HER2陽性早期乳がん患者に対する術後化学療法としてのハーセプチン、無病生存率(DFS)において51週(1年間)投与に対する9週投与の非劣勢を証明できず医学誌『JAMA Oncology』より


  • [公開日]2018.06.04
  • [最終更新日]2018.07.06
この記事の3つのポイント
・第III相のSOLD試験とはHER2陽性早期乳がん患者に対する術後化学療法としてのハーセプチンの至適投与期間の違いによる無病生存率(DFS rate)などの有効性の違いを比較検証した試験である
・本試験の主要評価項目である5年無病生存率(DFS rate)はハーセプチン51週(1年間)投与群90.5%に対して9週投与群88.0%、ハーセプチン51週(1年間)投与群に対する9週投与群の非劣勢を示すことができなかった
・心臓障害関連の治療関連有害事象(TRAE)発症率はハーセプチン51週(1年間)投与群で4%に対して9週投与群で2%であった

2018年5月31日、医学誌『JAMA Oncology』にてHER2陽性早期乳がん患者に対する術後化学療法としてのトラスツズマブ(商品名ハーセプチン;以下ハーセプチン)9週投与または51週(1年間)投与の至適投与期間の違いによる有効性を検証した第III相のSOLD試験(NCT00593697)の結果がHelsinki University Hospital・Heikki Joensuu氏らにより公表された。

SOLD試験とは、HER2陽性早期乳がん患者(N=2176人)に対する術後化学療法として3週間に1回の投与間隔でハーセプチン+ドセタキセル併用療法を9週投与後に3週間に1回の投与間隔でCEF療法(シクロホスファミド+エピルビシン+フルオロウラシル)を9週投与する群(N=1087人,コーホートA)、または3週間に1回の投与間隔でハーセプチン+ドセタキセル併用療法を9週投与後に3週間に1回の投与間隔でCEF療法(シクロホスファミド+エピルビシン+フルオロウラシル)を9週投与後に3週間に1回の投与間隔でハーセプチンを51週(1年間)投与する群(N=1089人,コーホートB)に1:1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として無病生存率(DFS rate)、副次評価項目として5年遠隔無病生存率(DDFS rate)、5年全生存率(OS rate)を比較検証した第III相の試験である。

本試験に登録されたコーホートA、コーホートBの患者背景はそれぞれ下記の通りである。年齢中央値はコーホートAで56歳(49-64)に対してコーホートBで56歳(48-63)。性別は白人98%(N=1061人)に対して98%(N=1066人)。閉経ステータスは閉経前33%(N=353人)に対して33%(N=364人)、閉経後67%(N=731人)に対して66%(N=724人)。WHO基準によるPerformance Statusはスコア0が90%(N=975人)に対して88%(N=963人)、スコア1が9%(N=102人)に対して10%(N=112人)。

病期ステージIが39%(N=427人)に対して39%(N=430人)、ステージIIが49%(N=529人)に対して48%(N=528人)、ステージIIIが12%(N=129人)に対して12%(N=131人)。組織学的グレード分類はグレード1が2%(N=26人)、2%(N=27人)、グレード2が31%(N=340人)、30%(N=327人)、グレード3が66%(N=714人)に対して67%(N=731人)。

エストロゲン受容体発現率は陽性66%(N=711人)に対して66%(N=723人)。プロゲステロン受容体発現率は陽性46%(N=504人)に対して47%(N=517人)。HER2受容体発現率は99%(N=1078人)に対して100%(N=1084人)。

以上の背景を有する患者に対する本試験のフォローアップ期間中央値5.2年(3.8-6.7年)における結果は下記の通りである。主要評価項目である5年無病生存率(DFS rate)はハーセプチン51週(1年間)投与群90.5%に対して9週投与群88.0%、ハーセプチン51週(1年間)投与群に対する9週投与群の非劣勢を示すことができなかった(ハザード比:1.39,90%信頼区間:1.12-1.72)。

また、副次評価項目である5年遠隔無病生存率(DDFS rate)、5年全生存率(OS rate)においては両群間に統計学有意な差は確認されなかった。その結果は、5年遠隔無病生存率(DDFS rate)がハーセプチン51週(1年間)投与群94.2%に対して9週投与群93.2%(ハザード比:1.24; 90%信頼区間:0.93-1.65)、5年全生存率(OS rate)はがハーセプチン51週(1年間)投与群95.9%に対して9週投与群94.7%(ハザード比:1.36; 90%信頼区間:0.98-1.89)であった。

一方の安全性としては、心臓障害関連の治療関連有害事象(TRAE)発症率はハーセプチン51週(1年間)投与群で4%(N=42人)に対して9週投与群で2%(N=22人)であった(P =0.01)。なお、左室駆出率の維持率はハーセプチン51週(1年間)投与群よりも9週投与群で良好であり、左室駆出率中央値はハーセプチン51週(1年間)投与群61%に対して9週投与群 63%(P < 0.001)であった。

以上の第III相のSOLD試験の結果よりHeikki Joensuu氏らは以下のように結論を述べている。”HER2陽性早期乳がん患者に対する術後化学療法としてのハーセプチン9週投与は51週(1年間)投与に対する無病生存率(DFS rate)の非劣勢を証明することができませんでした。しかし、心臓障害関連の治療関連有害事象(TRAE)発症率はハーセプチン9週投与で減少しました。”

Effect of Adjuvant Trastuzumab for a Duration of 9 Weeks vs 1 Year With Concomitant Chemotherapy for Early Human Epidermal Growth Factor Receptor 2–Positive Breast Cancer The SOLD Randomized Clinical Trial(JAMA Oncol. Published online May 31, 2018. doi:10.1001/jamaoncol.2018.1380)

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