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がんサバイバーの再発不安を軽減する心理的介入の第2相試験 ASCO2017

[公開日] 2017.06.22[最終更新日] 2017.06.22

目次

2017年6月2日から5日に開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO2017)で、「不安感の克服(Conquer Fear[CF])」と呼ばれる理論に基づく心理的介入により、がんサバイバーの再発不安を有意に軽減することに成功したことが報告された。Conquer Fear(CF) の介入プログラムを確立したオーストラリア・シドニー大学のJane McNeil Beith氏が、Late-Breaking-Abstract(LBA)枠で発表した。

定量化した再発不安に基づき被験者登録、心理的介入プログラムを5回施行

Beith氏らは、治療後2カ月から5年を経過してがんの再発や進行のない状態のステージ1からステージ3の乳がん、大腸がん、または悪性黒色腫で、がん再発不安評価尺度(FCRI)の重大度サブスコア13以上のがんサバイバー222例を対象とし、第2相無作為化比較試験を実施した。 2013年から2016年に、オーストラリアの17施設から26人のセラピストが参加し、Conquer Fear(CF)介入群に121例、対照群として緩和トレーニング群に101例を無作為に割り付け、セラピスト1人あたり、3例から25例のがんサバイバーの心理的介入を担当した。登録例のうち、187例(89%)が乳がんサバイバーで、大腸がんは19例(9%)、悪性黒色腫は4例(2%)であった。また、205例(92%)は外科的治療を、166例(75%)は化学療法、163例(75%)は放射線療法を終了していた。主要評価項目は介入直後のFCRI総スコアで、基準値より14.5ポイント以上低下した場合を臨床的意義のある軽減とした。介入3カ月後、および6カ月後も評価を継続した。 Conquer Fear(CF)では、訓練を受けたセラピストが1回60分から90分間かけて個別対面し、プログラムに則った対話を10週以上の期間で5回実施した。その対話のポイントは次のとおりである。 ・がん再発の可能性は固有の不確実性があると認識し、過度の注意力をコントロールする ・心配する気持ちをコントロールし、行き過ぎる注意深さから自身を解放する ・注意をどこに置くかをコントロールする力を高める ・何を取り除きたいか、価値を明確にする ・がんスクリーニングの識別レベルを高めて適切な検査を選択して実行する 対照群に施す緩和トレーニングでは、1回60分の個別対面を10週以上の期間で5回実施し、筋肉をほぐす、瞑想的な心理緩和といった方法を導入し、自身で緩和する方法を可視化、迅速化することに焦点を当てた。 FCRIの42項目からなる調査票を用い、がん再発不安の指標となる総スコアの変化を追跡した。スコアは0から168で、スコアが高いほど再発不安の度合いが高まっていることを示す。

CF心理的介入直後に不安軽減、成果は経時的に増大

その結果、がん再発不安評価尺度(FCRI)平均スコアの基準値は、CF介入群82.7、対照群85.7で大差はなかった。主要評価項目である介入直後のFCRI総スコアは、それぞれ平均で18.1ポイント、7.6ポイント低下し、その差は10.5ポイントで、CF介入群は対照群より不安感が有意に軽減した。算出された標準化効果量(0.44)に基づくと、CF介入群は臨床的意義のある効果が得られたことになる。 がん再発不安評価尺度(FCRI)スコアは経時的に低下し、介入3カ月後、6カ月後のいずれにおいてもCF介入群は対照群より不安感が有意に軽減した。介入6カ月後では、CF介入群は平均27.2ポイントの低下、対照群は平均17.8ポイントの低下を示した。 さらに、CF介入群は対照群と比べ他の評価項目でも良好な成果が得られ、がんに特異的な悩みや、不安や抑うつ、緊張などの一般的な悩み、生活の自立性や身体の痛み、精神的な健康、幸福感、対処能力、他者とのつながり、自尊心などを含む生活の質(QOL)が改善した。

実臨床で活用するための調査研究と議論が必要

Beith氏らによると、Conquer Fear(CF)を用いた今回の心理的介入は時間、資源を集中的に投入する対面形式により実施したが、インターネットを用いる形式でも可能であり、グループ形式、あるいは電話を用いる対話など、現実的には形式を限定する必要はない。不安の度合いが極めて高いサバイバーには対面の介入が適切かもしれないとしている。また、精神心理学の専門的訓練を受けたがん専門医でなくても、地域の心療内科や精神科医、または他の専門家でも基礎訓練を受ければ対応可能との考えも示した。 がんサバイバーの約50%、特に若い乳がんサバイバーの場合は70%が中等度以上の再発不安を抱えているという。そうしたサバイバー特有の悩みは日常生活にネガティブな影響をもたらし、行動や気分、就労、目標設定、人間関係など様々な要因が複合して生活の質(QOL)の低下を招くことも少なくない。がんケア領域の医療従事者141人(社会心理学専門家64人を含む)にがんサバイバーの再発不安に関する調査を行ったところ、現在の対処法のアプローチは非常に幅広く、エビデンスに基づく介入法が確立されていないため、不安解消の手助けをするのは容易ではないと96%が回答した。 今回のConquer Fear(CF)介入は個別対面療法で、臨床専門の精神科医や心理学者が「メタ認知」に着目して実施するアプローチである。自身を客観的に高次から認知する考え方、方法を身に着けることで、過度の不安や注意深さ、心配を適切に取り除き、日常生活での支障を可能な限り減らすことを目的に行うものである。 Psychological Intervention Lowers Survivors’ Fear of Cancer Recurrence.(ASCO News release) Long-term results of a phase II randomized controlled trial (RCT) of a psychological intervention (Conquer Fear) to reduce clinical levels of fear of cancer recurrence in breast, colorectal, and melanoma cancer survivors.(ASCO2017 Abstract No:LBA10000) 記事:川又 総江
ニュース 大腸がん メラノーマ(悪性黒色腫)

医療ライター 川又 総江

国内製薬企業研究所研究員、大学医学部研究室助手を経てフリーのメディカルライターに転身。医薬・バイオ関連出版社等の文献翻訳、医療記事作成を執筆すること20年。

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