ALK陽性ROS-1陽性進行性非小細胞肺がんに対するLorlatinib、中枢神経系(CNS)転移ありの患者でも奏効するThe Lancet Oncologyより


  • [公開日]2017.11.15
  • [最終更新日]2017.11.15

2017年10月23日、医学誌『The Lancet Oncology』にて前治療歴のあるALK陽性またはROS-1陽性を有する進行性非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対してLorlatinib単剤療法安全性有効性などを検証した第I相試験(NCT01970865)の結果が掲載された。

本試験は、チロシンンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)による治療歴のあるALK陽性またはROS-1陽性を有する進行性非小細胞肺がん(NSCLC)患者(N=54人)に対して21日を1サイクルとして1日1回Lorlatinibとして10mgから200mgを投与、または1日2回Lorlatinibとして35mgから100mgを投与し、主要評価項目として用量制限毒性(DLT)、副次評価項目として薬物動態(PK)、安全性、全奏効率(ORR)を検証した国際多施設共同オープンラベルシングルアームの第I相試験である。

本試験の詳細は下記の通りである。試験期間2014年1月22から2015年7月10日、登録された患者背景はALK陽性77%(N=41人)、ROS-1陽性23%(N=12人)、1人の患者のみALK、ROS-1の陽性率が不明である。全治療歴としては52%(N=28人)の患者で2剤以上のチロシンンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)の治療歴があり、72%(N=39人)の患者で中枢神経系(CNS)転移が確認されていた。

本試験の結果、主要評価項目である用量制限毒性(DLT)はLorlatinib200mg、副作用としてはグレード2の神経認知症を発症した。また、最大耐性量(MTD)は特定できず、1日1回Lorlatinibとして100mgが第II相試験の用量として決定された。

副次評価項目である全奏効率(ORR)、安全性は以下の通りである。ALK陽性患者における全奏効率(ORR)は46%(N=19人)、また2剤以上のチロシンンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)の治療歴のあるALK陽性患者でも42%(N=26人)で、奏効持続期間(DOR)中央値12.4ヶ月であった。一方、ROS-1陽性患者における全奏効率(ORR)は50%(N=6人)、またクリゾチニブ(商品名ザーコリ;以下ザーコリ)による治療歴のあるROS-1陽性患者でも29%(N=2人)で、奏効持続期間(DOR)中央値12.0ヶ月であった。なお、中枢神経系(CNS)転移のある患者の全奏効率(ORR)は頭蓋内奏効を含み46%(N=11人)であった。

安全性として、Lorlatinib投与により確認された最も一般的な有害事象のは、高コレステロール血症(72%)、高トリグリセリド血症39%、末梢神経障害39%、そして末梢浮腫39%であった。

以上の試験の有効性、安全性を受けて治験代表医師らは以下のように述べている。”2剤以上のチロンチンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)の治療歴があるALK陽性またはROS-1陽性を有する中枢神経系(CNS)転移を含む進行性非小細胞肺がん(NSCLC)患者さんに対してLorlatinibは全身、頭蓋内の両方で奏効を示しました。この試験の結果より、Lorlatinibは第2世代ALK阻害薬を含むチロシンンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)に抵抗性を示したALK陽性非小細胞肺がん(NSCLC)に対する効果的な治療選択肢になり得ることが証明されました。現在、ALK陽性非小細胞肺がん(NSCLC)患者さんの一次治療としてザーコリに対するLorlatinibの有効性を検証する第III相試験(NCT03052608)が進行中ですので、その結果でLorlatinibの有効性がさらに明らかになるでしょう。”

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