

以上の背景を有する患者に対する本試験のフォローアップ期間中央値14.9ヶ月時点における結果は下記の通りである。主要評価項目である全奏効率(ORR)は全患者群21.2%(95%信頼区間:10.7%-37.8%)、胸腺腫群28.6%(95%信頼区間:8.2%-64.1%)、胸腺がん群19.2%(95%信頼区間:8.5%-37.9%)であった。

なお、本試験ではPD-L1発現率別の全奏効率(ORR)も検証しており、PD-L1発現率の評価可能であった患者(N=24人)の内、PD-L1発現率50%以上の患者群(N=14人)で5人が部分奏効(PR)を示したが、PD-L1発現率50%未満の患者群では部分奏効(PR)を示した患者はいなかった。

また、病勢コントロール率(DCR)は全患者群78.8%(95%信頼区間:62.3%-89.3%)、胸腺腫群100%(95%信頼区間:64.6%-100%)、胸腺がん群73.1%(95%信頼区間:53.9%-86.3%)であった。奏効持続期間(DOR)は全患者群9.7ヶ月(95%信頼区間:0.3-19.1ヶ月)、胸腺腫群未到達、胸腺がん群9.7ヶ月(95%信頼区間:0.0-19.8ヶ月)であり、全群のキイトルーダ投与サイクル中央値は8サイクルであった。

副次評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値は全患者群6.1ヶ月(95%信頼区間:5.3-6.9ヶ月)、胸腺腫群6.1ヶ月(95%信頼区間:4.3-7.9ヶ月)、胸腺がん群6.1ヶ月(95%信頼区間:5.1-7.1ヶ月)。6ヶ月無増悪生存率(PFS)は全患者群54.5%(95%信頼区間:38.0%-70.1%)、胸腺腫群57.1%(95%信頼区間:25.0%-84.2%)、胸腺がん群53.8%(95%信頼区間:35.5%-71.3%)であった。

一方の安全性として、10%以上の患者で確認された全患者群における全グレードの治療関連有害事象(TRAE)は下記の通りである。呼吸困難33%(N=11人)、胸痛30%(N=10人)、食欲不振21%(N=7人)、疲労21%(N=7人)、咳18%(N=6人)、背部痛12%(N=4人)、肝炎12%(N=4人)であった。

また、グレード3または4の免疫関連副作用irAE)は胸腺腫群、胸腺がん群それぞれ下記の通りである。胸腺腫群では、心筋炎42.9%(N=3人)、肝炎28.6%(N=2人)、甲状腺炎14.3%(N=1人)、大腸炎14.3%(N=1人)、結膜炎14.3%(N=1人)、腎炎14.3%(N=1人)であった。胸腺がん群では、肝炎7.7%(N=2人)、重症筋無力症7.7%(N=2人)、亜急性ミオクローヌス3.8%(N=1人)であった。

以上の第II相試験の結果よりJinhyun Cho氏らは以下のように結論を述べている。”再発難治性胸腺上皮性腫瘍(TET)患者に対する抗PD-1抗体薬であるキイトルーダ単剤療法は、胸腺腫、胸腺がんの間で特に差はなく、高い抗腫瘍効果を示し、忍容性も特に問題ありませんでした。

Pembrolizumab for Patients With Refractory or Relapsed Thymic Epithelial Tumor: An Open-Label Phase II Trial(DOI: 10.1200/JCO.2017.77.3184 Journal of Clinical Oncology – published online before print June 15, 2018)

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