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ゲノム解析から見る胆道がん治療の未来と希望

[公開日] 2017.08.04[最終更新日] 2017.08.04

目次

胆道がんへの国際包括的なアプローチ

胆道がんは、日本を始めとするアジア地域に多いがんであり、かつ予後が不良で治癒が難しいがんである。胆道がんは胆道系疾患や肝吸虫と呼ばれる寄生虫の感染によりリスクが上がることが確認されている。 しかし、胆道がんが発生するメカニズムはまだ完全に明らかになっていない。 現在、ゲノム(遺伝子)解析からゲノム変異情報を特定することが、抗がん剤開発の主流となっている。現在非常に注目を浴びている、ニボルマブ(商品名:オプジーボ)やペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)などの免疫チェックポイント阻害剤の研究開発においてもゲノム解析結果に依拠し開発された経緯がある。 このように、ゲノム解析に依拠した抗がん剤が開発・上市されている中、胆道がんについてはゲノム解析によってメカニズムが同定されていなかった背景から、開発のスピードに問題があった。そのため胆道がんに関するゲノム変異情報を用いた基礎研究・臨床開発研究が急務となっていた。 このようにゲノム解析に依拠した研究が全世界的に注目され、2008年に国際共同がんゲノムプロジェクト「国際がんゲノムコンソーシアム(International Cancer Genome Consortium)」(http://icgc.org/)が発足した。 このプロジェクトは、世界各国の臨床的に重要ながんを選定し、全世界的に高解像度のがんのゲノム解析をおこない、その情報を研究者間で共有及び無償で公開し、がんの研究および治療を推進することを目的としている。 現在、17か国が参画し、73のがん腫についての大規模ゲノム研究プロジェクトが精力的に遂行されている。 日本では国立がん研究センターが代表研究機関として、肝臓がんや胆道がん、胃がんの解析を担当している。胆道がんについては、2015年に日本人症例の解析結果が報告された。

胆道がんの大規模ゲノム解読による新たな治療標的の発見

国際がんゲノムコンソーシアムによって、共同研究として胆道がんの解析を担当している日本並びにシンガポールが、世界10か国(日本・シンガポール・タイ・中国・台湾・韓国・ルーマニア・イタリア・フランス・ブラジル)から収集した総計489症例の胆道がん患者対象に遺伝子解析を実施し、その調査結果を発表した。 この遺伝子解析の結果により、ドライバー遺伝子とよばれるがんを引き起こしたり、がんを悪性化させる直接的な異常遺伝子が32個、同定された。この中で、有望な治療標的の一つである血管新生、創傷治癒などに関係する細胞増殖因子の受容体(FGFR)については、7種類の融合遺伝子が発見された。 そして研究結果をもとに、臨床的な背景の違いや治療標的となる分子の違いから胆道がんの分子パターンが4つのグループに分類された。この分類は、生命予後とも相関しており、特にBAP1やIDH1、FGFR2のゲノム異常やFGFRの発現増加異常が確認されたグループ4の症例は、他のグループと比較して予後が比較的良好であることが解析結果より明らかになった。(下記図参照。赤線がグループ4を示している。) また、今回の解析によりこれまで明らかではなかった胆道がんの発症経路が複数あることも確認された。グループ1は肝吸虫感染を契機とした炎症により遺伝子変異が誘発されがんが発生するという経路、そして一方で、グループ4は最初に重要なドライバー遺伝子に異常が起こった結果、がんが発生する経路が示唆された。

遺伝子検査における胆道がんの今後の展望

このように遺伝子検査によって、がんの発生に係る異常遺伝子が特定され、これまでの抗がん剤より効果が期待できる薬剤の研究開発が進みつつある。実際、今回の研究によって同定された胆道がんの治療標的に関して、日本でも臨床試験が開始されている。 また、臨床試験とは別に、胆道がんに関する重要な遺伝子、例えばFGFRなどの重要な遺伝子の異常の有無を検索し、その患者に最適な治療法を選択する「ゲノム医療」が今後進むと考えられる。 他にも上記にもあるように胆道がんの発症メカニズムが本研究成果から少なくとも2つ以上あることが示唆された。これ以外に他の発症メカニズムの解明が進むことによって、胆道がん自体の発生を減らしたり、予防する研究がすすめられることが今後期待される。 胆道がんは自覚症状に乏しく、早期発見が非常に難しいがんと言われている。また、がんの発生部位にもよるが、非常に予後が悪く、すい臓がんと並び治癒しにくいがんである。 だからこそ、本研究は非常に意義があり、胆道がん患者の希望の光となると考えられる。今後、胆道がんに関する更なる研究がすすめられ、個々の患者にあった新しい治療法が確立されることを期待したい。 胆道がんで世界横断的・最大の分子統合解析実施 ゲノム・分子異常解明が大きく前進、ゲノム医療促進を期待(国立研究開発法人 国立がん研究センター プレスリリース 2017年8月3日) Whole-Genome and Epigenomic Landscapes of Etiologically Distinct Subtypes of Cholangiocarcinoma(Cancer Disco, Research Article) 記事:下川床 和真
ニュース 胆道がん 胆道がん

下川床和真

大阪大学外国語学部卒業後、MR(医薬情報担当者)として製薬企業に入社。その後、CROにてCRAを経験後、株式会社クリニカル・トライアルに入社。がん情報サイト「オンコロ」の記事QC(品質管理)、情報精査をする一方で、海外企業からの臨床試験に係るプロジェクトの全般的なコントロールや主に医師主導の臨床開発業務(モニタリング業務)に携わる。

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