転移性子宮内膜がん キイトルーダ×レンビマ併用療法で約半数の患者が奏効 ASCO2017


  • [公開日]2017.07.29
  • [最終更新日]2017.11.13[タグの追加] 2017/11/13

日本国内において、マルチキナーゼ阻害薬レンバチニブメシル酸塩(商品名レンビマ)は、2015年5月から根治切除不能の甲状腺がんの治療薬として、プログラム細胞死受容体1(PD-1)標的抗体ペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ)は、2017年2月から切除不能の悪性黒色腫、およびPD-1リガンド(PD-L1)陽性の切除不能の進行・再発非小細胞肺がん(NSCLC)の治療薬として販売されている。

2017年6月2日から5日に開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO)で、レンビマとキイトルーダの併用療法転移性子宮内膜がんに奏効したことが発表された。子宮内膜がんの他、非小細胞肺がん(NSCLC)や腎細胞がん(RCC)、尿路上皮がん(UC)、頭頸部がん、悪性黒色腫で標準治療後に進行したか、または適切な治療法がない固形がん患者を対象として米国で実施されている第1b/2相試験(111試験)の一部で、子宮内膜がん患者集団における有効性安全性についての最新データである。

受容体型チロシンキナーゼ複数阻害×免疫チェックポイント阻害の併用療法

第1b相パートではレンビマ24mg、または20mgを1日1回経口投与し、キイトルーダは200mgを3週ごとに静注した。第2相パートでは、第1b相パートで決定したレンビマの推奨用量20mgを用いて併用投与した。

その結果、第1b相パートと第2相パート合わせて子宮内膜がん患者の解析対象は23例で、主要評価項目である奏効率は独立判定で52.2%、主治医判定で47.8%であった。

副次評価項目である臨床有用率(完全奏効[CR]+部分奏効[PR]+23週間以上持続した病勢安定[SD]の患者の割合)、および病勢コントロール率(CR+PR+5週以上持続したSDの患者の割合)は、独立判定でそれぞれ65.2%、91.3%、主治医判定ではそれぞれ73.9%、95.7%であった。無増悪生存(PFS)期間、および奏効持続期間は中央値特定に至っていない。有害事象は、主に高血圧、疲労、関節痛、下痢、悪心などであった。

マイクロサテライト不安定性の治療効果への影響

本試験では、子宮内膜がん患者におけるキイトルーダ×レンビマ併用療法の効果は、マイクロサテライト不安定性(MSI)の状態による影響を受けなかった。MSIの状態を解析したのは、PD-1標的抗体がMSI頻度の高い患者に効きやすいとの報告があるからである。短い塩基配列を繰り返すマイクロサテライトと呼ばれる部分は、DNA複製時に塩基配列の反復回数に間違いが生じやすく、そうしたミスマッチ修復機構に異常をきたす不安定性(MSI)が細胞のがん化につながると考えられている。

レンビマとPD-1標的抗体の併用効果を実証した非臨床試験

臨床試験では、レンビマとPD-1標的抗体の併用投与による相乗的な抗腫瘍効果が確認されており、その作用機序として、レンビマによる抗腫瘍免疫の賦活化が示唆されている。腫瘍関連マクロファージの減少とメモリーT細胞の増強が認められた。

レンビマの標的分子は、血管内皮増殖因子受容体のVEGFR1、VEGFR2、VEGFR3、線維芽細胞増殖因子受容体のFGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4、血小板由来増殖因子受容体のPDGFRαのほか、腫瘍血管新生や腫瘍の悪性化に関与する複数の受容体型チロシンキナーゼで、様々な種類の固形がんに対する効果が期待され、既に欧米では、甲状腺がん以外に腎細胞がんでも承認されている。同様に、キイトルーダなど免疫チェックポイント阻害薬もがん種を問わない効果が期待されており、受容体型チロシンキナーゼとPD-1を同時標的とする併用療法でも臨床開発中である。

記事;川又 総江

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