トロポミオシン受容体キナーゼ(TRK)融合遺伝子陽性腫瘍に対するラロトレクチニブ、年齢・がん種に関係なく全奏効率(ORR)75%を示す医学誌『The New England Journal of Medicine』より


  • [公開日]2018.04.11
  • [最終更新日]2018.04.11

2018年2月22日、医学誌『The New England Journal of Medicine』にて17 種類の特異なトロポミオシン受容体キナーゼ(TRK)融合遺伝子陽性腫瘍患者に対するトロポミオシン受容体キナーゼ(TRK)阻害薬であるラロトレクチニブ(larotrectinib)単剤療法安全性有効性を検証した3つの臨床試験結果の結果がMemorial Sloan Kettering Cancer Center・Alexander Drilon氏らにより公表された。

本試験は成人患者を対象にした第I相試験(NCT02122913)、小児患者を対象にした第I/II相試験(NCT02637687)、思春期児と成人患者を対象にした第II相試験(NCT02576431)の3つの臨床試験に基いており、トロポミオシン受容体キナーゼ(TRK)融合遺伝子陽性患者55人に対してラロトレクチニブ(larotrectinib)単剤療法を投与し、主要評価項目として独立判定委員会により全奏効率ORR)、副次評価項目として治験医師の評価による全奏効率(ORR)、奏効持続期間(DOR)、無増悪生存期間PFS)、安全性などを検証している。

A total of 13% of the patients (7 patients) had a complete response, 62% (34) had a partial response, 13% (7) had stable disease, 9% (5) had progressive disease, and 4% (2) could not be evaluated owing to early withdrawal for clinical deterioration.

本試験に登録された患者背景は下記の通りである。年齢中央値45.0歳(0.3-76.0歳)、2歳未満11%(N=6人)、2-5歳9%(N=5人)、6-14歳2%(N=1人)、15-39歳22%(N=12人)、40歳以上56%(N=31人)。男性53%(N=29人)、ECOG Performances Statusスコア0が44%(N=24ん)、1が49%(N=27人)。前治療歴0または1が49%(N=27人)、2が16%(N=9人)、3以上は35%(N=19人)。トロポミオシン受容体キナーゼ(TRK)融合遺伝子の種類はNTRK1が45%(N=25人)、NTRK2が2%(N=1人)、NTRK3が53%(N=29人)。

腫瘍の種類は唾液腺腫瘍22%(N=12人)、軟部組織肉腫20%(N=11人)、小児軟部肉腫13%(N=7人)、甲状腺がん9%(N=5人)、大腸がん7%(N=4人)、肺がん7%(N=4人)、悪性黒色腫(メラノーマ)7%(N=4人)、GIST(消化管間質腫瘍)5%(N=3人)、胆管がん2%(N=2人)、虫垂腫瘍2%(N=1人)、乳がん2%(N=1人)、膵がん2%(N=1人)。なお、中枢神経系CNS)への転移のない患者は98%(N=54人)である。

以上の背景を有する患者に対してラロトレクチニブ(larotrectinib)単剤療法を投与した結果、主要評価項目である独立判定委員会による全奏効率(ORR)は75%(95%信頼区間 :61~85%)、その内訳は完全奏効(CR)13%(N=7人)、部分奏効(PR)62%(N=34人)、病勢安定SD)13%(N=7人)、病勢進行(PD)9%(N=5人)。なお、4%(N=2人)の患者が早期に試験を中止したために測定不可であった。

副次評価項目である治験医師の評価による全奏効率(ORR)は80%(95%信頼区間 :67~90)を示し、奏効持続期間(DOR)中央値は未到達であるが、1年奏効持続期率(DOR)は71%を示した。同様に、無増悪生存期間(PFS)中央値は未到達、1年無増悪生存率(PFS)は55%を示した。なお、フォローアップ期間中央値9.4ヶ月時点で、86%(N=38/44人)の患者が治療継続または治癒切除を目的にした手術が施行された。

一方の安全性として、ラロトレクチニブ(larotrectinib)投与により少なくとも15%以上の患者で発症したグレードの問わない治療関連有害事象(TRAE)は下記の通りである。ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)またはAST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)上昇38%、目眩25%、疲労16%、吐き気16%、便秘16%。なお、15%(N=8/55人)の患者が有害事象(AE)のためにラロトレクチニブ(larotrectinib)を減量しており、その原因はALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)またはAST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)上昇4人、目眩2人、好中球数減少2人であった。

以上の試験結果よりAlexander Drilon氏らは以下のように結論を述べている。”ラロトレクチニブ(larotrectinib)はトロポミオシン受容体キナーゼ(TRK)融合遺伝子陽性であれば年齢、がん種に関係なく抗腫瘍効果を発揮する治療薬であることが本試験より証明されました。”

Efficacy of Larotrectinib in TRK Fusion–Positive Cancers in Adults and Children(The New England Journal of Medicine, N Engl J Med 2018; 378:731-739 DOI: 10.1056/NEJMoa1714448)

×

この記事に利益相反はありません。

会員登録 ログイン