染色体17p欠失を有する再発難治性もしくは未治療慢性リンパ性白血病(CLL)患者に対するベネトクラクス、客観的奏効率(ORR)77%を示す医学誌『Journal of Clinical Oncology』より


  • [公開日]2018.05.17
  • [最終更新日]2018.05.17
この記事の3つのポイント
・染色体17p欠失を有する再発難治性または未治療慢性リンパ性白血病(CLL)患者に対するベネトクラクスの客観的奏効率ORR)は77%を示した
・ベネトクラクスの主な全グレードの治療関連有害事象(TRAE)は好中球減少症、下痢、吐き気、貧血、倦怠感、血小板減少症である
・ベネトクラクスの微小残存病変MRD)陰性率は30%を示した

2018年5月1日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にて染色体17p欠失を有する再発難治性もしくは未治療慢性リンパ性白血病(CLL)患者に対するベネトクラクス(ABT-199)単剤療法有効性を検証した第II相のM13-982試験(NCT01889186)の結果がUlm University・Stephan Stilgenbauer氏らにより公表された。

M13-982試験とは、染色体17p欠失を有する再発難治性もしくは未治療慢性リンパ性白血病(CLL)患者(N=158人)に対して1日1回ベネトクラクス 400mg単剤療法を投与し、主要評価項目として客観的奏効率(ORR)、有害事象(AE)発症率など、副次評価項目として奏効持続期間(DOR)、無増悪生存期間PFS)、全生存期間OS)などを検証した単群非盲検下の第II相試験である。

本試験に登録された患者背景は下記の通りである。年齢中央値は67歳(29-85歳)。性別は男性37%(N=59人)、女性63%(N=99人)。ECOG Performance Statusはスコア0が44%(N=69人)、スコア1が49%(N=78人)、スコア2が7%(N=11人)。

Rai分類分期はステージ0が6%(N=1人)、ステージ1が20%(N=32人)、ステージ2が33%(N=52人)、ステージ3が16%(N=26人)、ステージ4が30%(N=47人)。前治療歴レジメン数中央値は2レジメン(0-10レジメン)、0レジメンは3%(N=5人)。

腫瘍崩壊症候群(TLS)リスク分類は低リスク23%(N=36人)、中リスク38%(N=60人)、高リスク39%(N=62人)。バルキー病変の大きさは5cm以上48%(N=76人)、10cm以上13%(N=21人)。

上記背景を有する患者に対してベネトクラクス単剤療法を投与した結果は下記の通りである。主要評価項目である客観的奏効率(ORR)は77%(N=122/158人)を示し、奏効率の内訳は完全寛解(CR)または血液の回復は不十分だが骨髄では完全寛解(CRi)20%(N=32人)、結節性部分寛解(nPR)または部分寛解(PR)57%(N=90人)。なお、フローサイトメトリーによる微小残存病変(MRD)の検出(カットオフ値10−4)陰性率は30%(N=48/158人)の患者で確認された。

また、客観的奏効率(ORR)を達成した患者(N=122人)における副次評価項目である24ヶ月奏効持続率(DOR)は66%(95%信頼区間:55%-74%)、奏効持続期間(DOR)中央値は33.2ヶ月(95%信頼区間:26.7ヶ月-未到達)を示した。

その他副次評価項目は、全ての患者における24ヶ月無増悪生存率(PFS)は54%(95%信頼区間:45%-62%)、無増悪生存期間(PFS)中央値は27.2ヶ月(95%信頼区間:21.9ヶ月-未到達)、24ヶ月全生存率(OS)は73%(95%信頼区間:65%-79%)、全生存期間(OS)中央値は未到達であった。

一方の安全性としては、最も多くの患者で確認された全グレードの治療関連有害事象(TRAE)は98%(N=155人)の患者で確認され、その内訳は下記の通りである。好中球減少症42%(N=67人)、下痢39%(N=62人)、吐き気37%(N=59人)、貧血25%(N=39人)、倦怠感23%(N=37人)、血小板減少症20%(N=32人)。

また、最も多くの患者で確認されたグレード3または4の治療関連有害事象(TRAE)は75%(N=119人)の患者で確認され、その内訳は下記の通りである。好中球減少症40%(N=63人)、血小板減少症15%(N=23人)、貧血15%(N=23人)。

なお、治療関連有害事象(TRAE)のために減量した患者は17%(N=27人)、投与中止になった患者は40%(N=63人)であった。

以上の第II相試験の結果より、Stephan Stilgenbauer氏らは以下のように結論を述べている。”染色体17p欠失を有する慢性リンパ性白血病(CLL)患者さんに対してベネトクラクス単剤療法の奏効は持続性があり、ハイリスク患者さんでありながら微小残存病変(MRD)陰性率も高率でした。”

Venetoclax for Patients With Chronic Lymphocytic Leukemia With 17p Deletion: Results From the Full Population of a Phase II Pivotal Trial(Journal of Clinical Oncology, https://doi.org/10.1200/JCO.2017.76.6840)

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