尿路上皮がん 抗PD-L1抗体デュルバルマブの二次治療で奏効率17.8%JAMA Oncologyより


  • [公開日]2017.09.06
  • [最終更新日]2017.09.06

2017年5月、免疫チェックポイント阻害薬デュルバルマブ(海外商品名Imfinzi)が米国食品医薬品局(FDA)により尿路上皮がんの治療薬として迅速承認された。この承認の根拠となった第1/2相試験データが、2017年8月17日のJAMA Oncologyオンライン版に掲載された。米国や欧州、カナダ、台湾、韓国など9カ国、60施設で行われた固形がん患者を対象とする単群非盲検試験(Study 1108、NCT01693562)で、そのうち、デュルバルマブの治療を受けた尿路上皮がん患者は191例、全奏効率は17.8%であった。

ステージ4、転移あり、治療歴の重い尿路上皮がんに選択肢を提供する可能性

Study 1108における尿路上皮がん患者の適格基準は、承認された適応症と同様、術前もしくは術後補助化学療法を受けてから12カ月以内に病勢進行した場合を含む、プラチナ製剤を含む化学療法の治療中、あるいは治療後に病勢が進行した局所進行・転移の患者で、デュルバルマブ10mg/kgを2週ごとに1年間静注した。

その結果、191例中136例は男性患者で、年齢中央値は67.0歳、全例がステージ4であった。2016年10月24日までの追跡期間中央値は5.78カ月で、この時点で44例(23.0%)の患者は治療を継続していた。全奏効率は17.8%(34/191例)で、完全奏効(CR)が7例、部分奏効(PR)が28例に認められた。速やかに奏効に達し、到達時間中央値は1.41カ月、奏効持続時間の中央値特定には至っていない。また、病勢安定SD)を含めた病勢コントロール率DCR)は36.6%であった。

PD-L1発現レベルが低い患者でも完全奏効

デュルバルマブの標的分子であるPD-L1発現のレベル別の奏効率は、高発現集団(27.6%[27/98例])の方が低発現または陰性集団(5.1%[4/79例])より高かったが、完全奏効(CR)が得られた7例中2例は低発現または陰性であった。FDAの承認適応症でもPD-L1発現レベルは要件ではない。

全解析対象の無増悪生存(PFS)期間中央値は1.5カ月、全生存期間OS)中央値は18.2カ月で、6カ月、9カ月、および12カ月の無増悪生存(PFS)率はそれぞれ22%、18%、16%、6カ月、9カ月、および12カ月の全生存率はそれぞれ64%、57%、55%と算出された。

試験登録時、191例中177例(92.7%)は内臓転移があり、82例(42.9%)は肝転移が、14例(7.3%)はリンパ節のみの病変があった。これらの転移巣別の奏効率は、それぞれ15.3%(27/177例)、7.3%(6/82例)、50.0%(7/14例)であった。

前治療の負担で消耗性が高い患者でも許容可能な安全性

有害事象は、全般にデュルバルマブの投与開始後早期に発現することが多く、発現までの期間中央値は6.1週間、治療関連有害事象の累積発現率は開始後8週間以内に最大になった後、およそ32週の間に徐々に平坦化した。最も多く認められた有害事象は疲労(19.4%)で、次いで食欲減少(9.4%)、下痢(8.4%)、発疹(7.3%)などであった。

グレード3またはグレード4の治療関連有害事象は13例(6.8%)に、治療関連のグレード3またはグレード4の免疫関連有害事象は4例(2.1%)に認められた。治療関連有害事象を理由とする治療中止は3例(1.6%)で、そのうち2例は免疫関連有害事象(各自己免疫性肝炎間質性肺炎)で死亡した。

デュルバルマブを含め免疫チェックポイントに作用する薬剤は、免疫学的なメカニズムに及ぼすことにより発生する免疫関連有害事象に注意が必要である。Study 1108で発現したのはほとんどがグレード1、またはグレード2の甲状腺機能低下症(5.2%)、下痢(2.1%)、肝酵素上昇や自己免疫性肝炎(2.1%)などであった。4例に発現したグレード3またはグレード4は肝臓事象、発疹、および腎臓事象であった。

Study 1108では尿路上皮がんを含む固形がん患者917例にデュルバルマブ10mg/kgが2週ごとに投与されたが、尿路上皮がん特有の安全性の問題は認められなかった。他癌種を含む解析対象でも有害事象の発現率の推移も同様で、治療開始後8週間で累積発現率が最大になり、32週程度でプラトーになった。

デュルバルマブの安全性は、他の免疫チェックポイント阻害薬の臨床試験データとの間接比較でも良好と判断され、グレード3またはグレード4の発現率や治療関連有害事象を理由とする中止率が低かった。

現在、尿路上皮がんを対象とする臨床試験は、トレメリムマブ(CTLA4標的の免疫チェックポイント阻害薬)との併用療法可能性を検討する第3相試験(DANUBE、NCT02516241)が行われている。その他、第1相試験(BISCAY、NCT02546661)、および固形がん患者を対象にトレメリムマブと併用投与する第1相試験(Study10、NCT02261220)も実施中である。

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