この記事の3つのポイント
・IMblaze370試験とは、少なくとも2レジメン以上の治療歴のある局所進行性または転移性大腸がん患者に対して抗PD-L1抗体薬であるテセントリク+MEK阻害薬であるコビメチニブ併用療法、テセントリク単剤療法とスチバーガ単剤療法の有効性を検証した第III相試験である
・本試験の主要評価項目である全生存期間(OS)中央値はテセントリク+コビメチニブ併用群8.9ヶ月、テセントリク単剤群7.1ヶ月に対してスチバーガ単剤群8.5ヶ月、3群間における死亡のリスク(OS)に統計学的有意な差は確認されなかった
・本試験の副次評価項目である無増悪生存率(PFS rate)は、テセントリク+コビメチニブ併用群はスチバーガ単剤群に比べて病勢進行または死亡のリスク(PFS)を25%増加、テセントリク単剤群はスチバーガ単剤群に比べて39%増加したが、両群間で統計学的有意な差は確認されなかった
2018年6月20日より23日までスペインン・バルセロナで開催された第20回世界消化器癌学会(WCGC2018)にて、複数治療歴のある局所進行性または転移性大腸がん患者に対する抗PD-L1抗体薬であるアテゾリズマブ(商品名テセントリク;以下テセントリク)+MEK阻害薬であるコビメチニブ併用療法の抗悪性腫瘍薬/キナーゼ阻害薬であるレゴラフェニブ(商品名スチバーガ;以下スチバーガ)単剤療法の有効性を比較検証した第III相のIMblaze370試験(NCT02788279)の結果がSarah Cannon Research Institute at Tennessee Oncology・Johanna C. Bendell氏らにより公表された。
IMblaze370試験とは、少なくとも2レジメン以上の治療歴のある局所進行性または転移性大腸がん患者(N=363人)に対して28日を1サイクルとして1、15日目にテセントリク840mg +1~21日目にコビメチニブ60mg併用療法を投与する群(N=183人)、または21日を1サイクルとして1日目にテセントリク1200mg単剤療法を投与する群(N=90人)、または28日を1サイクルとして1~21日目にスチバーガ160mg単剤療法を投与する群(N=90人)に2対1対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として全生存期間(OS)、副次評価項目として無増悪生存期間(PFS)、客観的奏効率(ORR)、奏効持続期間(DOR)を比較検証した国際多施設共同非盲検下の第III相試験である。
本試験の結果、主要評価項目である全生存期間(OS)中央値はテセントリク+コビメチニブ併用群8.9ヶ月に対してスチバーガ単剤群8.5ヶ月、両群間における死亡のリスク(OS)に統計学的有意な差は確認されなかった(ハザード比:1.00,95%信頼区間:0.73-1.38,P=0.9871)。また、テセントリク単剤群の全生存期間(OS)中央値は7.1ヶ月、スチバーガ単剤群に比べて死亡のリスク(OS)を19%増加した(ハザード比:1.19,95%信頼区間:0.83-1.71,P=0.3360)。
また、12ヶ月全生存率(OS rate)はテセントリク+コビメチニブ併用群38.5%、テセントリク単剤群27.2%、スチバーガ単剤群36.6%を示した。なお探索的解析の結果、テセントリク単剤群に比べてテセントリク+コビメチニブ併用群で死亡のリスク(OS)を19%減少(ハザード比:0.81,95%信頼区間:0.60-1.10)したが統計学的有意な差は確認されなかった。
副次評価項目である無増悪生存率(PFS rate)は、テセントリク+コビメチニブ併用群はスチバーガ単剤群に比べて病勢進行または死亡のリスク(PFS)を25%増加(95%信頼区間:0.94-1.65)、テセントリク単剤群はスチバーガ単剤群に比べて39%増加(95%信頼区間:1.00-1.94)したが、両群間で統計学的有意な差は確認されなかった。
客観的奏効率(ORR)はテセントリク+コビメチニブ併用群2.7%、テセントリク単剤群2.2%、スチバーガ単剤群2.2%を示した。なお、完全奏効(CR)を示した患者は3群間で1人もいなかった。また、奏効持続期間(DOR)はテセントリク+コビメチニブ併用群11.4ヶ月、テセントリク単剤群4.8ヶ月、スチバーガ単剤群9.2ヶ月を示した。
また、病勢コントロール率(DCR)はテセントリク+コビメチニブ併用群26.2%、テセントリク単剤群21.1%、スチバーガ単剤群34.4%を示し、6ヶ月以上の病勢安定(SD)を継続した患者はテセントリク+コビメチニブ併用群23.5%、テセントリク単剤群18.9%、スチバーガ単剤群32.2%であった。
なお、本試験はマイクロサテライト不安定性が高い(MSI-H)患者が全群において6人おり、テセントリク+コビメチニブ併用療法が投与された3人中2人、テセントリク単剤療法が投与された3人中1人の患者で奏効が確認されている。
一方の安全性として、3群で最も多くの患者で確認された全グレードの治療関連有害事象(TRAE)は下記の通りである。下痢はテセントリク+コビメチニブ併用群65%、テセントリク単剤群19%、スチバーガ単剤群38%、皮膚障害は46%、9%、24%、吐き気は37%、21%、14%、疲労感は36%、26%、46%、発熱は33%、16%、25%、嘔吐は28%、14%、10%、食欲減退は27%、24%、41%、皮膚炎は26%、2%、3%、無力症は21%、13%、21%であった。また、2群に比べてスチバーガ単剤群で統計学的有意に多かった全グレードの治療関連有害事象(TRAE)は高血圧は5%, 4%, 31%。体重減少は4%、8%、21%。手足症候群は2%、1%、53%、発声障害は0%、1%、24%であった。
以上のIMblaze370試験の結果よりJohanna C. Bendell氏らは以下のように結論を述べている。”複数治療歴のある局所進行性または転移性大腸がん患者に対するテセントリク+コビメチニブ併用療法はスチバーガ単剤療法に比べて全生存期間(OS)を統計学的有意に改善することはできず、本試験の主要評価項目を達成できませんでした。”
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