2017年9月20日、医学誌『blood advances』にて慢性リンパ性白血病(CLL)患者の薬剤選択を検証するための離散選択実験(Discrete Choice Experiment,DCE)の結果が公表された。

なお、離散選択実験(DCE)とはある財がいくつかの属性により単純化された形で表現されていると見なし、その属性を少しずつ変えたものを仮想的な財として被験者に提示し、被験者がどの属性をどの程度重視しているか(いないか)を分析する方法である。

本研究では、384人の慢性リンパ性白血病(CLL)患者に対して複数の慢性リンパ性白血病(CLL)治療薬を選択する時に重要な属性として無増悪生存期間(PFS)、投与方法、重度な下痢の発症率、重度な感染症の発症率、臓器障害の発症率などを提示し、患者がどの属性をどの程度重視しているかをアンケート調査により検証している。

本研究が実施された背景としては、慢性リンパ性白血病(CLL)の患者数、新規に承認される薬剤数の増加により多くの患者が複数の選択肢の中から治療薬を選択できるようになったためである。

アメリカ合衆国には現在、13万人の慢性リンパ性白血病(CLL)の患者が存在し、毎年2万人の患者が新規に慢性リンパ性白血病(CLL)と診断さる。この数は全白血病の約3分の1を占めている。

また、2013年以降に慢性リンパ性白血病(CLL)の新薬はオビヌツズマブ(商品名Gazyva)、イブルチニブ(商品名イムブルビカ;以下イムブルビカ)、イデラリシブ(商品名ザイデリグ;以下ザイデリグ)、ベネトクラクス(商品名VENCLEXTA;以下VENCLEXTA)など次々に発売され、現在も開発中の新薬が複数ある。慢性リンパ性白血病(CLL)は治療後に再発する可能性が高い疾患であり、患者は複数の治療薬を経験する機会があるのだ。

本研究の結果、患者にとって薬剤選択する時に最も重要な属性は無増悪生存期間(PFS)であることが調査による判明した。しかし、有効性以外にも患者は副作用の発症率も重視しており、例えば平均36ヶ月の無増悪生存期間(PFS)延長が薬剤により得られるのであれば、重篤な感染症の発症率を30%の患者が許容できると答えている。

一方投与方法に関して、患者はそこまで重要していない属性である。しかし、無増悪生存期間(PFS)が数ヶ月など、その差が僅かであれば静脈よりも簡便な投与方法である経口薬の属性を持つ薬剤へ変更を希望していた。

以上の研究結果を受け、本論文のファーストオーサーであるCarol Mansfield氏は以下のように述べている。”患者背景の違いにより、薬剤を選択する時に重視する属性は変わります。選択した結果に対する満足度は患者さんそれぞれの状況により異なります。”

また、本研究の研究者らは薬剤コストの属性を追加した調査も実施しており、薬剤コストは薬剤選択の時に与える影響が絶大であることが判明した。例えば、患者の自費負担率が異なる2つの薬剤を提示した時、65%の患者が選択肢を変更したのだ。

この結果に対して、Carol Mansfield氏は以下のように述べている。”自費負担率を患者さんに提示しない時とした時での離散選択実験(DCE)の結果は異なると予測されていました。実際、自費負担率は薬剤を選択する時に重要な属性であり、特に生活に余裕のない患者さんにとっては自費負担率を最重視した選択をせざるを得ません。”

今回の研究結果は、医師と様々な事情を抱えた患者が薬剤を選択する時に何を重視するべきかを考える助けになるであろう。そして、これら属性がトレードオフの関係にあることを十分に理解していない患者は多いので、医師は薬剤の属性が患者の今後の生活にどのような影響を与えるかを率直に伝えることが大切である。

Patients’ priorities in selecting chronic lymphocytic leukemia treatments(Blood Advances 2017 1:2176-2185)


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