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奏効率94%のCAR-T免疫療法が多発性骨髄腫の治療にも到来 ASCO2017

[公開日] 2017.06.16[最終更新日] 2017.06.16

不治の病とされる多発性骨髄腫の治療目標は「完治」でなく「延命」となる。この治療目標はボルテゾミブ(商品名ベルケイド)、レナリドミド(商品名レブラミド)、サリドマイド(商品名サレド)などの国内で新規薬剤が登場した2006年以降も、ポマリドミド(商品名ポマリスト)、カルフィルゾミブ(商品名カイプロリス)、エロツズマズ(商品名エンプリシティ)、イキサゾミブ(商品名ニンラーロ)が登場した2015年以降も変わりはない。 新規薬剤により多発性骨髄腫の全生存期間(OS)、無病悪生存期間(PFS)は延長できる時代になったが、完治を目指すまでには至っていない。これが2017年現在の多発性骨髄腫の現状になる。 しかし、この現状を改善する可能性についての研究報告が、6月5日に米国臨床腫瘍学会(ASCO2017)で発表された。その研究報告とは、再発難治性多発性骨髄腫患者に対するCAR-T療法(キメラ抗原受容体を用いたT細胞療法)となる。 CAR-T療法とは、元々体の中に存在するリンパ球の一種であるT細胞を体外に取り出し、がん細胞を見つけて、攻撃する働きをさせるCAR(キメラ抗原受容体)をT細胞に発現させて、再び体の中に戻すことで抗腫瘍効果を発揮させる免疫療法である。 。 CAR-T療法は急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)など、B細胞の発生、分化の調節の働きに関与するCD19を標的とし、この抗原が多く発現する疾患を対象に研究が進められていた。 しかし、骨髄腫細胞のほとんどはCD19陰性であるため、多発性骨髄腫にCAR-T療法を応用するには、CD19以外の骨髄腫細胞に発現する抗原に対するCAR-T療法の開発が必要と考えられていた。 このような課題を多発性骨髄腫のCAR-T療法は抱えていただけに、CD19の代わりにBCMA(B細胞成熟抗原)という骨髄腫細胞の60〜70%に発現する抗原を標的としたCAR-T療法についての本研究は画期的だった。画期的なのは標的を変更したことだけでなく、その驚異的な治療成績となる。 中国西安市にある西南交通大学Wanhong Zhao医学博士より発表された本研究は、再発難治性多発性骨髄腫患者35人に対してBCMAを標的とするCAR-T療法を実施した第1相試験の結果である。 その結果は、CAR-T療法を開始してから2ヶ月以内に35人中33人の多発性骨髄腫患者が治療に効果が見られたとされる指標である最良部分奏効(VGPR)、又は完全奏効(CR)を達成するという驚異的な治療成績だった。さらに驚異的だったのは、治療効果発現の早さである。CAR-T療法を開始してから早い人で10日後にその効果が確認された。 このように驚異的な治療成績を示したことから、再発難治性多発性骨髄腫でも完治が狙える可能性が出てきたと期待されるCAR-T療法であるが、課題もある。まず、その治療成績を証明した試験のフォローアップ期間が長期間でなく短期間であることだ。 今回の研究報告では35人中19人の患者が4ヶ月以上フォローされ、19人中14人が厳密完全奏効(sCR)、4人が最良部分奏効(VGPR)、1人が部分奏効(PR)を維持しており、VGPRを達成していた4人の内1人が唯一病勢進行するという結果だった。4ヶ月時点のCAR-T療法の治療成績は良好であるが、新薬が登場して以降の多発性骨髄腫の全生存期間(OS)は3年は超えるため、さらなる観察期間が必要となる。 また、CAR-T療法に伴う副作用も課題となる。CAR-T療法特有の合併症とされるサイトカイン放出症候群(CRS)が、本研究でも85%の患者で報告されている。CRSは体内に戻したT細胞がその標的とする抗原と反応することで血中に高濃度のサイトカインを放出し、発熱、血圧低下など様々な症状を引き起こす。重症な場合、肺水腫、中枢神経症状などの臓器障害を引き起こす。 本研究でも、重篤なCRSを35人中2の患者が経験したが、CRSの標準治療であるアクテムラ(トシリズマブ)の投与により改善しており、BCMAを標的とするCAR-T療法に伴うCRSは対策可能であると報告されている。しかし、本研究はわずか35人規模での研究報告となり、さらなる母集団での調査が必要となる。 以上のように、CAR-T療法により再発難治性多発性骨髄腫の治療でも完治を望める可能性がASCO2017の研究報告で示唆された。しかし、研究期間の短さ、特有の合併症など、CAR-T療法を臨床に応用するために解決すべき課題がある。 不治の病とされる多発性骨髄腫の治療に一縷の希望が持たらされたことを素直に嬉しく思うと共に、多発性骨髄腫に対するCAR-T療法のさらなる発展を切に願う。 CAR T-Cell Therapy Sends Multiple Myeloma Into Lasting Remission(ASCO News release) Durable remissions with BCMA-specific chimeric antigen receptor (CAR)-modified T cells in patients with refractory/relapsed multiple myeloma. 記事:可知 健太 この記事に利益相反はありません。
ニュース 多発性骨髄腫 CAR-T療法

3Hメディソリューション株式会社 執行役員 可知 健太

オンコロジー領域の臨床開発に携わった後、2015年にがん情報サイト「オンコロ」を立ち上げ、2018年に希少疾患情報サイト「レアズ」を立ち上げる。一方で、治験のプロジェクトマネジメント業務、臨床試験支援システム、医療機器プログラム開発、リアルワールドデータネットワーク網の構築等のコンサルテーションに従事。理学修士。

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